1.《ネタバレ》 同名のマンガを原作としてNHK BSプレミアムで放送した連続ドラマである。ほのぼのして心に染みるタイプのお話で、自分としては都会・独身女性・家探しのどれにも関わりがないので基本的には他人事だが、見ればそれなりに思うところもあるようにはできている。
原作が完結していなかった(いない)ということもあり、このドラマでは家探しの結果を最後に出す形にはなっていない。全編を通じた主人公の姿勢や行動が周囲の人物を変えていき、最後は若干の無常観を見せながらも、全てが前向きに動いていく予感を残して終わっている。特に不動産会社の年長社員が変わっていく(地が出る)のが可笑しく、この人物に関わる失笑/爆笑エピソードが劇中に複数入っている(泣かせるところもある)。
大都市圏で人が住む場所は、若いうちは不安定でも身辺を固めるのと並行して定まっていくのだろうが(経験がないが)、この物語では人として生きるためにはまず家から、という人物を主人公にして、住居とその他を切り分けてみせたのかも知れない。身辺が固まらない女性が中心のドラマだが、身辺も住居も固定しているとか、身辺が自由で住居も不定といった事例も出して、多様な相互関係を描いていたようである。
家探しに関して主人公は、最初は危なっかしいようにも見えたが実はそうでもなく、あらかじめ視野を広く取っておいてその中で最適点を探していくやり方にも見える。納得できる結果を得るためには、自分にとって不要なものをはっきり知るのも重要かも知れない。また独身女性ということに関しては、要は“寂しい”という顔をする人物が結構いたのは寂しげな雰囲気を出していた。
家さえあれば幸せが保証されるわけでもないだろうから、主人公にはその後の可能性もぜひ意識してもらいたいところだが、このドラマで見せた主体性と堅実さからすれば、少なくともこの人が道を間違えることはないのだろうとは思う。肩ひじ張らずに前を向いていくのがこの人にはふさわしいと自分も思ったが、ただし一つだけいわせてもらうと、ときどきは靴下を違うのにしてもらいたい。
なお主演の森川葵という人はこの当時21歳くらいで、劇中人物は26歳のためかなり年上の人物を演じていたことになるが、これは原作の主人公の可愛らしさを違う形で表現しようとしたのかも知れない。ほかに派遣スタッフ役の陽月華(ひづき はな)という人は宝塚出身のようで、この人の役者ぶりがものすごく印象に残るドラマだった。