みんなのシネマレビュー |
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ネタバレは禁止していませんので 未見の方は注意です! 【クチコミ・感想(9点検索)】
9.《ネタバレ》 ビートルズで始まりデヴィッド・ボウイで閉める、第三帝国の社会生活という微妙かつ一歩間違えれば炎上必至のテーマなのにポップながらも重いテーマはきっちりと押さえている、これほど鮮やかな脚本が書けるこの監督はやはり天才なのかもしれない。考えてもみてください、太平洋戦争中の大日本帝国の市民生活をポップな基調でストーリーテリングする映画なんて、あったら面白いとは思うけどそういう発想も実現させる企画力も今の日本映画人は誰も持っていないんじゃないかな。 この映画で描かれるドイツ国内の生活は、史実とファンタジックな要素が絶妙なバランスでミックスされているのが特徴です。ドイツのどこの地方が舞台とされているのかは判らんが、屋外のシーンは終盤までは穏やかな晴天ばかりというのも興味深いところです。そこで描かれているのは平穏な市民生活で、史実でもナチスは革命が起きた第一次大戦敗戦のトラウマがあり、戦時中も国民にはいわゆる“パンとサーカス”が途切れないようにすることには熱心で、フランスやポーランドそしてソ連から略奪した食料や物資を惜しげもなく国民に供給しており、そういう意味でもドイツの一般国民にもある種の戦争責任があることは否めないんじゃないでしょうか。 主人公のジョジョ少年を観てるとどうしても『ブリキの太鼓』のオスカルを思い出してしまいますが、もちろんオスカルの様な怪物的な存在ではなく、歳が離れたユダヤ人少女にだんだんと惹かれてゆく演技には説得力を感じました。この映画では靴と靴紐が伏線の一つなんですが、広場で吊るされたスカヨハの脚と靴だけを見せてジョジョが母親の死に対面するシーンには、胸が締め付けられかつ鳥肌が立ちました。監督自身が演じたアドルフは明らかにドイツ国民を操ったナチス・イデオロギーの擬人化なんですけど、ストーリー上はあまり前面に出てこなかったところは良かったと思います。サム・ロックウェルのゲイの大尉もいい味出して泣かせてくれました。なんか『戦場のピアニスト』のトーマス・クレッチマンみたいな役柄でしたが、このゲイ大尉の方がはるかに印象に残ります。そしてビンタの後のジョジョとエルサのダンス、こういう撮り方ができる監督の才能に拍手喝采です。 【S&S】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2024-10-06 11:32:16)(良:1票) 8.Amazonプライムにて鑑賞。 やられましたね、これは。完全にノックアウトされました。 文句のつけようがないです。 たまにはこう言う映画も見るべきだと痛感しました。 【ぴのづか】さん [インターネット(字幕)] 9点(2024-01-31 16:38:57) 7.《ネタバレ》 ナチスの時代を背景に、少年の成長譚を描いているのですがこれがもう切り口斬新。外国人から見ると一般的には専制とユダヤ迫害でキツイ印象しかない第三帝国も、その国の少年にとってはヒトラー総統は超絶憧れの人物。だからユーゲントに入るのもおずおずながら希望にあふれ、彼の目を通して見る日常もまあまあ明るいのですね。空想の友達はアドルフだし。 基本明るく軽くナチをおちょくる監督のタクトはとことんふざけているのだけど、突然リアルな残酷をはさんでくる、その塩梅が絶妙です。 「ぼく間違っていたかも」と親友のヨーキーがぽつりとこぼす終盤。ドイツは敗れ街はがれきの山と化し、ジョジョ少年は心の友アドルフを追い出して一段大人へと成長するのでした。D・ボウイの「ヒーローズ」に合わせて踊るジョジョとエルサ。親衛隊から、戦争から、そして子供の時代からの脱却をこんな風に清々しく描写した監督の力量に感嘆します。 大人の役者もみな良いです。