1.《ネタバレ》 「棲星怪獣 ジャミラ登場」のエピソードである。怪獣の名前はアルジェリアの独立運動家で、1960年にフランス当局に弾圧されたジャミラ・ブーパシャ(1938~現在)の名前から取ったとされている。
宇宙飛行士が帰還時の事故で死亡した事例は実際あったようだが、今回のようにそもそも帰れなかったというのは幼少時には結構怖い話だった。これが本当にあったとすればソビエト連邦に違いないと昔は思っていたが、このドラマではなぜかフランスの仕業だという雰囲気を出している。今の感覚だとフランス単独の有人宇宙飛行などありえなさそうな気がするが、原水爆の方は超大国並みに自前で開発したわけであり、またアルジェリアの件に関する怒りの意味からも、現実味を度外視してフランスの話にしたのかも知れない。
ただし最後のジャミラが手を伸ばした先に星条旗があったのは、怒りの対象がフランスだけと思うなというようでもある。また墓碑にわざわざ日章旗を映していたのも、米仏だけでなく日本も他人事でないはずだという意味かも知れない。なお赤旗はなぜか見えなかった。
ところで最後のイデの台詞で「××者はいつもこうだ…」というのははっきり聞こえない。「為政者」とか「偽善者」という説もあるが、現在は「犠牲者」が正しいとされているらしい。
うち「為政者」に関しては、政治指導者だけに権力があるわけではないので解釈として安っぽく、そもそも最初の音節が「い」には聞こえない。どちらかというと「ぎ」なので「犠牲者」ならあるかも知れないが、それでは原因者への言及がないことになる。また犠牲者の立場を強調しすぎると、山間の村でやったような無差別テロを心情的に正当化しかねない気もする。
それより個人的には「偽善者」と解するのがいいのではと思った。そもそも「世界平和会議」などという茶番くさいのは本気にせず、どういう思惑があるのか疑ってかかるのが適切だろうが、そういう偽善にイデも騙されていたことを今回の件で思い知らされた、というなら物語としての意味がある。またイデは序盤でどこかの国が妨害工作をやっていると決めつけていたが、これもとにかく誰かを悪者にして、自分を善の側に置こうとする人類の性癖を表現していたのかも知れない。
その他、今回はフジ隊員とイデの関係が微妙だった。この二人は第14話で一緒に買い物に出かけたこともあり、佐々木守脚本・実相寺昭雄監督だとこういう関係性になるらしい。