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プロフィール
コメント数 3
性別 男性
自己紹介 【名前】「くるきまき」(Kurkimäki)を10年近く使いましたが変な名前だったので捨てました。
【文章】感想文を書いています。できる限り作り手の意図をくみ取ろうとしています。また、わざわざ見るからにはなるべく面白がろうとしています。
【点数】基本的に個人的な好き嫌いで付けています。
5点が標準点で、悪くないが特にいいとも思わない、または可も不可もあって相殺しているもの、素人目にも出来がよくないがいいところのある映画の最高点、嫌悪する映画の最高点と、感情問題としては0だが外見的に角が立たないよう標準点にしたものです。6点以上は好意的、4点以下は否定的です。
また0点は、特に事情があって採点放棄したもの、あるいは憎しみや怒りなどで効用が0以下になっているものです。

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1.  夕凪の街 桜の国 《ネタバレ》 
2004年度文化庁メディア芸術祭のマンガ部門の大賞作とのことで何気なく読んだが、とにかく恐ろしい本だった。表面的にはほのぼのした優しい絵柄で笑える場面も多いのに、実はその裏側に「まっくろな血」(墨汁の滴に見える)のようなものが隠されていて、そのギャップが読む人間を不安にさせるところがある。この後に同じ作家の別のものを読んでみるかと思ったこともあったが、全てそういう黒いものが隠されているのではと思うと恐ろしくて手が出せず、結局は何も読まない日々が続いた(次は「この世界の片隅に」)。今回改めて読むと、やはり笑える場面は本当に大笑いさせられるが、そもそも情緒不安定な状態で読んでいるので泣き笑いになってしまった。  テーマに関することでは、その黒いものが現代に生きる人々にまだ影を落としているというのが衝撃的だった。2020年代の現在はどうかわからないが、戦後もずっと子孫に健康被害が及ぶのではという危惧や、それが原因となる結婚差別などがあったらしいことは読後に知った(無知で申し訳ない)。弟の恋人が良家の出という設定もそれを前提としていたようだったが、過去を受け止めた現代の主人公が、根底から自分の生を肯定したという終盤の表現は非常に感動的だった。 その一方でこの本は、何かをあからさまに糾弾しようとしていないように見えたのが特徴的に思われた。社会的な方向性を極力表面化させていないため、読む側としても過去の敵に恨みを募らせるのでなく、また今その辺に見えているものに憎しみを向けるのでなく、まずは登場人物の心に寄り添う物語として受け取りたいという気にさせられる。 ただし「ちゃんと思うてくれとる?」と聞いた相手が誰なのかという問題は残る。初回の感覚としては、戦後10年も経って実体を失ってしまった悪意のようなものが、誰かが亡くなる時だけ痕跡を見せるということかと思っていた。しかし今になるとそういう抽象論でごまかすのでなく、そもそも核兵器限定でもなく、そのような普通の人々の暮らしを脅かす悪意が現代にも未来にも存在することを意識して、その悪意に自分も加担していないか、自分が悪意の宿り主になっていないかを考えようとすることが、民主社会のわれわれにとって問題になり続けるのだという気が今更のようにしてきている。 そのように、文字通り考えさせられる著作になっている。ずっと考えていかなければならない。
10点(2021-01-02 10:26:02)
2.  この世界の片隅に 《ネタバレ》 
戦時中の広島・呉の物語であり、表面的なほのぼの感に騙されていると後で痛い目に遭うと思って警戒しながらも、律儀に1話ずつ笑えるオチをつけていて本当に大笑いしてしまうところがある。また「夕凪の街 桜の国」でもそうだったが、現実というより登場人物のイマジネーションを視覚化している部分があったり、何気ない描写に深い意味があったりもするようで、マンガでも映画でも文章のように読もうとしてしまう自分としては、まずは絵で表現されたものをしっかり受け取らなければと改めて認識させられる作品だった。どこまで読み込めば本当にわかったといえるのか、いつまでも自信の持てない物語でもある。  