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プロフィール
コメント数 2396
性別 男性
自己紹介 〈死ぬまでに観ておきたいカルト・ムービーたち〉

『What's Up, Tiger Lily?』(1966)
誰にも触れて欲しくない恥ずかしい過去があるものですが、ウディ・アレンにとっては記念すべき初監督作がどうもそうみたいです。実はこの映画、60年代に東宝で撮られた『国際秘密警察』シリーズの『火薬の樽』と『鍵の鍵』2作をつなぎ合わせて勝手に英語で吹き替えたという珍作中の珍作だそうです。予告編だけ観ると実にシュールで面白そうですが、どうも東宝には無断でいじったみたいで、おそらく日本でソフト化されるのは絶対ムリでまさにカルト中のカルトです。アレンの自伝でも、本作については無視はされてないけど人ごとみたいな書き方でほんの1・2行しか触れてないところは意味深です。

『華麗なる悪』(1969)
ジョン・ヒューストン監督作でも駄作のひとつなのですがパメラ・フランクリンに萌えていた中学生のときにTVで観てハマりました。ああ、もう一度観たいなあ・・・。スコットランド民謡調のテーマ・ソングは私のエバー・グリーンです。


   
 

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761.  インディ・ジョーンズ/最後の聖戦 《ネタバレ》 第一作に立ち返ったかのように、今度は聖杯を巡ってナチス・ドイツと死闘を繰り広げるインディ・ジョーンズ親子です。 プロローグは若きヘンリー・ジョーンズ・ジュニアがインディ・ジョーンズとなるきっかけとなった事件ですけど、この短いシークエンスの中に小ネタが満載、でも本編にはまったく繋がらないお話しでしたね。ここでは今や伝説となったリバー・フェニックスを若きインディに持ってきましたが、それ以上の大物キャスティングはやはりショーン・コネリーのパパ・ジョーンズです。考えてみれば、ショーン・コネリーの数あるフィルモグラフィー中で、本作がもっともコメディチックな演技じゃないかと思いますが、飄々とこなしているのはさすがです。このジョーンズ親子の関係もこの当時のスピルバーグ映画の隠れテーマである“父と息子の葛藤”をコミカライズしており、ラストの大団円にまで持って行けたことでスピルバーグも少しは吹っ切れたような感じがします。またこれまで女性にはモテモテだったインディの、一種の大失恋物語という観方もできるでしょう。 アクションや小ネタの量は三部作中で最大のテンコ盛り状態でしたが、小ネタに関してはドリフのコントかひょうきん族みたいなレベルでしたが、さすがにヒトラーからサインを貰うのはやり過ぎでしょ(笑)。タイトルや撮り方からしてもこれでシリーズ・エンドというのは一目瞭然、20年近くたってから四作目が製作されたのはまさに想定外でした。私の中ではこの三部作は“大人版ハリー・ポッター・シリーズ”みたいな位置づけです。[CS・衛星(字幕)] 7点(2019-08-26 22:55:02)

762.  5つ数えれば君の夢 《ネタバレ》 現在日本映画界でもっとも期待されている映像作家のひとりである山戸結希の、商業映画デビュー作です。アイドルグループ東京女子流の五人をメインにした彼女たちのプロモーション・ビデオと言えなくもないが、各人のキャラやストーリーそして世界観はすべて山戸結希ワールドになっているところはさすがです。私立名門女子高の学園祭で開催されるミスコンを舞台にして、マウントとりに熱中している女子高生たちを独特の感性とセリフ回しで表現しており、この作風には観る者の好き嫌いがはっきりしてしまうかもしれません。監督じたいは女子流の活動についてはまったく予備知識がなく、初対面での各メンバーとの10分程度の面談で劇中のキャラを決めたそうなので実際のメンバーのキャラとはほぼ無関係になっているそうですが、このキャラ付けには山戸結希の感性の鋭さが感じられます。哲学を専攻したそうなので確かにセリフのロジックには理屈っぽいところがあって一昔前のATG映画を見せられるような雰囲気もありますが、ここを現代の10代が演じるというのはある意味新鮮な感じすらしました。ももクロの『幕が上がる』なんかよりはるかにささるものがありました。 アイドル運営から山戸結希にPV監督の依頼が現在殺到しているというのも、納得です。[CS・衛星(邦画)] 7点(2019-08-24 22:38:21)

