<ネタバレ>靴、靴、靴。それに足を入れて走って走って走って大地を“蹴る” .. >(続きを読む)[良:2票]
<ネタバレ>靴、靴、靴。それに足を入れて走って走って走って大地を“蹴る”。
それがこの映画だ。
冒頭から「靴」の映画である。
壊れた靴を直してもらい、途中寄った店で靴が入っているとも知らずに持っていかれてしまう袋。それは妹の靴だった。ここから物語は始まる。
「9歳はもう子供じゃない」という生活を送るアリは、ノートによる“筆談”を経て妹ザーラに自分の靴を貸すハメになる。
妹も走って走って走り、履き替えた靴でアリもまた走って走って走って学校に行く。
たった二足の靴を兄妹で仲良く大切に洗うシーンは微笑ましい。同級生の靴を物欲しそうに見つめる妹が可愛いすぎて和む。「同情するなら靴をくれ」的な。
川に流れてしまった靴を懸命に追いかけるシーンの健気さ。
アリもまた家の手伝いや妹の靴の件もあって好きなサッカーも出来ない、家は貧乏&家賃滞納で大ピンチ、その鬱憤を学校への全力疾走にぶつけて彼は毎日市街を駆け抜ける。その走りの成果が役立つなどとアリもつゆ知らず。女子は午前で男子は午後の授業?
あのお茶のポッドが欲しくなる。
父親の自転車が坂道で止まらなくなったり、用水路の予想外の水流の速さと、この映画はとにかく動いて動いて動き続ける。
アリはどんな困難も「妹の靴、そして妹のため」を思えばと乗り越える。
一等よりも三等の価値、終盤のラストスパート!
スローモーションが焦らすに焦らす演出が良い。手に汗握る。
どんな結果でも、妹の喜ぶ顔が見れないと思うと哀しい表情をするアリ。
だが、アリの父ちゃんは二人を笑顔にする“とびっきりのもの”を自転車に乗せて帰ってくる。
アリの傷ついた足を水の中で優しく舐め迎え入れる金魚たちは、アリたちに訪れる幸福を予感させる。
こんな面白い映画、よく90分以内に収まったもんだ。傑作です。[良:2票]