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<ネタバレ>2011年7月22日に発生したノルウェー連続テロ事件を題材にした作品。
報道では知ってはいたが、実際に映像化するとかなり衝撃的な内容で、
爆薬の準備からウトヤ島の殺戮までを綿密に描いた冒頭30分の緊張感は圧巻。
今までのグリーングラス監督なら事件そのものを切り取るが、本作はむしろ事件後がメインで、
生存者ビリヤル、凶悪犯ブレイビク、彼を弁護するリッペスタッドの3人を中心に、
静かに淡々とノルウェー国内を揺るがす断絶と波紋が広がっていく。
竜頭蛇尾の構成に思えるが、娯楽映画ではないのは当然で、
それでも後遺症とPTSDに苦しむビリヤルの慟哭、大義を掲げながらも実は何の取り柄もないブレイビクの驕り、
プロとして職務を全うするリッペスタッドの苦悩が重く響き渡り、最後まで引き込む。
これは考えされられる映画ではない。
自由と民主主義のために守り抜くか、憎悪を憎悪で返す行為で国家を明け渡すかのどっちかだ。
たとえ腸が煮えくり返っても、絶望して死にたくなっても、強く生き続けることがブレイビクに対する最大の"復讐"。
現在でもブレイビク信奉者からの脅迫電話が被害者家族には絶えない。
多様性の代償がこれならば、この事件と民主主義を揺るがす戦いは、
ポピュリズム台頭の時代においてまだ終わっていないのだ。