763.  戦艦大和 《ネタバレ》 まだ大倉貢に乗っ取られる前、東宝より真面目で良心的な映画を製作していた(その為に会社が傾いたあげくにゲテモノ映画を量産することになるとは皮肉)頃の新東宝が製作した大作です。大和と武蔵が戦中は軍機密で国民にはその存在が知られていなかっただけに、この映画で初めて戦艦大和を知ったという人も多くて、興行的にも大ヒットしました。私の父はこの映画を公開当時に劇場で観ていますが、大和の沈没シーンでは館内では嗚咽を上げる人やスクリーンに向かって合掌する人が沢山いたと語っていました。 大和のセットや戦闘シーンの特撮ははっきり言ってショボいです。これは同年に製作された東宝の『太平洋の鷲』と比べると一目瞭然ですが、これは円谷英二の特撮技術のレベルが高すぎると言えるかもしれません。でも大和は終戦時に写真や図面と言った資料が焼却されているので、当時としてはかなり実物に迫ったものだったといえます。これは生き残った能村副長が協力していることが成果につながったといえるでしょう。その特撮の悪イメージが強かったのですが、今回再見してみてドラマ部分が良く撮れていることに気が付きました。原作者の吉田満は東大から海軍に入ったいわゆる学徒将校ですが、劇中の吉村少尉の同期生たちもみな学徒将校という設定なので、自身の生と死の意味をめぐって葛藤するさまはいかにも戦前のインテリという感じでリアルです。また出撃までのシークエンスを観ても極限状況に追い込まれているのに、登場人物たちの言動は総じて落ち着いているというか達観の域に達している。これには僧職でもある松林宗恵が応援監督として参加していることが大きいのかもしれません。 この大和特攻、いわゆる坊ノ岬沖海戦は一応「天一号作戦」と呼ばれていますが、沖縄にたどり着けたら砲台になり乗員は陸戦隊になる(そう言っているのに陸戦用兵器は持って行ってない)などもはや作戦と呼べるような代物ではなかったと感じます。この戦闘で日本は3,700名が戦死したのに、米軍の搭乗員はたった13名が戦死しただけだったというのは、まったく驚くべき事実です。戦史においてもこれほどコスパの良い戦闘は、他にはちょっと見当たらないんじゃないでしょうか。[CS・衛星(邦画)] 7点(2019-07-31 23:06:29)(良:1票)

764.  陸軍中野学校 密命 《ネタバレ》 “日本の007”椎名次郎、その活躍が拝める中野学校シリーズの第四作目。冒頭でいきなり逮捕されて憲兵隊で拷問攻めにあう椎名次郎、これはけっこう意外な展開といえます。まあそれは拘留されている大物政治家と人間関係を作るための作戦だったとはすぐにネタバレするのですが、逮捕して同房に放り込むところまでは草薙中佐が仕組んだことは判りますが、椎名次郎がその作戦のことを全然知らないんだから政治家に信頼されるかどうかは未知数。そんなこと突っ込むのは野暮でしょうけど、市川雷蔵ならそつなく上司の期待に副えるであろう安心感が半端ないです。ストーリー展開はミステリー色が濃厚で、シリーズでは最上の脚本ではないでしょうか。市川雷蔵も“渋さ、ここに極まれり”という域に達しており、もう惚れ惚れです。ドジを踏んだ中野学校後輩の山下洵一郎に遺書を書かせて自決をせまるくだりなど、「まさか」とは観てる方は思うけど雷蔵の得体のしれない芝居にはすっかり翻弄されてしまいます。雷蔵ファンはとにかく観て損はないと思いますよ。[CS・衛星(邦画)] 7点(2019-07-29 23:32:46)

