みんなのシネマレビュー |
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ネタバレは禁止していませんので 未見の方は注意です! 【クチコミ・感想】
202.《ネタバレ》 トッド・ブラウニングの傑作「フリークス」を思い出す作品。 「エレファントマン」ことジョゼフ・ケアリー・メリック(ジョン・メリック)の人生を淡々と描いていく。 ファースト・シーンで女性が象に襲われるモンタージュ。この夢はメリックの誕生に関わる重要なテーマだ。彼を妊娠していた母親は事故に遭い、そのショックでメリックは全身に腫瘍が出来る奇形児となってしまった。 子供の頃は腫瘍もまだ大きくなく、普通に喋り一般の学校にも通っていたようだ。 それが成長していく過程で腫瘍が肥大化し、徐々に症状が悪化していく。 人々はメリックの姿を見て「奇人」だの「化物」だと罵り差別し、遂にはサーカスの見世物小屋で「エレファントマン」となってしまう。彼は偏見の目や傷つけられる恐怖で言葉も知識も封印してしまう。 そんな彼を、医者は好奇心と正義感から救おうとする。単眼の袋で覆われた“心の壁”を取り除こうと。 しかしメリックをサーカスに引き込んだオッサンは本当に不器用な人だ。 看護婦ですら悲鳴をあげるメリックの姿、だが婦長の献身的な介護や医者の熱心な語りかけでメリックは普通に喋るようになっていき、人間性を取り戻していく。 医者がメリックから“声”を聞こうとするシーンは熱い。視覚と耳に訴える。 メリックが聖書の件をする場面も良いシーンだ。院長がメリック“さん”と改めるのも。 「彼の人生は誰にも想像できないと思う」 メリックの苦労は誰にも解らない。どんなに解ったつもりになっても。我々は知り、考える事しか出来ない。 時折見せる寂しき横顔。メリックは右腕と外見の変わりに豊かな想像力と心を手に入れたのだろう。 メリックがスーツに身を包んで例の女優と語り合うシーン。彼女はメリックの“心”を見ているのだろうか。遂にはヴィクトリアの女王まで動かしてしまう。 彼の存在が認められる度に看守たちの嫉妬も大きくなる。人助けかエゴイズムか。 メリックはある出来事で再び心を閉ざしてしまう。それでもメリックの理解者でもある子供やサーカス仲間たちの協力。「俺たちみたいなのには“運”がいるんだ」 さらに駅での一件が再びメリックの心を呼び覚ます。「僕は人間なんだ!」 とりあえず婦長がGJすぎる。 再び平和な時を取り戻したメリック。彼が夢の中に見た女性は母親だったのだろうか? 彼は安らかに眠り、母親の元へと行ったのだろう。 【すかあふえいす】さん [DVD(字幕)] 9点(2014-11-16 18:20:28)(良:2票) 201.《ネタバレ》 昔、テレビで観たときはおっかなびっくりだった記憶が。 ラストシーンの意味もわかっていなかった。 観直してみると、人間の本質的なものを描いた中身の濃い映画。 見世物小屋での動物並みの扱いと、病院での待遇は天と地の差。 やっと人間らしい生活を与えられたとき、金儲けを企む病院警備員の手引きで見物客が病室に潜入したシーンは胸が痛い。 心優しいメリックを弄ぶ醜悪な人間たちに殺意さえ沸く。 ただこの見物客と、劇場でスタンディングオベーションする客との間にどういう差があったのか。 同じ人間でも、その状況次第でどちらにでも転んだように思える。 エリックをからかって追い回した少年たちも、たいした罪の意識もなくやっていることが残酷で、イジメの構造の一端を見る思い。 病院の会議で、化け物の世話など論外だと追放を強硬に主張していた評議委員が、女王の親書に黙って意見を変えるのが痛快。 嫌悪感を露にしていた師長の変化と、メリックを脱出させた見世物小屋の仲間の温かさも心に染みる。 メリックは初観劇の興奮が覚めやらぬ中、大聖堂の模型を完成させて、安らかな死の床に就いた。 