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<ネタバレ>実に興味深い映画だった。どうしてこれほどの作品がDVD化されないのだろう。誰か出してくんねえかな~。
霧の中で点滅する灯、それを頼りに疾走する車、轟音をあげるバイク。
ヘルメットをかぶり(それまでノーヘルだったのか…)、画面の奥から迫り来るように走り去っていく。そこからこの中編は始まる。
この作品は実験的趣向に溢れており、特に「光」やそれが強調する「黒い影」の動きが印象的だ。
女のモノローグ、机の上に置かれた「もの」によってそれが手紙の内容だということを観客はさとる。
シャッターを上げた先に拡がる空間に貼られたバイクの写真、ラジカセ、白い光の中から駆け寄る者。
黙々とバイクの整備を続ける黒いシルエット、その周りで舞い踊るように語り掛ける少女。男はそれに淡々とした喋りで応え続けるが、座席にベッタリ寝そべっても怒らないくらい親しい間柄なのだろう。
逆光、人形のようにギコチナイTVの中の人間たち、それを見つめる光の無い眼、視線も交えない冷えた親子の関係。
回想の中でページをめくる女の影、いくつもの写真が男の過去を語り、次の旅先を想い描く瞳。
どっかの漫画から切り抜いてきたかのような止め絵、止め絵、止め絵、行く先々で視線に飛び込む単車、単車、単車というロマンの塊。
雨にあたる銅像のように固まった肉体、干された片靴、TVを見続けるのは顔を背ける・向かい合えないからだろうか。それとも声だけが響き続ける手紙の差出人に夢中だから、それを見つけるため、現実から逃げるためにバイクに乗るのだろうか。「手紙」だけで繋がる、傘を楽しそうに回す「憧れ」を求めて…。
真後ろのナンバープレートから真上に移動して捉えられる疾走、振り払い詰め寄り平手打ちを浴びせるシルエット、その影から逃げ去るように旅立っていく。
闇の中を揺れ動く光、光、光、逃げ込む場所。その瞳は自由を得たように灯を帯びる。
バイト、労働、心地よい疲労、喜び。楽しそうに家族の近況と「あるもの」を届けに来てくれる妹。彼女がいるからこそ親を放って出ていけたのかも知れない。
友人が残した「家族」の世話をするためにも増々帰るに帰れない。
道の向こうから接近し、地面を削り取るように砂を撒き上げ見事なターンを決める黒いライダー。マスター渋すぎるぜ…。
その「誘い」に心を弾ませるようにバイクを飛ばして追いかける。照り付ける日差し、風に揺れる服と豊かな口髭、横切っていく影。
辿り着いた先で跳んで跳んで飛び交うバイクの群、土煙をあげ、土砂に身を投げ出しながら鎬を削り競い合うバイク乗りたちの集う場所。
声をかける店の常連・顔見知り。
瞳の輝きが増すのは「求めていた」ものの一つに巡り合えた嬉しさから。そして、交わし続けた「約束」を思い出したかのように瞳はさらに輝きながら眩い太陽を見つめる。
木漏れ日が差し込む木々、行く先を照らすように白く輝く道、流れ落ち降り注ぐ光の線、うねり、縫うように、抜け出すように、「色」が消え去り、風を切り、延々と走り続けた先…。
その後どうなってしまったのか、気になる終わり方だった。[良:1票]