あの時代をコメディとして演じるのはとても難しいと思うのですが、ぎりぎりの線で踏みとどまるサム・ロックウェルも悲壮すぎない演技に抑えたスカヨハもとても良い。監督のアドルフは完ぺきにぶっちぎってましたが。(笑) 【tottoko】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2022-03-24 23:58:38)(良:1票) 6.《ネタバレ》 彼の名は、ジョジョ・ベッツラー。アドルフ・ヒトラーを心の底から信奉し、現在敗色濃厚なドイツの最終的な勝利を日々神に願い、そしてユダヤ人を劣等民族だと信じて疑わない、愛国主義の見本のような10歳の少年だ。だが、ドイツ少年団のキャンプに参加した際、彼はウサギを殺せという命令を実行できず、ジョジョ・ラビット(臆病者)と言う不名誉な渾名を付けられる。そればかりか、手榴弾の扱いを誤り、大怪我を負ってしまうのだった。周りの友達が皆、戦地へと駆り出される中、彼は母親とともに自宅療養を余儀なくされる。空想の中の友達である〝アドルフ・ヒトラー〟と空しい日々を過ごすジョジョ。ところがある日、彼は自宅の屋根裏に謎の少女が密かに暮らしていることを知るのだった。「間違いない、彼女はユダヤ人だ」――。すぐにでも秘密警察に知らせようとするジョジョだったが、この件には母親が深く関わってることが分かり、彼は苦しい板挟みに陥ってしまう…。第二次大戦末期、時代の空気によってナチスの信奉者となった少年とユダヤ人少女との密かな交流をコメディタッチで綴ったヒューマン・ドラマ。アカデミー作品賞にノミネートされ、世間の評判もすこぶる良かったので今回鑑賞してみました。いや、噂に違わぬ素晴らしい出来でしたね、これ。ナチスのホロコーストと言う非常に重いテーマを扱いながらも、最後までコメディタッチの軽いノリを貫き通したのは英断だったと思います。なにより笑いのセンスがすこぶる良い。ナチスの秘密警察が人に会うたびに一から「ハイル、ヒトラー」を繰り返すとこなんて思わず笑っちゃいました。飄々とネタを披露するサム・ロックウェルもナイスな仕事ぶり。ブラックな発言を繰り返すあの太った女性なんて、もはや吉本新喜劇のノリですね。悪趣味一歩手前のぎりぎりのラインを突くこのユーモアのセンスはなかなかのものがありました。もちろんそれだけではありません。時代の空気なので仕方ありませんが、このジョジョと言う少年があまりにもナチスを信じ切っていて最初は嫌悪感爆発。でもその後、このユダヤ人の少女に徐々に心を許してゆき、次第に洗脳が解けて、やがて彼女にほのかな恋心を抱くとこなんてホント巧い。彼女のためにジョジョが書く手紙も切なすぎます。スカーレット・ヨハンソン演じる彼の母親のエピソードなんて涙無くしては見れません。惜しいのは、彼の空想上の存在である〝アドルフ〟がいまいち巧く機能していないところぐらい。笑って泣けて最後は深く考えさせられる、素晴らしい作品でありました。 【かたゆき】さん [DVD(字幕)] 9点(2022-03-14 16:13:07) 5.《ネタバレ》 戦争の残酷さを描きながら、子供の視点を軸としたファンタジーにもっていくのがおもしろい。空想やロマンスを取り入れて、明るさと暗さをうまく織り交ぜながら、過酷な時代の中で少年が成長していく様を温かくみつめる。絶対的だと信じていた世界が少しずつ崩れていく中で、少年の心がどう変化していくのか。ラストの落とし方をどうするのがが気になったが、最高でした。 【カワウソの聞耳】さん [インターネット(字幕)] 9点(2021-11-06 22:08:37) 4.《ネタバレ》 強く美しい母親が、愛する息子に向けてカチッと独特の“ウィンク”をする。 もしかしたら、あのウィンクは所在不明の夫が、彼女に対してよくしていた“仕草”なのかもしれないな。と、思った。 そんなことを暗示する描写は特に何もないのだけれど、非情な戦乱の中、優しく、明るく、息子を愛し、「できること」をし続けるこの気高き女性は、きっと壮絶な経験と、深い愛情に包まれた、濃密な人生の上に立っているのだろうということを想像させた。 