ところで無粋なことをわざわざ書くと、この物語全体の受け取り方に関して、まず①個人の問題としては、主人公が人生の変動期と戦争の受難をくぐり抜けて、今いるこの場所での自分の存在を肯定するに至った話と取れる。同時に②少し広い社会の問題として、主人公を含む人々の家庭生活や近隣社会が、戦争に圧迫されてひどく傷つけられながらも、なお存続していこうとする柔軟なしたたかさが表現されていたとも取れる。また一方では、①②のいわば反転像として、主人公とその家族や周囲の人々に回復不可能なダメージを残した③戦争の残酷さを表現しているともいえる。基本的姿勢として戦争に否定的なのは当然のことであり、その意味で「反戦」的な作品として受け取られるのも間違いとはいえない。 物語中には個人的な立場として気になる箇所もなくはないが、それも含めて無用の対立を呼び起こさないための配慮がなされていたとも考えられる。少なくとも日本人の範囲であれば、さまざまな立場を超えて共有できる場になりうる作品であり、上記①~③をあわせた形で、昭和の戦中期を新たに描き直したという歴史的意義のある著作といえるかも知れない。  なお個人的には心優しく可愛らしいすずさんは大好きだが、その他の登場人物を含め、作中の愛すべき人々が戦争で傷つけられていくのはやはり痛々しい。自分にとって全体を通じたキーワードのように思われたのは、お姑さんの「みんなが…ええのにねえ」だった。
10点(2017-02-02 19:47:36)(良:2票)
3.  空母いぶき 《ネタバレ》 
日本周辺で実際に起こりそうなことが起こった時に、現在の枠組みで可能なぎりぎりの線で最大限のことをしようとする物語である。現実の日本国政府にはこういう決然たる行動はできそうもないという点で映画版同様のファンタジックなお話ではあるが、この状況で国民が本当に望むのは何かを考える材料を提供しているとはいえる。最後まで専守防衛にこだわっていたのはご苦労様だった。また、その気になれば可能だった自爆攻撃はあえてしなかった。 なお現時点ではアメリカの態度が作中と全く違っているが、それより日本の立場として何をするのかの方が問題になっている。  全体的にみて思ったのは、国内向けにはかなり融和的な姿勢で一貫していたということである。殊更に分断を求めるのでなく、まずは国民の生命と財産、領土と主権を守るという目的で一致しようと呼びかけている。ほか相手側にも、文明国として最低限の線を守るよう期待を寄せている(かなり怪しいが)。価値観や利害の異なる多様な行動主体の間で、最低限共有できる認識は何なのかを問題にしていたらしい。 また一つの行動が二重の意味を持っている例が目についた。例えば艦長が一機も失うなと言ったのは、金の問題でもなく損耗率(6.6%)を低くするためだったようだが、それとは別の裏の意味というのは部下にも見透かされていた。また一見綺麗事のような人命尊重の方針は、単に国際社会に向けた形ばかりのいい子ちゃんアピールとも取れるが、同時に判断の責任者や自衛隊員その他の関係者、あるいは読者を含む一般大衆が、できれば人が死ぬようなことはない方がいい、と内心思う素朴な心情にも合致している。複雑な世の中をいい方にだけ、悪い方にだけ解釈するのは間違いだという意味かも知れない。  個別の問題として、政府に対しては国民と人類社会の理解と共感が得られるよう努めることを求めていたと思われる(適時で率直な情報提供など)。また日本国の主権者たる国民には、野次馬ではなく「当事者」として、国際社会の現実に立脚した判断が期待されていたように見えた。 敵に関しても、どこかに人として心が通じる点があるはずだ、という物語になっていたのは、どうしても人を信じたがるお人好しの日本人向けでしかないかも知れない。しかし過酷なこの世界では、対決を恐れず対等な関係を作って初めてまともに向き合うことができ、その上でこそ相互信頼も期待しうるのだとすれば、その条件を整えるまでの過程を描いていたようでもある。 そのほか個人的に贔屓にしている護衛艦「ちょうかい」が砲撃で大活躍したのは、1942年の第一次ソロモン海戦を思わせて少し感動的だった。また自衛隊員の家族が出て来る箇所には心を動かされた。特に柿沼1尉の娘が、女の子だからかわいく見せようなどという作為のないまるきり子どもの顔で、これが何度も出るので泣かされた。
8点(2020-07-27 22:50:05)
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