1.《ネタバレ》 文句なく秀作。本国韓国で58%視聴率は、さもありなん。ストーリーにはあり得ない感もあるし韓流が得意とする事故や出生秘話もあるが、いわゆるドロドロ韓流とは違う。
脚本 人物描写が丁寧。自然にドラマ全体に手抜きなしの丁寧さを感じる。主なる登場人物の人生に因果応報の筋書きが織り込まれている。
パン職人のキム・タックとク・マジュンは異父兄弟だが、タックがパン作りに邁進する一方、マジュンはタックに勝つことばかりに固執し負けていく。単純にタックは善、マジュンは悪、と分けられそうだが、このドラマのすごいところは、マジュンが傷ついて問題行動を起こす前には、必ずマジュンが傷つくことである。それは、タックによって、師匠によって、父によって。傷つけたほうはそれに気づかない。いつも明るく前向きな主人公でさえ、マジュンが良心に目覚めようとするのを邪魔してしまう。悪役でありながら、主人公を喰って人気が出た理由もそこにあるだろう。つまり悪人にも理があるのだ。
伏線とその回収 細かく張り巡らされた伏線が必ず回収されていく。見ていて非常に爽快だ。一例を挙げよう。タックは幼少から人並み外れた嗅覚をもつ。幼少期に、イーストの匂いに導かれて真夜中に知らず知らずのうちに製パン室(立ち入り禁止の部屋)まで来てしまう。そこで実父のパン作り前のルーティーンポーズを覗き見てしまう。それがばれて怒られる。「いい匂いがしたから来ちゃたんです。」と言い訳をする。
まあ、よくある筋書きなのだが。「いい匂いがしたなんて嘘をつくな」とハン室長に怒鳴られる。タックは必死に弁解する。「本当です。甘い香りがしたから覗いたら、会長(父)さんが、手をこういう風にして(と、ルーティンポーズを真似する)」この一言に実父は驚く。
自分がルーテイーンポーズをするのはイースト発酵前だから。このように、タックが天才的嗅覚を持つというエピソードを、説明ではなく父が見せる驚愕の表情で解説していく。そのようなシーンがちりばめられている。
役者 力のある役者陣である。脇役、端役までもいい味を出している。師匠役のチャン・ハンソンが大変気に入っている。
人生訓 師匠の教えが人生訓として心に残っている。「人を憎むことなく怒りを鎮め、理解して許しながら生きろ。それでこそ勝てるのだ」