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<ネタバレ>個人的にゴダールは「はなればなれに」や「女は女である」、「男の子の名前はみんなパトリックっていうの」といった小品の方が好きだし、未だに「勝手にしやがれ」や「女と男のいる舗道」「気狂いピエロ」なんて退屈な映画の衝撃が延々と語られ続ける現状に違和感を覚える。
ジャン=ピエール・メルヴィルが長々とインタビュー受けるわ、「大人は判ってくれない」で助監やってたフィリップ・ド・ブロカがカメオ出演しくさるわ、この映画の監督本人が主人公を“殺す”キッカケを生むフザケ振り(短編でもジャン=ポール・ベルモンドの吹き替えを敢行した男)。ヒッチコックでもここまでやらんわ。観客をナメ腐った腹立たしいほど遊んでやがる。その遊び心にハマる奴はハマる中毒性。
ストーリーはシンプルかつ面白い。盗んだ車で走って逃げて殺して逃げて盗んで女ひっかけて逃げて盗んで逃げて盗んで逃げてを延々と繰り返す。盗みやっといてあーだーこーだ言い訳ごねる映画です(多分)。
帽子を被った主人公のミシェル(ジャン=ポール・ベルモンド)が颯爽と登場、様子を伺う顔・顔・顔、配線を繋いで盗んだ車で走り出す。
手に入れた得物を乗り回してはしゃぎ、我が物顔で独り言をほざき散らす。
タランティーノといいホークスのマシンガン・トークといい、この手の映画は字幕を追うなどという退屈な作業は避けた方がいい。たとえ山田宏一や蓮實重彦といった面々がこさえた最高の字幕だったとしても、原語で聞き映像だけを追った方が楽しいし面白い。
フランスの田園風景を疾走するのどかさ、主人公も半分浮かれながら見えざる追っ手の存在に不安を抱き始める。ブツ切りの音楽、変な飛び方をするカットが気になる。最初はイライラするが、何時の間にか慣れてしまう不思議。
白バイとのジリジリした追いかけっこ。
ショートのパトリシア(ジーン・セバーグ)も良いが、途中出てくるセミロングの黒髪の女性の方がそそられる。男の誘いに服を一枚一枚脱ぐように折れてしまう女心。この一連のシーンは物凄く退屈だが、物凄く心地良い退屈さでもある。
ところどころで警察と入れ違うスリル、トイレでの盗み、妙に暗いエレベーターにおける緊張。
ラストシーンの何とも言えない切なさ。
徐々に弱々しくなり、力なく地べたに倒れる姿。最期の言葉はそのままの意味か、それとも自分に対しての言葉だったのか。それはミシェルにしか解らない。