そういうことを何よりも先んじて言及したくなるくらいに、スカーレット・ヨハンソン演じる主人公“ジョジョ”の母“ロージー”のキャラクター造形が素晴らしく、この映画の根幹を担っていたことは間違いない。 詰まるところ、彼女の一つ一つの言動こそが、息子に対する“愛情”と“導き”であると同時に、この映画のテーマに対する「真理」であった。 「愛は最強の力よ」と、母親は息子に言う。 戦禍の混乱と、人間の心の闇が渦巻く状況下でのその彼女の台詞は、字面のみを捉えれば、無責任で能天気な印象を受けるかもしれない。 しかし、母親であり、一人の女性であり、信念を持って生きる人間である彼女が放つその台詞には、彼女の「人生」そのものに裏打ちされた言葉以上の重みと意味が内包されていた。 彼女はその言葉を息子に向けて発してはいるが、彼に対して背を向けており、目線はどこか遠くを見ているようでもあった。 その他の数々の台詞や行動においても、その一つ一つが魅力的かつ説得力をもって、息子と、我々観客に突き刺さるのは、それらの言動の裏に見え隠れする彼女の人生に、ドラマ性と真実味を感じるからだ。 劇中、主人公の母親についての描写は、敢えて意識的にぼかされている部分が多い。 2年間音信不通の夫の正体、長女の死の真相、サム・ロックウェル演じるクレンツェンドルフ大尉(最高!)との関係性、そして「できること」をする理由と、“あのようなこと”になってしまった事の顛末。 そこには、メインストーリーとして描かれる主人公の少年の葛藤と並行して展開していたのであろう重厚なサイドストーリーがあるに違いない。 (そのサイドストーリーの映画化も充分にあり得るのではないか。そのためのスカーレット・ヨハンソン起用だったことも充分に考えられる。) 随分と主人公の母親の話を長々と綴ってしまったが、無論この映画は10歳の純粋な少年の目線から描き出される確固たる「戦争映画」である。 ただし、その表現方法はまったくもってオリジナリティ豊かなイマジネーションに満ちあふれていた。 その特異な映画世界には、「マイティ・ソー」を次元を超越した“極彩色映画”に転じさせてみせたタイカ・ワイティティ監督の異才がほとばしっている。 今まで観てきたどの戦争映画よりも“可笑しい”。そして、だからこそあまりにも“悲しい”。 混乱の最果て、“滑稽さ”が極まる戦禍の只中に放り込まれる少年。 戦場シーンは数多の映画で観てきたけれど、少年が信じた全てのものが、脆く、愚かに、崩壊していく様を目の当たりにして、只々涙が止まらなかった。 そこに映し出されていたものは、通り一遍的な激しい戦場の凄惨さではなく、10歳の少年の心を蝕み覆い尽くす「絶望感」そのものだった。 “世界の終わり”を、その小さな身体一つで受け止めて、あまりにも大切なものを失い、深く大きく傷つき、それでも少年は命をつなぐ。 結べなかった靴ひもをぎゅっと結び止め、“独裁的”なイマジナリーフレンドを窓の外に蹴り飛ばす。 それは「鏡」に映った自分が、本当の意味で大人になった瞬間でもあった。 ジョジョよ、さあ踊ろう。好きなだけ、自由に、踊ろう。 【鉄腕麗人】さん [映画館(字幕)] 9点(2020-12-03 23:08:30) 3.《ネタバレ》 忘れられない一篇になりそうです。 同性愛の象徴だったかもしれないキャプテンKの痛ましい愛情、片目だったから読み間違えていたわけではないところとラスト。。。 靴ひもがずっと伏線としてあったのもいいですね。いい仕事しています。子役さんも最高、スカーレット・ヨハンソンのお父さん役のところはこの方の更なる可能性が見えてウキウキしました。生き残ったもん勝ち!生き長らえないと・・・ 【HRM36】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2020-11-23 20:40:08) 2.