いやはや、これは並の作品じゃあない。
アレハンドロ・ゴンサ .. >(続きを読む)
いやはや、これは並の作品じゃあない。
アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥという監督のセンスの良さ、映画創りの才能を五感全体で感じとることのできる素晴らしい作品だ。
音楽は、特筆に値すべき素晴らしさ。
メキシコと日本の話とが平行して描かれ、時間軸も交錯しているため、脚本で見せる映画かと思いきや、この作品はそんな浅薄な映画ではなかった。
みずみずしい映像と、それに見事にマッチした音楽。
音楽が叙情性を更に高めていく。
この音楽の使い方一つをとっても、この監督の演出力の高さを感じることができる。
しかしながら、日本を描いた部分は、物語にそれほどリンクしていないし、特別見所があるわけではないので、はっきり言って不要。
ただ、「バベルの塔」というテーマを掲げるためには必要だったのかもしれない。
テーマもなく、センスの良い映像と音楽だけで魅せる映画は個人的には好きだが、それだと興行的に製作困難なのだろう。
そう考えると、この監督の才能は、まだまだその底を見せていない気がする。
芸術性重視で、とことん映像と音楽と役者の演技と雰囲気の演出を突き詰めていくことが可能なら、この監督はとんでもない傑作を創り出すことができる、そんな可能性を感じるのだ。
本作は、娯楽作品しか楽しめない人や、脚本の出来にしか興味を持てない方には合わない作品であるに違いない。
それだけに、観る側を選び、又、観る側のセンスが試される作品なのではなかろうか。