これ以上の幸福は望めないという思いもあっただろう。 その選択の裏に、いかに苛酷な生活を強いられてきたかがうかがえる。 死によって、地獄のような生活に戻ることなく、人としての永遠の尊厳を手に入れることができたのだから、その選択は間違っているとは言えない。 【飛鳥】さん [DVD(字幕)] 8点(2013-07-01 00:15:35)(良:2票) 200.《ネタバレ》 (2009年の映画メモをもとに作成) 昔友人から聞いた話で、記憶も曖昧なんですが、「この作品の本来の姿は”恐怖映画”の類であり、それが何故か日本に入って来た時に”感動の映画”とやたらいわれるようになってしまった」、のだとか。 もちろん定かではなく信憑性も薄いです。 しかし僕はこの作品を初めて観た時に「感動的な映画」だと思い込んでそれを強く意識し過ぎた為か正直いうと「!??」な感じでした。感動は凄く微妙で逆にドロドロと恐ろしい重苦しい場面が残りました。 しかし今回は「恐怖映画」と決め込んで観てみると、、、非常に良質な恐怖映画であり、また深く感動する場面がありました。 2度目にしてやっとヒューマン映画だと気付きました。 ジョンメリックの姿は非常にグロテスクで、それは他のホラー映画とは比べられない程の圧倒的な恐怖とリアルな質感で生理的な不快感を与えます。 それはどのホラー映画でも味わう事の出来ない深い漆黒の恐怖感です。 悪魔のような清掃員の男がいます。いや本物の悪魔です。彼がジョンメリックを客共と引き合わせる場面なんかこれほど残酷な悪意に満ちた場面は他の映画にはありません。 おぞましいです。 作品全体には独特の暗い雰囲気があります。精神的に重いです。 しかしその中でメリックの汚れの無い心の輝きは光ります。 彼の心は美しく澄んで綺麗です。 彼には美しいものを見出す感性があり、美しい物を作り出す才能があります。美しいものに対する尊敬の念を持って、人に対して気品に満ちた美しい態度で接します。 そんな彼の人間的な素晴らしさというか、心の美しさに感動します。 最もグロテスクな肉体をして彼の心には一切の汚れた部分が無いです。 嫉妬とか攻撃性を全く表さないなど僕はとてもできません。 これをみると、肉体とは何なのだろうと考えます。 また「人はなぜ生まれてくるか?」とまで考えさせる程の恐怖映画はまずありません。 メリックは拍手喝采に包まれました。ほんとに素晴らしいです。 最後まで誇らしくあることを選んだメリックに感動しかありません。 フリークスの仲間たちがメリックを逃がす場面がありましたが、圧倒的に美しい場面です。 【ゴシックヘッド】さん [DVD(字幕)] 9点(2012-03-21 02:50:45)(良:2票) 199.《ネタバレ》 その昔公開時、高校生らを引率して映画館で見た映画。見る前は、とてもこのような映画は高校生は見ることはできないだろうと思っていたが、見事に裏切られた。いつもは悪ふざけばかりする悪たれどもまでが、真剣に見入っていた。 映画というものは、凄いものである。私たち教師がどんなに良いことを言っても見向きもしなかった連中を、何の予備知識もないのに、これほどまで変えるものなのかと思った。その時は映画を見た感想よりも、そっちの方がずっとずっと大きかった。 前置きはそれだけにして、私は恥ずかしながら、映画の初めの方は怖かった。エレファント・マンのその様相に正面から見ることができなかったのである。しかしながら、その醜い様相に慣れ、逆にそれを醜いと思う自分の方が愚かであることに気づいた。見せ物にしあざ笑う人たちに憤りを感じたが、自分にその資格はあったのだろうかと。 一方でこの映画に出てくる名もない人たちの優しい心には心打たれる。しかしまた再び見せ物小屋へ・・・。「私は人間だ」と叫ぶメリックの悲痛な叫び、それは最後のシーンに切なく表されている。 