《ネタバレ》 出尽くした感のあるこの題材を使って、これだけの個性を出したのはお見事! そして、起承転結の展開が素晴らしい。 およそ30分おきくらいでしたか、絶妙に変化が起こり、まったく飽きることはありませんでした。 特にあの「靴」のシーン・・・その前後の流れも含め名場面と言えましょう。思い出してもグッときます。 あのヒトラーは彼の頭の中で作られた存在なのでしょうが、実は本作そのものが彼の空想ではなかったか・・・ (もちろんいい意味で)カラフルな童話の絵本の世界に入り込んだ気がしました。 【午の若丸】さん [映画館(字幕)] 9点(2020-03-04 23:02:04)(良:1票) 1.《ネタバレ》 これは見事なる子供のロマコメ映画。 恋をまだよくしらないジョジョと、彼の家にかくまわれた、彼氏がいる年上のユダヤ女。 ジョジョが「どこに住んでるか絵を描いて」といえば、彼女はジョジョの顔を描く。 「これ僕じゃん!」って言うと「そこに住んでるのよ」と応える彼女。 ふたりの未来を予言するかのように、たしかにジョジョの脳内にはユダヤ女が住み始めるのだ。 彼が彼女を好きになっていくプロセスは、彼女に偽の彼氏からの手紙を書いて、彼女に彼氏をあきらめさせようとしたり、ユダヤ狩の男が見つけたお絵かき帳に、彼氏が八つ裂きの刑(人間大砲の球にされたり)になっている絵が書かれているところから伝わってくる。 (おなかにチョウチョひらひらは、分かりやすすぎ笑) でも彼は、ユダヤがどう悪いのかいまいち分かってない。 とりあえず、ヒトラーがそういってるから、そうなんだ、くらいのレベル。 だって地下活動している母親が、身分を隠すために息子をヒトラーに心酔してる子にしたてあげてるだけなんだもの。 で、ジョジョの「彼女がユダヤじゃなければ隠さずに付き合えるのに・・・」というもどかしい思いは、ラストあたりで戦争終結したあとのセリフでよくわかる。 隠し扉のむこうで彼女が「どっちが勝ったの?と聞いて来た時に 「僕たちが勝った。ドイツだよ。」と答えたことで。 つまり、「彼女がドイツ人だったらいいのに」という願望だ。 とにかく、子供の脳内はシンプル。 「なんかいつも近くにいるこのねーちゃん好き。」 「彼氏がいるなら、あきらめて僕を好きになって!」 「ユダヤじゃなけえば、堂々とつきあえるのになぁ~」 そんなものである。 でも子供の恋なんでのはそもそもそんなものなので、これでOK。そして楽しく微笑ましい。 最後にドアの外に出た彼女が、彼をひっぱたいたとき 「あ、彼と一緒にパリにいくっていうのは、この家を出るためのうそだったか。」と一瞬思った。 実際そうかもしれない。 でも、そのあと「どうするのこれから?」と聞かれたあとに、彼女が体を「どうしよっかな~」と迷うように左右に動かす動作から次第に踊るようなかんじにあなるに従って 「まいった!」の一言、なんてキュートなエンディング。 母親のスカヨハが首吊りされたのは残念だったけれど、彼女が生きてたら戦後は、ユダヤ人の孤児をあずかってくれる家に連れていかれて、ふたりはもう逢えなくなっていたはず。 だからこそ、ふたりが手を取り合いパリへ行くといハッピーエンドを作るために、ふたりの恋愛成就のために、母は首吊りされなけえばならぬのであった。 首吊りされたのが顔を見ずとも観客も「母だ」と分かるあの靴。 あの靴で、どこかの階段の近くで母が語った、愛の偉大さ。 そして部屋で見せてくれた「愛のダンス」。それらが伏線となり、エンディングの二人の愛のダンスの感動が際立った。 ユダヤの血が入ったタイカ監督も、アホっぽいヒトラーを演じて、この映画でアカデミー賞脚色部門でオスカーをもらって、ヒトラーへの仕返しも充分果たせたといえよう。 【フィンセント】さん [映画館(字幕)] 9点(2020-02-11 17:38:43)
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