1.《ネタバレ》 一番好きな漫画と言っていいかな。
本棚をオーダーで作ったとき、この漫画31巻がピッタリ入るようにサイズ指定したし。
ちばてつやの代表作は、「あしたのジョー」ではなくコイツ。
そう思ってるのは、自分とちばてつや本人くらいかもしれないけど。
さて、この漫画は、ジャンルとしては剣道漫画という括りになると思うけど、剣道を始めるのはなんと4巻から。
3巻までは、山の中で父親と宝探ししていたけど、正直、あまり面白くない。
つまり、この漫画はつまらなかったから、後になって剣道漫画に路線変更したと言える。
連載打切りにならず、路線変更で続行できたのは、「あしたのジョー」で名声を得た直後だからだろうなあ。
でも、路線変更しようが新キャラでテコ入れしようが、つまらない漫画は普通つまらないままだ。
ところが、ちばてつやはここで恐るべき能力を発揮する。
剣道を始めた主人公・鉄兵の顔がどんどん活き活きしてくる。背も小さくなって可愛くなる。合間のギャグシーンが冴えわたる。
剣道って顔が見えないから、漫画にしづらいと思うのだが、まったくハンデにしない。
ちばてつやはこの頃、漫画家生活20年にもなってたはず。
そんなベテランでも、こんな奇跡が起こるんだから、漫画って面白い。
そんな、今読んでも抜群に楽しい剣道漫画は、29巻まで続いた後、関東大会優勝という中途半端なところで突然終わる。
その後は、また宝探しに戻ってしまう。
この宝探しは、3巻までほどはつまらなくないけど、それでも剣道に比べたら格段に落ちる。
だから当時は「なんでなんで?剣道に戻して!」って思ったけど、今読むと理由がわかる。
それは、ちばてつやが「剣道で描きたいことは全て描きつくしてしまったから」で間違いないと思う。
ところで、自分は「ストーリー漫画31巻限界説」を勝手に唱えている。
それは、この「おれは鉄兵」と、こちらも大好きな「スラムダンク」が、どちらも31巻で終わっているから。
31巻を超えて続けても、「漫画の熱っぽさ」は続かないものだと信じている。