2.《ネタバレ》 不良が喧嘩ばっかりしてるマンガって苦手なんだけど、これはとっても面白かった。何より笑いのセンスがかなりキてる。旅館のエピソードなんて何度読んでも笑ってしまう。
あとこのマンガってギャグだけじゃなくて、真剣な決めの場面に対しても、「かっこいいぜ…」「決まった…」と突っ込み(客観視)の台詞が入る。たぶん西森さんは自作に対する客観性がものすごく強い人で、まじめなことを書くとすぐ照れてしまうんだと思う。
客観的な視点は創作全般においてはもちろん、一人でボケと突っ込みを兼ねなければいけないギャグ漫画家にとっては絶対に必要な力。そういう意味では西森さんはずば抜けていて、たとえ小ネタであっても全然すべらない安定感を持っている。そして実はすごくかっこいい連中ばかりを描いているのに、全然嫌味がない。この辺りも優れた突っ込み力の賜物だろう。
結末に向けてちゃんと伏線を張っているのも良い。気楽に読める作品でも、やっぱりプロットががっちりしてると満足感が違う。欲をいえば最終話近くが急ぎ足になって、わずかに伏線を拾い損ねているのがもったいないかな(たとえば魔本の起源はほのめかすだけに終わってるし、藤木が闇夜の谷川に飛び込めたのは例の河童のおかげなんじゃないかと思うんだけど説明はなし)。
とはいえ読後の爽快感は最高だった。全体を通して暗い要素は薄く、敵役ですらラストの行動は清々しい。読んでいてすごく気持ちのいいエンターテインメントに仕上がっている。