765.  ブリジット・ジョーンズの日記 ダメな私の最後のモテ期 《ネタバレ》 12年ぶりに続編が製作されるとは、『T2 トレインスポッティング』ほどの驚きはないけど、なんでこんなに間が空いたのかというのは素朴な疑問。前半の展開はまるで『ブリジット・ジョーンズのセックス・アンド・ザ・シティ』といった感じで、悪友のシャザーやジュードがすっかり貫禄あるママになっている中でブリジットだけが凄く浮いている感じ。のっけからヒュー・グラントのお葬式と来るからなんか嫌な感じがしましたが、ラスト・カットを観て「あぁ、やっぱりそうか」と予感的中、こりゃ次回作もあると確信しましたがなんでグラントが本作では抜けたのかはまた疑問のタネとなりました。これは『キングスマン』のコリン・ファースのキャラのパロディなのかとも思いましたが、単にスケジュールかギャラの揉め事なのかもしれません。本来はコリン・ファースとブリジットの子供の腹ませ役を争うのはグラントのはずで、ここにパトリック・デンプシーを持ってこざるを得なかったところが、本作の最大の欠点でしょう。そりゃあヒュー・グラントとじゃ格というか存在感が段違いですからねえ。 予定調和な脚本ですが、監督が第一作目のシャロン・マグワイアに戻っていますので、原点回帰といった雰囲気だと感じます。皆さんご指摘の通り、レネー・ゼルウイガーとコリン・ファースのふけ具合は隠しようがないですが、両者ともアンチエイジングというか自分の年齢にあったメイクで役に臨んでいるので好感が持てます。レネーは最近ネットで観るすさまじい画像(失礼)から見ると、これでもかなり盛っていると考えた方が良いですけど。こういう大人向けハリー・ポッターみたいなお話しにケチをつけてもシャレになんないのは判ってますが、さすがにブリジットが出産するまで父親がどちらかを知ろうとしないのは、ちょっと浮世離れしてますね。まあこれを言っちゃったら野暮というものかもしれませんが。[CS・衛星(字幕)] 7点(2019-07-23 23:50:21)

766.  さらば友よ 《ネタバレ》 戦死した戦友の名前がモーツァルト、検診の助手の女子大生がアウステルリッツちゃん、そんなファミリーネームのフランス人なんていますか?という突っ込みは置いといて、ストーリー自体はムリがありそうですが独特の雰囲気とドロンとブロンソン共演というマジックのおかげで印象深い仕上がりとなりました。金庫を破るためにクリスマス休暇三日間の間地下室にこもるというプロットには痺れます。まあこれは『死刑台のエレベーター』の有名なプロットの変形バージョンと言ってしまえば身も蓋もないですけれどね。金庫を開ける7つの数字のうち3個が判っていて残りの組み合わせを手作業で探るという気の遠くなるような話、数学に弱い私ですがたぶん何万・何十万という組み合わせになるんじゃないですか、だれか詳しい人がいたら計算してみてください。どう考えてもそれを一人で三日間のうちに試すって無理なんじゃないかと思いますが、ドロンは地下室にこもる前に7個の数字の並びが持つ意味にうすうす気が付いていたということです。でもブリジッド・フォッセイのあだ名が“ワーテルロー”だと知ったのは事件の後ですから、この推理はちょっと苦しいですね(笑)。まあそんなことはドロンとブロンソンを上半身裸にしておけば、誰も気にしないだろうという製作者の作戦はまあ正解でした(笑)。この舞台となる広告会社(たぶん)の地下室がまたアヴァンギャルドな内装でイイ感じなんです。弾丸を一発だけ抜いた六連発リボルバーなど小道具にかけた伏線なんかも良く考えているなと感じました。 ラストのドロンがブロンソンの煙草に火を点けてやるシーンは有名ですが、そこで終わらず突然ドロンが「イエー!」と叫ぶカット、正直これは観るたびに「なんじゃ?」って感じになります。たぶん映画館で観ていたら椅子からずり落ちたと思いますよ。[ビデオ(字幕)] 7点(2019-07-11 23:45:16)