仰向けになって寝たら、それは死に結びつく。それがわかっていながら、最後は人間らしい姿で眠りにつく。このことが、最初に見た時は理解できない愚かな私だった。 【ESPERANZA】さん [映画館(字幕)] 9点(2011-05-04 19:43:18)(良:2票) 198.《ネタバレ》 “The Elephant Man”『象男』。本作が日本でヒットした要因の一つとして、今と比べて、人権意識がまだまだ未熟だった当時の時代背景があると思います。 私が子供の頃、夏祭りのお化け屋敷の隣に見世物小屋がありました。小屋の入口の隣に、上半身裸のお姉さんが背中を向けて座っていて、マイクを持った興行主が、彼女が生きたニワトリを食べるとか何とかって、啖呵を流してました。小屋の中には牛と人のアイノコ『牛女』や、蛇を食べる『蛇女』なんかもいるそうです。興味はあったけど、正直怖いのと親と一緒なのとで、見せてはもらえませんでしたが… まだそんな時代に公開された本作。当時はホラー(恐怖)映画にジャンル分けされていたと思います。珍しいモノクロ映画。ポスターの不気味な布を被った人物。テレビでは倒されて悲鳴を上げる少女と迫りくるエレファントマンの映像(CM?)が流れ、頭巾の下にはどんな恐ろしい素顔が隠れているのか?って方向で宣伝されていたと思います。 また後年『マイケル・ジャクソンがエレファント・マンの骨を買おうとして断られた』なんてゴシップも独り歩きして、子供にも関心の高い映画でした。 初見はテレビのロードショー。思っていたのと違う内容に、下衆な好奇心は消え去り、彼の容姿の不気味さより、今まで置かれていた環境の悲惨さ、彼の豊かな感性と世間の残酷さから、「ジョン・メリック可哀そう」に変わっていきます。 彼の心の美しさと、トリーヴス先生や婦長さん、ケンドールさんの献身的な行いに暖かさを感じ、バイツや夜警の男に怒りを感じました。 当時、本作をホラーに分類するのは、メディアの悪ノリにも思えますが、ホラーだと思って観たからこそ、内容から受けるショックと感動が大きかったように思います。それは見世物小屋でトリーヴス先生が初めて彼を見て、一筋の涙を流すのに似た感覚を、私も味わえたのです。今振り返るとメディアのファインプレーじゃないでしょうか? 彼を取り返そうとするバイツにトリーヴスが言う「他の人間の不幸を利用して儲けてくれ」という台詞に、見世物小屋の小人が言う「俺たちみたいな人間には運も必要だ」という台詞が答えになっていて、とても現実的に感じました。 トリーヴスたちの行いは偽善なのか?見世物小屋に来る大衆と、病院に彼に面会に来る著名人、夜警に金を払って見に来る連中、劇場で彼に拍手を送る観客は同類なのか?世間という見えない存在が、彼をどう思うかでなく、彼自身がどう思うかが大事かも。 同じ見られる存在にしても、見世物小屋と舞台女優は違います。ジョン本人が会うこと・見られることを望むか望まないかが大きな違いです。 難しいテーマですが、彼はトリーヴスに助けられ、人間らしく生きる権利、自分で選ぶ権利を得たことが重要に思います。 でも彼は、夜警が自分を見世物にしても助けを求めない。彼が選ぶのは自分をどうするか?だけで、他人にどうしてほしいなどは望みませんでした。 そんな謙虚な彼が唯一他の人に望んだこと、駅で追い詰められた時「僕は人間だ」と叫ぶ姿が心に突き刺さります。 彼が最後に選んだのが横になって寝ることでした。聖書を愛読した彼が自死を選んだとは考えにくいですが、もし目を覚ますことがなくても後悔はない、そんな決意での就寝は、悲しくも幸せな結末でした。 【K&K】さん [地上波(吹替)] 8点(2024-02-26 12:05:56)(良:1票) 197.《ネタバレ》 フリークスを購入して文明を教えてみんなで感動…。確かに感動したにはしたんだけど、あのデヴィッド・リンチが大好きなフリークスを主役にした映画で何を伝えたかったのか?