1.これに優るSFコミックに出会った事はない(未完だけどな)。
舞台が凄い。端から端まで何光年あるかわからんような、超巨大大陸ですぜ(作中の言葉を信じると数十光年は確実に越える)。どんだけヒューディーが暴れ回っても、あの世界の1エピソードにしかならない。その整理不可能な隈雑さが素晴らしい。
画が凄い。大野安之の画力はデビュー時から輝いていたが、このシリーズではフォルムが崩れてグチャグチャになる所まで行く。そのスタイルが完成したら、今度は他ジャンルの取り込みだ。絵柄を取り込むだけでなく、そのタッチが使われるマンガ世界のバックボーンまで取り込んでしまう。もちろんそんな程度で闇鍋化してしまうようなヤワなストーリーじゃなく、強大な敵(特に女王)が斬新なタッチで画にされる事で、他のキャラのインパクトなんて消し飛んでしまう。ヒューディーは、物語の上でも当然勝たなきゃならんのだが、タッチの強さの面でも敵に打ち勝つべく、様々に工夫が凝らされている。
言ってみれば北斗のラオウに立ち向かうシンプソンズ一家という画に、どうやったら説得力を与えうるのか。そんな、今までの作家がギャグに逃げて来た部分を、真剣に考察しながらペンを進めているのだ。
ネーミングが凄い。日本名を中国語に音訳し、さらに英語読みしたと言う固有名詞群は、他のSFファンタジーにありがちな安易なネーミングがひとつも出て来ない。当然、世界観は中国的なものをアメコミ風にブラッシュアップしたもので、一体どんな文明を元に構想したのかわけわからん状態になる。ネームが持つ力を損なわずに、様々な文献を元にしながらイメージ通りに画へ展開する根性は常人の想像の範疇を越えている。
そんな無茶やってるから未完に終るんだけどな…大野センセ、若いのに混じって萌系の画なんか描いてる場合じゃないっすよ。そろそろ一発、何かぶちかまして欲しいなあ…。