767.  激動の昭和史 沖縄決戦 《ネタバレ》 岡本喜八と新藤兼人の組み合わせというのはこれ一本だけですが、『日本のいちばん長い日』『肉弾』を撮った監督と『原爆の子』の脚本を書いて監督した人の組み合わせですから、そりゃあ壮絶な映画になりますよ。戦後の日本映画としても太平洋戦争における一つのキャンペーンをじっくり描いた映画はそれまでなかったので(よく考えればその後も存在しません)、貴重です。 これだけ大掛かりなテーマであるにもかかわらず特撮のパートは必要最小限に抑えられており、そこは岡本喜八の好みが優先していたのかもしれません。そのために「敵船多数で海面が見えません!」と日本兵に叫ばせるだけの米軍上陸シーンは“昭和の日本映画のショボいシーン”の一つとして揶揄されたりしていますが、その分実際の火薬を大量に使った陸戦シーンは“爆発の中野”の異名を持つ特技監督・中野昭慶の本領発揮といえます。ストーリーも第三十二軍をメインとした大本営の陸軍高官から名もなき庶民まで網羅した大群像劇になっていて、これを手際よく見せる岡本の手腕が光ります。その中心となる牛島軍司令官・長参謀長・八原高級参謀の三人はそれぞれ絶妙なキャスティングで、その実際の記録に残る言動を新藤は巧みに脚本化しているのはさすがです。中でも長参謀長を演じる丹波哲郎が「お母さん、痛いよお」と寝言を言ってうなされるシーンがありますが、これは実際に司令部関係者の言に基づいているそうです。これは幼少期に母親に折檻された夢だったそうですが、若いころにクーデター計画に参画したり南京戦で中国兵捕虜を見て「さっさと殺っちまえ」と放言したりしていた人とは思えない意外な一面です。 休憩をはさんでの後半はもう涙を流さずには観ていられない辛い映像の連続です。そしてラストまでの約三十分はもうスプラッター映画の様相になってきます。この映画では血の色が、よく見受けられるオレンジっぽいペンキのような血ではなくて、リアルな赤にこだわっているところが凄惨さを増す効果を上げています。私はこの映画で初めていわゆる「血の海」というものを観て、子供心に強烈な衝撃を受けました。 前半の空襲で孤児になった女の子が戦場を一人でさまよい歩き、死体が散乱する海岸に無傷でたどり着くラストには新藤兼人脚本の真骨頂があったと思います。しかしこの後二か月も経たずに終戦とは、なんと無情なことでしょうか。[映画館(邦画)] 7点(2019-06-26 00:10:43)(良:1票)

768.  恋とニュースのつくり方 《ネタバレ》 原題が一緒なのでてっきり30年代にキャサリン・ヘップバーンが初めてオスカーを獲った『勝利の朝』のリメイクかと思ったら、全然関係ないお話しでした。“MorningGlory”というのは朝顔のことだそうで、早朝の情報番組が舞台であるところに懸けているわけです。ヘップバーン版でも朝顔の意味で使われていて、これをストレートに直訳しただけの『勝利の朝』は洋画史上に残る珍訳・誤訳なんだそうです。 大して期待しないで観たら主要キャラ三人が思いのほか良い味を出していて、なんか得した気分です。“三種類の表情だけで演技して高額ギャラを稼ぐ男”ハリソン・フォードですが、本作では三種類どころか全編を仏頂面の不機嫌顔だけで押し通してしまいましたが、これが意外と良いんです。大物ジャーナリストがキャスターをやるというのはあまり実例がないのですが(そもそも日本には高級ジャーナリストという人種が存在しない)、無愛想つながりで強いて言えば木村太郎ってところですかね。となると相方のダイアン・キートンは安藤優子となるのでしょうが、ジャーナリズムとは縁遠いTVタレント役を嬉々として演じています。彼女は知的コメディエンヌとしての並々ならぬ才能の持ち主なので、このキャラはまさに適役です。レイチェル・マクアダムスもフォードやジェフ・ゴールドブラムとの掛け合いで芸達者なところを見せてくれますが、ハリウッドには彼女と同世代の女優がわんさかいますから、その中で目立つのはなかなか大変なのが現状です。 ラブコメの波動を感じるというよりも軽いノリのサクセス・ストーリーというところでしょうが、センスが良いので安心して観ることができました。[CS・衛星(字幕)] 7点(2019-06-09 20:52:57)(良:1票)