良い話だと思って見てたけど、見終わってからよく考えると、良い話かこれ?トリーヴスが抱えるジレンマは最後まで解決していないよね。不幸な見世物が幸せな見世物に変わっただけで、本質は…よくわからん。いい映画のように演出されているけど、そうではない。デヴィッド・リンチが見せたたかったのは見世物小屋の主人や彼に所有されているフリークスたち、エレファントマンをいじめぬいた雑役夫の姿だろう。病院内での「良い話」よりも人間の醜悪な側面を描いたシーンのほうがよっぽど印象に残る。「良い話」も偽善で塗り固められた芝居だ。そうか、この映画そのものが見世物なのか…なのかな。 【カニばさみ】さん [DVD(字幕)] 7点(2015-07-07 06:35:36)(良:1票) 196.初見は小学高学年か中一くらいの頃でしょうか。当時の少年誌や児童向け大百科で「ショック!これがエレファントマンだ!!」と見世物や怪物のごとく紹介されていました。当時、ホラー映画や心霊写真といった類いが流行っており、僕自身もこの手のものにハマっていたので、興味本位で観てみました。開始からしばらく、見えそうで見えないメリックの素顔に興味を抱き、その容姿を晒した時には凄いショックを受け、その後の波瀾万丈な展開に心臓をえぐられたかのような衝撃を受けました。正直、その姿を一目見たいと思ってしまうのは人間としてごく普通の感性であり、同時に醜悪でもあるのでしょう。ただ、この映画を観ることにより、自身のモラルを問いただす機会にはなるでしょうね。もっとも、憐憫の情を抱くのは、相手によっては失礼極まりないことかもしれませんが・・。 【けんおう】さん [DVD(字幕)] 9点(2014-06-13 20:36:20)(良:1票) 195.見終えたあと、感動とも嫌悪感とも単純に言い表せない、心臓に重石を乗せられた感覚が続いています。 私が実際のところ彼を目の前にしたら蔑んだ態度はとりません。ただ、手を差し伸べることができるかどうか・・・傍観するのがせいぜいでしょう。 だから内容について賞賛することも批判することもありません。 しかしながら、これをモノクロで撮った監督のセンス、そして、胸糞悪くなるイジメの描写を入れた監督の度胸に感服せざるをえません。 【午の若丸】さん [DVD(字幕)] 6点(2013-12-02 00:27:48)(良:1票) 194.一番最初に見た時(中1)、既に鑑賞済みだった年の離れた長兄に「わかるか、この映画に興味を持った時点で、お前もジョンを興味本位で観に来るイヤラシイ人間の1人なんだよ」と諭され、見透かされたみたいで嫌な気分になったのを思い出す。思春期に見れて、いろいろ感じられて良かった作品。"美"とは?"醜"とは?"普通"とは?…今はもう字幕で観ますが、ジョンの吹替は国広富之さんの印象が強いです。 【movie海馬】さん [地上波(吹替)] 9点(2012-08-01 02:23:45)(良:1票) 193.豊かな知性と感性、そして純粋な心を持つ主人公の、困難な人生を描いた本作は、 全編白黒、そして内容も重いので、疲れている時や精神的余裕のない時はかなり辛いかと。 腰をじっくり落ち着けて鑑賞することが必須。実話をかなり忠実に再現しているということで、 心を揺さぶられることはもちろん、人間としての尊厳を守るための主人公の行為は、 深い感動を与えてくれる。お涙頂戴ではないラストがとてもいい。映像演出も○。 公開当時、独創的な部分がないという点で、評論家の間では評価が真っ二つに分かれていたが、 良質な映画であることに変わりはない。 【MAHITO】さん [映画館(字幕)] 9点(2011-11-07 03:51:02)(良:1票) 192.名画とされているが、実話ものとして、どうも反感を覚える作品なのである。