“名匠”小津安二郎の遺作。
1962年の作品だが、小津 .. >(続きを読む)
“名匠”小津安二郎の遺作。
1962年の作品だが、小津の完成された力量が冴え渡る“見事なまでに美しいカラー作品”であった。
小津の代表作『東京物語』については、ラストの笠智衆が一人佇むシーンには圧倒されたものの、それ以外は、“まぁ、こんなもんか”といった感想だった。
そんなわけで、特別に期待して観たわけではなかった本作。
ところがところが、開始早々10分程で、完全にこの作品の持つ魅力に引き込まれてしまった。
冒頭にも書いた様に、本作は初期のカラー作品でありながら、質感を含めその美しさは圧倒的なもの。
機械的にただキレイなだけの現代映画と比べても、その質の違いからか、全くひけをとらない美しさ。
その端整な映像の数々を観ているだけでも飽きさせないものがあった。
登場人物について。
主演は小津作品でお馴染みの笠智衆。
“背中で感情を語る”彼にしか出来ない演技には脱帽。
そして、笠智衆に続いて本作で中心的な役回りを演じた当時21歳の岩下志麻がとにかく美しかった!
和服姿の似合うこと似合うこと。
また、彼女の兄役を演じた“中井貴一”の父である佐田啓二も、このたんたんとしていて渇いた感じの小津作品に完全に同化していて面白い。
そして、石井輝男作品でお馴染みの吉田輝雄。
本作でも好青年的イメージは健在。
石井作品では、ドロドロとした世界の中の唯一まともな人間というのをよく演じていたが、本作では、作品の一登場人物としてすんなり納まっているところに面白味を感じた。
『秋刀魚の味』を観たおかげで、今日は思いもがけず久しぶりに、ほのぼのとしていい日曜日を過ごすことができた。
やっぱり、“OZU”は凄かった。