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<ネタバレ>まず背景設定はいい加減な感じである。この頃からすでに地球温暖化が問題になっていたというのは少し驚いたが、そのせいで異変が起こったわけでもなく核実験の影響とのことで、やはりどうしても怪獣映画は核の脅威と無縁でいられないらしい。
またドラマ部分も貧弱であり、前半こそ若い2人が互いの愛情を確かめ合う過程を描いていたが、後半は特撮に重点が移ってしまうために白川由美さんと東宝特撮初主演の佐原健二氏(若い)も存在感がなくなってしまう。ラストの一同の表情も取ってつけたような感じで、ここは若い2人が怪獣のつがいに同じ立場で同情を寄せた、という解釈ができればいいのだろうが、実際のところは兄弟だったのだろうからそうとも言えない。
ところでこの映画で個人的に最も注目するのは、何といっても昭和30年代初めの九州各地の景観である。まずは昔の本物の炭坑と炭住風景が興味深い。
また福岡市の場面では、怪獣は上から吊られているのが明らかだったりするが、ミニチュアセットの迫力の方は圧倒的である。風圧で瓦は飛ぶわ外壁が失われて骨組みまで飛んでいくわで大変細かい作り込みになっており、また戦車が砲撃する前面に電線が垂れているのが邪魔に見え、これが市街戦というものだと実感させられる。道路の植栽を戦車が半分踏みつけにしているのは痛々しく、また風で飛ばされた車両が「豊楽遊技場」(パチンコ店)に突っ込んで火災が発生し、隣接の「軽食 喫茶 筑紫」に延焼していくのは無残だった。特定の商標が出る場面も多く、森永ミルクキャラメルのネオンサインなら他にも例があるが、アサヒビールとか武田薬品工業とかは協賛をもらったのか。昔のカルピスの看板をわざわざ踏み倒して戦車が進んでいくのは何かの寓意だろうかと勘繰ってしまうがこれは単に受け狙いかも知れない。こういうのが見られた当時の福岡市民の皆さんは大喜びだったのではないかと思うと非常にうらやましい。
福岡のほかにも佐世保市内の実写風景が映ったりするので、当時を知る人がいれば懐かしいかも知れない。西海橋の場面では、バスガイドの誘導が適切なため観光客に被害がなかったのが幸いだった。変なところに感動してしまったが。