モデルになったジョセフ・メリック氏について、ウィキからの抜粋になるが、「・・・後の回想によれば興行師には寛大に扱われたといい、実際に自活できるだけの収入も得ることができた。(中略)しかし社会的に見世物小屋を排斥する風潮が強まるとロンドンを離れ、ヨーロッパを廻る興行に身を委ねざるをえなくなる。数か月後には職を失って貯えも取り上げられ、ようやくブリュッセルからロンドンに辿り着いたところを、以前に診察を受けたことのある医師フレデリック・トリーヴスに保護された。」「部屋をあてがうための寄付を募る投書がきっかけで広く同情を得、やがてアレグザンドラ皇太子妃の訪問を受けるなど上流社会である種の名声を得るようになった。」これが実話である。ロンドンでは興行師からいい扱いを受けているし、医師が興行師から“買い取った”訳でもない。上流社会との繋がりは、広がった同情が波及しただけの話。が、これを「彼を見世物にし、迫害するのは、粗野で無教養な民衆。彼を擁護するのは教養豊かで上流階級の医師や貴婦人。」という構図で脚色したのはイヤミそのもの。実話と全く同じにしろとは言わないが、これには不快な意図を感じる。加えて、“キワモノ”をエサに観客を呼び込んだ面は否めない点。実在したメリック氏の容貌を忠実に再現したことも公開当時の大きな話題であった。ならば、見世物小屋の興行師と映画の製作者と一体どこが違うというのだ?容貌の再現はリアリティの追及だ、それでこそ人間の尊厳が描けるのだ、とでも言うのだろうか。どこか欺瞞に感じる。メリック氏の過酷な運命、人生には共鳴するものがあるが、映画の製作者たちの姿勢が好きになれず、素直に感動できなかった作品。 【あっかっか】さん [地上波(吹替)] 4点(2009-01-15 13:12:18)(良:1票) 191.《ネタバレ》 衝撃的だった。そして切なくなった。主人公を取り巻く人間はおもに3種類。(1)彼を醜く思う見世物小屋の主人や客たち、(2)彼だって人間だ、と思うようにしてやさしく接する偽善者たち、(3)心の底から彼を案じ、愛する人たち。私も正直言ってこの映画を見た動機は(1)だった。一方、トリーヴス博士やケンドール婦人、そして劇場で拍手を送る人たちは(2)。(3)は逃がしてくれたサーカスの仲間たちと夢でしか会うことのない母親となるのだろうか。それにしても(2)の弱者を同情という優越感によってもてはやす姿は、最も性質が悪い。彼らは自分の善意に酔いしれているのだ。この映画はそんな人間性がさりげなくあぶりだされていく。そしてこの映画で最も感動するのは、そんな偽善をも受け入れるメリックの純粋さ。「生きているからこそ様々な喜びも苦しみも味わえるんだ」という姿が泣けてくる。常に受身だった彼が唯一選んだ能動的な行為が、「普通の人と同じように寝てみたい」なんてあまりにも切な過ぎる。母と観終わった後、お互い号泣したことを隠しながら無言で映画館を出てきたことを今でも思い出す。 【やしき】さん [映画館(字幕)] 10点(2005-11-20 02:28:53)(良:1票) 190.これほど観る者一人ひとりが試される映画はない。見世物小屋の暗い片隅に佇むジョン・メリックの被るマスクを剥いでみたい,その顔を見てみたいと思わない人間が,はたして何人いるだろうか。人間の獣性と神性が繰り返し展開される中,映像は次々と観る者に問いかけてくる。「おまえはいったい何を見たいのか?」それに満足に答えられるかどうか,未だに自信がない。ジョン・メリックは無垢な魂を抱いて去っていくが,残された我々は答えを見つけられない不安を携えながら,ただ立ちつくすのみである。 【Roxy】さん [映画館(字幕)] 9点(2005-11-07 12:04:36)(良:1票) 189.素晴らしく良かったです。めっちゃ途中途中で泣きました。