769.  戦場のピアニスト 《ネタバレ》 ユダヤ人移民の子孫であるスピルバーグは「ユダヤ系の僕がホロコーストを撮らないで誰が撮る?」と宣言して『シンドラーのリスト』を製作しました。その約10年後に生粋のアメリカ人でベビーブーマーのスピルバーグと違って実際にゲットーで生活したポランスキーが、ヨーロッパ人的かつ彼独特の粘っこさを持った視点でホロコーストの一面を描いたということになります。 本作にはある意味で個人のドラマというものは存在しないとも言えます。シュピルマンとその家族そして周囲のポーランド人にしろ、ヒトラーという独裁者が起こした歴史の渦に飲み込まれて、ある者は絶滅収容所である者はワルシャワの市街戦で死に、またある者はシュピルマンの様に生き延びることができたという、ポランスキーの冷徹な視線を感じてしまうのです。43年のワルシャワ・ゲットーの蜂起、44年のポーランド国内軍の蜂起がともに描かれていますが、それはビルの上階からシュピルマンが見た視点だけで描かれていて決してカメラが戦場に寄って行かないところも、まるで神の視点みたいで意味深です。 そして『シンドラーのリスト』との最大の相違は、両作とも多少の良心を持ったドイツ人がユダヤ人を助けるけど、本作のドイツ人将校は報われることもなく捕虜収容所で死に、そのことに対して少しも同情していないようなポランスキーの視線を感じてしまうことです。『シンドラーのリスト』のようなカタルシスとあざとい涙腺崩壊効果がない点がまた大きな違いでもあり、彼の過酷な人生体験がもたらした結果なのかもしれないけど、ポランスキーは実はヒューマニズムを信じていないのかもしれません。この映画ではシュピルマンの行動や周囲の出来事に関してちょっとブラックなユーモアを感じさせるシーンもありますが、そこに監督の底意地の悪さを感じてしまうのは私だけでしょうか?[CS・衛星(字幕)] 7点(2019-06-01 23:26:25)

770.  夕陽の群盗 《ネタバレ》 名匠ロバート・ベントンの監督デビューが本作ですが、シナリオが良く練られている、やはりこの人は名脚本家です。 北部の若者バリー・ブラウンが徴兵逃れで怪しげな脱走兵ジェフ・ブリッジスとその仲間たちと合流して西部を目指すというのがストーリーで、この若造集団の描き方が実にいい味出しています。育ちの良いブラウンと素性はよくわからないけどそこそこに悪知恵が働くブリッジスの対比が絶妙なんです。ブリッジスはいちおうグループのリーダーだけど「群盗」というほどの悪事を働くわけではなく(というか悪事を実行しようとすると不手際で失敗ばかり)、原題の“BadCompany”というのがぴったりの単なる不良集団というわけです。二人の関係も心を許しあったように見えてもブリッジスに裏切られてばっかり、両者のいわゆるバディ感が淡々としながらも良い雰囲気なんです。ブラウンもそんなブリッジスとぶつかり合ううちに、目覚めたというか感化されて、生き残った二人で銀行強盗を決行するところでストップモーション、なかなか良い幕の閉じ方でした。風景も雄大な草原地帯が延々と続き、ロバート・ベントンもテレンス・マリックに負けず劣らずの草フェチなんだなと思いました。 良く考えると救いのないお話しかもしれませんが、青春西部劇の佳作だと思います。[CS・衛星(字幕)] 7点(2019-05-31 21:51:11)(良:1票)

