1.《ネタバレ》 「吸血植物 ケロニア登場」のエピソードである。敵は南米ボリビアから来た植物人間という設定で、最初がスパイ物風に始まり、最後は大がかりな侵略系の話にまで発展する。いろいろ話を作り込んだようで面白くなくもないが、半端なままで終わるところも多く30分番組にまとめ切れていないようでもある。
また少し浮いた感じの要素として、途中で謎を提示しておいて最後にまとめて種明かしする趣向があったが(電源、可燃性)、これはミステリー調に見せること自体が目的で、本筋とあまり関係ないアイデアを取ってつけたような印象がある。そのために、植物人間の属性として必然性の感じられない特殊能力(発電、精神感応)まで付与しなければならなくなっていたのはよろしくない。
なお悪くない点として、隊員3人が怪しい男に感覚的な反発を覚えたのに対し、ハヤタだけが理屈で割切って高笑いしてみせたのは人格的な弱点の表現かと思った。また「近所の人」の行動は昭和の庶民を思わせた。庭園自慢の場面は富裕層への皮肉か、または貧富に関わらず襲い来る災厄という程度の意味か。
ところで今回最大の疑問点は、南アメリカというならまだしも何でボリビアという国を特定したのかということである。現在ならウユニ塩湖に憧れでもあるかと思うが昔のこととして考えると、この当時、日本でも知られた中南米の革命家エルネスト・ゲバラが活動していた国だったからではないかと思った。
今回のテーマについては最後に博士が語っていたが、「いくら高度に発達しても、血を吸って身を肥やすのはもはや文明とはいえない」という発言は、革命運動の関係でいえば科学技術の発達した大国が、現に中南米を植民地化していることへの批判ではないか。そうすると、今回の植物人間はいわばアメリカ帝国主義の表象だったことになる。その植物人間が短期間で「高等生物」になったのが強烈な欲望のためだとすれば、これもアメリカまたは人類全体への批判と取れる。
本物の後藤隊員は、すでに植物人間との戦いによってボリビアで生命を落としていたのかも知れない。2017年の映画「エルネスト もう一人のゲバラ」にも通じる話だが、しかし政治の話は個人的に好きでなく、小学生向けにも思えないので特別な評価はしない。