1.近ごろ文庫化されて、そちらを何の気なしに読み始めたのですが、これはいいです。自転車をキー・アイテムとして、ちょっといい話をつづった短編シリーズ。この“ちょっと”というところがポイントで、感動しまくるエピソードばかりだとかえって疲れますが、ほどよい出来でギャグもあり、どんどん次が読みたくなってしまいます。また、お話の主人公はあくまでも人間。自転車は人が使いこなす道具として描かれているところも、マニアックに陥ることを防いでいて、自転車に興味がないという人も問題なく楽しめます。もっとも、いろいろな豆知識がちりばめられていて、「なるほど、そうなのか~」と感心することもしばしばです。
アオバ自転車店に来るお客さんが毎回の主人公なわけですが、けっこう小学生~高校生くらいの年代が多いです。恋愛話も案外多いので、「高校生のラブコメ」が、この漫画の定番と言えるかもしれません。もちろん、全体を見渡せばキャラクターの世代は幅広いですし、クセのない絵でほのぼのしたエピソードがあるかと思うと、劇画タッチのアクション編もあったりで、短編シリーズのキモであるバラエティさも十分あります。
どうも出版社がマイナーなことと、自転車漫画ということであまり知られていないようですが、これはかなりおすすめ作品。なによりも、地味な内容ながら10年以上も連載が続いているということが、隠れた人気と質の高さを物語っていると思います。