1.この世のものでない人達と交流できる特殊能力を持つお座敷芸人の少女を主人公とした怪異談。
絵的には手塚治虫似の可愛らしい絵柄ですが、微細な表情の表現がとても上手い。
第1巻は戦前日本を舞台としたレトロモダンなお座敷妖怪譚。第2巻は大陸(満州でなく上海ぽい)に渡っての支那風妖怪譚、次いで終戦になり本土に引き揚げて遭遇する戦災にまつわる様々な怪異譚。特に中盤以降、終戦直後の「焼け野原と化した東京」という極めてデリケートな素材と、幻想的な物語が絶妙にマッチングしていて圧巻。この辺りのセンスは皆川博子氏の幻想小説に匹敵すると思う。4巻に入って何故か急激にトーンダウンしてしまい、そのまま終わってしまったのは残念。
個人的には、戦前大陸幻想譚をもっと展開してほしかった感じ。諸星大二郎氏ならこの辺が得意そうな。
ちなみに本作は「夢幻紳士 逢魔編」のスピンオフ作品。こちらを先に読んでから本作読むとより味わい深いです。