みんなのシネマレビュー |
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ネタバレは禁止していませんので 未見の方は注意です! 【クチコミ・感想(7点検索)】
4.《ネタバレ》 猿は道具を得て人のようなものになったという。さて人のようなものは知恵を得て何になるのであろうか。聖書をなぞったといえば確かにそうなのだが、映像や道具立ての意匠がスタイリッシュで多彩な味付けが飽きさせない。ダンスシーンは素晴らしい出来。とはいえ娼館のくだりは長いし、遠慮なしのえぐい描写は悪趣味で気持ち悪い。最後、知恵を得て主人公周辺は社会正義と知識欲に固められ、あっぱれあっぱれめでたしめでたしと見える。しかしその一方、どうも慈愛からは遠ざかったように見えるのは皮肉であり滑稽である。人として生まれた以上どっちに向かってもどうあがいても誰も幸せになれないのかもしれない。 【ほとはら】さん [映画館(字幕)] 7点(2024-03-28 15:35:09) 3.《ネタバレ》 ロングランしてて、アカデミー賞も各賞とってちょうどいい時間にやってたので観ました。 スタイリッシュな芸術的作品も割と好きな口です。 R18なんで大人向けの寓話的な作品という事で、まあ面白かったんですけど、個人的にはコメディっていってるけど、ある種、今のリアル過ぎ、生々しすぎじゃね?(寓話的幻想的作品が、現実以上に現実的に見えてしまう瞬間があるみたいな)という感じがして、ブラックユーモアとして笑わせようとしてるっぽいけど笑えないかな(苦笑)て感じでした。フェミニズム的題材作品としてみると、今だとちょっと古めかしいというか、時代設定が昔なので仕方ないかもしらんけど、せっかく寓話的ファンタジー作品をやるならもっと先端的にえぐったのをやってくれると逆に痛快で好きだったりしますが、そこまで振り切れてはおらず、差し引き今の現代的感覚と同じくらいになっちゃったかな、という感じ。 斬新さがちと足らんかな? あとはなんだろう、下世話ですけど、アカデミー受賞作で話題になった女優が2~3年後くらいに濡れ場とかの多い汚れ役をやり出すサイクルがありまして、典型的なそういうサイクルの作品だなあと思ってしまったのと(とはいえビジュアルは素晴らしいのに当たって各賞も受賞して良かったなというところではありますが)、主人公が子供から現代的な女性に成長して魅力的になってくのは良いんですけど、最終的にたどりついた安寧の地が自らの力で勝ちとったものではなく 「たまたま運よく獲得できただけ」 なので、じゃあこの話が終わって平和な人生が続いてくかというと次の瞬間無慈悲な理不尽によってすべてを失っても全く不思議ではない状況で、ハッピーエンドと言えるのかどうなのか何とも言えん終わりだなあと思ったのと、最後のオチは割とベタなブラックジョークなんですけど、中盤で不遇な人々に対する慈悲の心は学んだのに、キリスト教的な、 「汝の敵を愛せよ」 は学習しなかったんだなあという、精神的に成長して大人的人格を身につけたけど、それには欠陥があったみたいな、そんなようなことを思いました。 あと、(映像作品での)フランケンシュタイン的映像表現があるせいで、画面が結構グロテスクだったりして、私はグロいのは苦手なのでちょっと受け付けなかったのと、話のメインの動機や道標が、性的快楽とか結婚とかになってるのが、今だとセックスレスとか、そもそも結婚自体しなくなってきている現状を踏まえると、生々しいだけで、ちょっと価値観が古めかしいかなとも思ったり。個人的には、ペドロ・アルモドバル監督の「私が生きる肌」くらいやってくれたら、ひゅー! って思ったんですが。 とはいうものの、ビジュアル(衣装や舞台)は素晴らしいし(私は主人公の服のパフスリーブが赤毛のアン(映画)のスタイルなので時代は1920年代前後くらいかなあとか思ってたのですが)、エマ・ストーンの演技も素晴らしくて総じて楽しませていただいた感じです。 ああ、あと、主人公が「世界を見る」というので、もっとアレコレいろんな場所に行っていろんな経験を積むのかと思ったら、意外とそんなにどこにも行かなくて、物足りなかったかな。旅程は船に乗ってアフリカの辺? にちょろっと立ち寄ってお金無くなって、パリに舞い戻って、家に帰ってきただけですからね(上映時間は長いんですけど)。 そんなところです。 【sim】さん [映画館(字幕)] 7点(2024-03-25 13:44:10) 2.《ネタバレ》 現代によみがえったフランケンシュタインの物語。いや、「フランケンシュタインの花嫁」の、もしも花嫁が生きていたら、の世界線の続編ですね。フランケンシュタイン博士とモンスターは同一人物で。 赤ん坊の無垢な脳みそが成人女性の体に入ることで、世界と人間の本質について、文字通り全身で猛スピードで学習していく。そういうテーマだから、人類最古の商売などともいわれるあれについても、逃げずに真正面から描写している。だいぶ衝撃的な展開の続く話ではありましたが、主人公ベラは最終的にはなんだかかなり普通の女性に育った感じで、ラストはそこまでえぐいものではありませんでした。中盤でショックを受けた人間社会の残酷性については、彼女はどう消化したの?って感じ。そこは結局我々一般人と同じように、知っているけれど知らないふりをするしかない、っていう風に自分を納得させているのですかね。 エマ・ストーンは大熱演で、彼女しかこんな役は演じられないだろうな、と思う反面、まだ幼児段階のベラにもちょっと貫禄がありすぎて発する雰囲気が恐ろしく、そんな彼女に周りの人が無条件にひきつけられていくのが不自然に感じられてしまいました。これは単に個人の感覚なのですが・・・ あと、音楽は大変印象的でしたね。 【Northwood】さん [映画館(字幕)] 7点(2024-02-11 19:21:23) 1.《ネタバレ》 前作『女王陛下のお気に入り』で免疫はできていたと思ってたヨルゴス・ランティモス作品ですが、今回もまた独特すぎるワンダーランド。前作では3人の女優の演技合戦が見物でしたが、今回はエマ・ストーンの独壇場。冒頭の赤ちゃん演技から終盤の難しい語彙も駆使する知力あふれる姿まで、やりたい放題という感じでした。それが女性の解放と自立という本作の主題とも見事に合致していて、彼女の表情や動き、ファッションを見ているだけでなんとも爽快な気分になるから不思議です。とくに、後半に彼女が「知」にめざめるきっかけが、「男」ではなく、本とシスターフッドであったというところは、とてもよかった。マッド・サイエンティストともいえるゴッドウィンがそれでも彼女と関係を築けていたのも、科学という知への執着があったから。また、船で出会った黒人青年とベラの会話もよかった。彼が現実の矛盾を象徴する「格差」をベラに見せつけることで、本作が単に性欲や性愛の話ではなく、私たちも生きる「世界」についての寓話であることが明らかになります。セックスのシーンばかりが話題になるのですが、実は「知」というものの可能性を描いたものとして受け取りました。 とはいえ個人的にはちょっと難点も。まあ、キャラの位置づけ上しょうがないのですが、マーク・ラファロ演じるダンカンにはもう少し奥行きがあってもよかったのではないかとは思いました。ダンカンと終盤に登場するある男性はまさに「有害な男性性」の象徴なのでしょうが、彼自身のなかにある理のようなものを浮き彫りにしてはじめて、「有害な男性性」と向き合えるのではないのかな、とも思いました。 【ころりさん】さん [映画館(字幕)] 7点(2024-01-29 22:24:47)
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