あのジョン・メリック(あえてエレファント・マンとは呼びません)の純粋さといったら・・・彼はあんなに綺麗な心をもっているのに、そんな彼の姿を人に見せて生計をたてているあの男の憎いこと。そして勝手にジョンの部屋に客を連れてきて騒ぎ立て、ジョンの心を傷つけた男の醜いこと。色んな怒りがある中で、アンソニー・ホプキンス演じる医師との出会いでジョンは段々人間としての道を歩みだすんですね。もう本当に素晴らしいキャストでした。ジョン・メリックを演じたジョン・ハート。20数キロの特殊メイクの重さに耐えてのあの素晴らしい演技だそうです。特に喋る場面は本当にリアルです。脇を固める出演者の演技もどれも本当に良かった。そしてやっぱり白黒映画だからすごくダイレクトに伝わってくるストーリー性、表情のリアルさ。どれをとっても納得、そして感動する作品でした。ずっと見たかったこのノンフィクション映画を見れて本当良かったです。 【未歩】さん 9点(2004-11-28 17:43:24)(良:1票) 188.心臓握られた感じでみてた。ホンマに美しくなりたいんやったら、見るべき。 【ヒロヒロ】さん 10点(2004-11-22 16:49:12)(良:1票) 187.ケンドール夫人とメリックがロミオとジュリエットを交互に暗誦し、ケンドール夫人が 「あなたはエレファントマンじゃない、ロミオよ」といってキスする場面などいたるところで泣けてしまう。 彼女は同情などではなくメリックの人間性を見抜いての行動で敬意が感じられるし、彼を助ける外科医が自分の行為を省みて苦悩するのは誠実な証だと思う。少なくともアン・バンクロフトとホプキンスの演技からはメリックに対する偽善や偏見は感じられなかった。メリックは辛い人生を送ってきたが初めて人として認められ、安らかな時の中で教会の模型を作り上げて自分の生きた証を残した。きっと思い残すことなく人生の幕を閉じたのだと思う。 【キリコ】さん 8点(2004-10-19 20:45:26)(良:1票) 186.日本でも81年度外国映画配収第1位という大ヒットを記録した映画です。それと共に喜劇俳優メルブルックスに監督抜擢されたデビッドリンチが認められたきっかけの映画でもあります。それまでのリンチが撮影した映画は奇跡のカルト映画「イレイザーヘッド」僅か1本だけ。それを観ただけで彼の素質を見抜いて、この大作に起用したメルブルックスが本当の意味での成功者ではないのか?と思うのです。 グロ・エロで独自の世界をゆくリンチ作品にあって、これと99年の「ストレイトストーリー」だけはちょっと違います。ある意味万人向けですし、感動まであります。そこが嫌いなリンチマニアもいますが、私はどちらのリンチもアリだと思っているのです。 この映画は実話で、ジョンメリック(本当はジョージメリックさんらしい)も実在したというのです。リンチの興味がストーリーよりもその造形や音響にあったとしても、この作品に感動をおぼえるリンチファンは沢山いたと思います。 メリックに協力的な働きをするトリーブス役に、「羊たちの沈黙」「レッドドラゴン」などでハンニバルレクターを怪演したアンソニーホプキンス。ジョンメリック役は、「エイリアン」のジョンハート。その他も「奇跡の人」のサリバン先生役のオスカー女優アンバンクロフト(実際のメルブルックス夫人)など、確かな演技力の役者にうなります。重いタッチの映画ですが、1度観て損は無い作品だと思います。 【まさかずきゅーぶりっく】さん [DVD(字幕)] 8点(2004-09-22 17:47:45)(良:1票) 185.《ネタバレ》 トリーブスの家に行き、彼の妻とメリックが会話しているシーンで久しぶりに涙が出た。メリックを見せ物に仕立てた人々は言わずもがな、「私は偽善者だったのか?」と自問するトリーブスや、彼を含めて院長や部屋を訪れた女優も、私には多少「自分が良いことをしているナルシスト」のような偽善的な匂いがした。