1.《ネタバレ》 【注意!豪快にネタバレしています】
映像作品では珍しく叙述トリックを使った作品となっており、同時進行で繰り広げられていると思い込んでいたドラマが、実は別の時系列の話でしたという大オチには心底驚かされました。映画を含めても、ラストでこれだけ驚かされた作品は近年なかったと思います。
ただし、本作について覚えているのは最終話の内容ばかりであり、見終わって数週間経ってからこのレビューを書いているのですが、他の9話はほとんど印象に残っていません。大オチのインパクトの強さはもちろんのこと、もっとコンパクトにできた話を10話という尺に拡大したために、中盤が妙に回りくどかったことも原因だったと思います。タンディ・ニュートンがラボで修理担当を手なづける件なんて、何度やってんだよって感じだったし。
世界観の脆弱性も気になりました。肝心のウエストワールドに「実在していたら、ぜひ行ってみたい」と思わせるような魅力がないし、高価なホストを毎日毎日ぶっ殺されて、それを直すために大勢のスタッフを雇っているような高コストのテーマパークがどうやって利益を出しているのかも見えてきません。客は1日4万ドルもの入場料を払わされているとは言え、どう考えてもそれ以上の運営費がかかってるだろという見栄えになっているのです。
また、これは日本版特有の欠点ではあるのですが、局部にボカシを入れるという処理は作品の価値を大きく棄損していました。テーマパーク内では人間同様に生き生きと活動していたホスト達が、バックヤードでは完全にモノ扱いされているという落差を表現するために局部モロ出しカットは重要だったのですが、日本国内でのリリースを担当しているワーナーはそれを隠しちゃっているのです。暴力描写や性的描写が多く、局部にボカシさえ入れれば視聴制限が大幅に緩和されるという素材でもないのに、なぜこんな無粋な加工をしたのか不思議で仕方ありません。