771.  オデッセイ(2015) 《ネタバレ》 リドリー・スコットにしては珍しいハート・ウォーミングな作品でした。火星にひとり取り残された宇宙飛行士のサバイバル、いわば火星版ロビンソン・クルーソー漂流記という感じですが、そこにマット・デイモンを持ってきたのは大正解でしょう。オーシャンズ・シリーズ以降、彼はコメディっぽい演技に開眼したように感じますが(もっとも本作がコメディ・ジャンルにカテゴライズするのはちょっとどうかと思いますが)、肩の力が抜けた諧謔味に満ちたキャラがだんだん当たり役になってきた感があります。たしかに同種の他作品と比べれば緊迫感が不足しているという指摘はもっともですけど、そこは脚本が意図したところなのでわたくしは良しといたします。彼はいろいろなアイデアを駆使してサバイバルに成功するわけですが、なんか「マット・デイモンならできそう、いや、できて当たり前」という妙な安心感があります。まあそれはどうしてもジェイソン・ボーンのイメージが尾を引いているからで、序盤でケガして脱いだ宇宙服から現れたムキムキ・ボディを見たりすると、ジェイソン・ボーンが宇宙飛行士になったように感じてしまったのは私だけでしょうか。 科学的考証はもちろんしっかりしてるんでしょうけど、割れたヘルメットをガムテープ(みたいなもの)で直したり、脱出艇の先端を防水シート(みたいなもの)で被うだけで宇宙空間に飛び出して行ったり、妙にアナログというか「まじか」と絶句する手法が使われるところが面白い。ラストにジェシカ・チャスティンとランデブーに成功させる手段もかなりのサプライズです。そこら辺がこの映画の独特のテイストになっているんですね。 本作でもまたまた中国がいいところをかっさらっていって、「またかよ」と苦々しく感じてしまいましたが、冷静に考えると中国はじっさいに月の裏側に探査船を送り込みましたし、宇宙開発競争の現場ではこれがリアルなのかもしれません。宇宙探査でアメリカと張り合えるのは、もはやロシアではなく中国だということなんでしょうかね。[CS・衛星(字幕)] 7点(2019-05-26 21:26:06)

772.  エグザム 《ネタバレ》 ソリッド・シチュエーソンもの映画としてはその低予算とシンプルなプロットはかなりハイレベルでございました。題材を採用試験にしたことはアイデアとしては抜群だと思いますが、現実に企業の人員採用に携わったことのある人なら、ちょっと違和感を覚えることもあるでしょう。実際に日本の企業でも、さすがに「白紙の問題用紙」なんて極端なケースはなかったですけど、それに近い意表を突く課題で入社試験を行った会社を知っています。でもどちらかというと日本の場合は企業より学生の方が突飛なことをしたという話が多く、面接でマヨネーズを一本丸ごと飲み干すという芸(?)を披露してソニーに採用されたという都市伝説まがいの話がバブル期にはありましたよね。 まあそういう実体験もあり、この映画での試験問題の出し方とその答えというかオチに関してはさほどサプライズはなかったですね。そもそも途中で退室させられるフランス語を話す試験番号1番が怪しすぎ、絶対に後半でまた絡んでくるということは、誰でも読めるでしょう。候補者のうち六人が警戒しながらも協力というか共同作業してゆくという展開は。この手の映画のお約束ですけど映画自体の出来・不出来を左右する大事なところです。その点では本作は緊迫感を持続させる巧みな脚本です。だって他のソリッド・シチュエーソン映画と違って命がかかっているわけではなく、失格したら何事もなく退室できるというかなり緩い状況でこれだけ緊迫感を出せたんだから、大したものです。そしてラストがなんか明るく希望を感じさせてくれるのが同ジャンルの映画とは決定的に違うところでしょう。 観て損はないと私は思います。[CS・衛星(字幕)] 7点(2019-05-16 23:37:27)(良:1票)

773.  エルマー・ガントリー/魅せられた男 《ネタバレ》 テーマ自体が大多数の日本人には縁遠いというか嫌悪感を催すことなので、評価されにくいでしょう。この映画で描かれているのはプロテスタント信仰であり、同じアメリカ人でもカトリック信者はこういう狂信的な信仰を嫌うところは日本人以上かもしれません。伝道師のジーン・シモンズの言動には“危ない人”としか思えない部分もあり、とてもじゃないけど感情移入しがたいです。その半面、バート・ランカスターが演じるエルマー・ガントリーは過剰なほど人間味があふれるキャラです。本作でのランカスターの驚異の弁舌力はもう圧巻です。彼がその能力を活かして宗教界の大立者になってゆくストーリーだと思っていたら、実はそう単純なお話しではなかったというのが、この映画のひねったところかもしれません。脇で新聞記者らしからぬ冷静な視点でシモンズとランカスターを追ってゆくアーサー・ケネディもなかなか良い味を出していました。シモンズが奇跡らしきものを起こした途端に失火で教会が焼け落ちるラストの展開も、「お前、調子に乗るんじゃないぞ!」という神様の怒りが爆発したみたいに感じませんかね?そう考えると信仰に対するけっこうシニカルなニュアンスも垣間見られる気もしますし、もっと評価されても良いんじゃないかと思います。[ビデオ(字幕)] 7点(2019-05-08 23:38:12)