偽善の匂いを感じなかったのは、看護としてのプロに徹していた婦長だけに思える。しかし人々から好奇の視線にさらされ、それを糧として生きて行くしかない彼の宿命に、多少なりと違う結末を与えた点で、彼らの行為自体は善行と言える。その宿命の中で悲惨な結末を迎えるより、メリックは間違いなく幸せの中で、自分自身で結末を選ぶことが出来た。「いつか同じように、横になって眠りたいものですね」自分の死期を悟り最後の希望を選択した彼の心は、きっと今までになく満たされていただろう。エレファントマンの人生そのものよりも、それを取り巻く人間のエゴが濃厚に描かれた映画、トリーブスの行ったことは、エゴである人間でもそれを自覚すれば善行を成し得る姿を映し出している。 【six-coin】さん 7点(2004-01-25 03:18:01)(良:1票) 184.単なるキワモノ趣味だと思うんだけどなあ。アン・バンクロフトが絡んで話がややこしくなりましたね。実在した伝説の奇形児を、さも人間万歳みたいなオブラートでくるんで美しく描いてしまいましたが、実際に観に行った人の何割が人間の尊厳や心の美しさみたいな感想を抱いて帰ったか、ちょっと自信がないです。「すげーヘンなのがいた。しかも実話だ。」っていうニオイしか伝わって来ないんですよね。狼に育てられた子がいたぞ、そいつぁ珍しいや、って飛びつく人たちがぞろぞろ観に行く映画なんじゃないでしょうか。ジョン・メリックは可哀相で、ラストも涙をそそるモノでしたが、やっぱり監督がデビッド・リンチで、前に「イレイザーヘッド」を撮った人なんだ、っていう先入観が強すぎて、どうしてもキワモノ趣味としか受け止められませんでした。私自身、身体障害者に対する偏見や差別意識は極めて低い方だと思うんですがね。こういう不幸な人を、見世物小屋でお金を払って見るというのが人間のやって来た現実なんだ、という意味では存在価値がないとは思いませんが、この映画をお金を払って観に行く私たちと、見世物小屋に集まった人たちの違いがどうしても説明できないんです。そういう意味では、非常に後味の悪い映画でしたね。 【anemone】さん 4点(2003-12-09 00:16:53)(良:1票) 183.映画館を出ると、みんなハンカチで目頭を押さえていた。当時中学生の自分の目には一滴の涙も出なかった。複雑な思いで映画館を出た。当時、差別が悪いとか言う以前に差別をするという概念すら自分には無いと思っていた。でもこの映画を観に行こうと思った理由の一つは布袋を被った象男の顔である。見世物小屋の観客と同じだと気づきかなり自己嫌悪。泣いているどころではなかった。今Revewをするにあたり考えると、ポスター、新聞等の宣伝で明らかに見世物小屋の観客として映画を観させようとしていた。成功させる為なのかもしれないが、映画の中でもなかなか顔を見せない作りで、好奇心を盛り立てているように思う。もしかしてリンチは意図的に映画の観客を見世物小屋の観客に(差別をする側に)したのかも。(必死で自分をフォローしてます) 人間は皆、同情をしていても同時に差別もしているのだろう。映画の観客と見世物小屋の観客の違いは、映画では見世物小屋以外のメリックが見れることである。つまりメリックの一生を見ることで、自分が差別をしている事に気づかせてくれる。ようするに「あなたは自分の気づかないところで差別によって人を傷つけているかもしれませんよ」というメッセージを投げかけているのでは?と思う。そう考えるとこの作品はかなり他には見られない秀逸さがある。ただ人に薦めようとは思わない。なぜなら自己嫌悪に貶めるようにつくられた映画なんだから。(まだフォローしてる..) 【R&A】さん 7点(2003-07-08 17:45:54)(良:1票)
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