774.  黒い家(1999) 《ネタバレ》 原作未読なのでどこまで脚色されているのかはわかりませんが、噂の大竹しのぶの壊れっぷりにはほんとにゾッとさせられました。平成ももうすぐ終わりますが、その31年間の日本映画の中で最凶の怪演であることは間違いないでしょう。例の「乳吸え~」は誰が見ても別人なのはバレバレですけど、中盤の病院のシーンあたりから大竹しのぶが突然巨乳になっているのが笑えます。ラストの「乳吸え~」に備えての小細工だったんでしょうけど、若いころは平気で脱いでたくせにと怒りたくもなります。ぶっちゃけ歳とってボディラインが崩れてるので、熟女女優の方が脱ぎたがらないのかな。前半は大竹しのぶがあまり登場しないので余計になのかもしれませんが、西村雅彦もかなり気持ち悪かったですよね。 監督が森田芳光なので相変わらず奇をてらったショットの多用は平常運転です。でも若いころの才気が無くなってきてるのは顕著に感じられます、なんせ次回作が『模倣犯』ですからねえ。一番イライラさせられたのは内野聖陽のビビりキャラぶりで、あんなにガタイのいいイケメンがこの役とは、どう考えてもミスキャストだったんじゃないでしょうか。[CS・衛星(邦画)] 7点(2019-04-29 22:49:16)

775.  ロリ・マドンナ戦争 《ネタバレ》 アパラチア山脈のふもとで暮らすフェザー家とガッシャル家はお隣同士(山の中だから土地は隣接していても家自体は数キロ離れている)、農業や牧畜で生計をたてるいわゆるヒルビリーと呼ばれる人たちです。フェザー家の家長はロッド・スタイガーで家族構成は夫婦と五人の息子、同じくガッシャル家はロバート・ライアン夫婦と四人の息子と娘が一人。牧草地の権利をめぐってとくに親父同士は非常に仲が悪いが、子供たちはフェザー家の次男とガッシャル家の娘がつきあってたりしている。ここでガッシャル家がつまらない悪戯をフェザー家に仕掛けます。フェザーの兄弟がガッシャルの郵便を盗んでいることを逆手にとってロリ・マドンナという架空の娘が長男に出した偽ラブレターを盗ませます。この悪戯がたまたまバスの乗り換えのために当地に降りた無関係の娘を巻き込み、事態は血で血を洗うとんでもない事態になってしまいます。 プロット自体は『ロミオとジュリエット』を思わせるところもありますが、どちらかというと国家間の紛争が発生するシステムを暗喩していると考えた方が正解でしょう。公開当時は「この映画はベトナム戦争をあてこすっている」と評されたそうですが、それも正当な観方でしょう。経済力としては廃車寸前のピックアップ・トラックが象徴するようにフェザー家の方が劣勢で(ガッシャル家は時代にあったステーションワゴン)、これにはロッド・スタイガーの個性も原因の一つです。彼はとても偏屈で暴力的なキャラで、ここまでひどくなってしまったわけが物語の後半で明らかになりますが、ここは名優ロッド・スタイガーの演技を堪能してください。フェザー兄弟にはジェフ・ブリッジスやエド・ローター、そしてランディ・クエイドといった有名俳優(今となってはですが)がいますが、やはりジェフ・ブリッジスとエド・ローターは光ってますね。ガッシャル兄妹にはゲイリー・ビューシィがいますが、あのゲイリー・ビューシィが両家の和平交渉役を買って出る登場人物の中でもっとも平和的・理性的なキャラを演じているというのが面白いです。けっきょく男手の差がものを言ったのか、母親まで殺され兄弟全滅で娘は家を飛び出して去るというガッシャル家の敗北という感じですが、フェザー家も父親が長男を殺してついには廃人のようになってしまい、これはもう勝った負けたの問題じゃ済まないところまでエスカレートした空しい、いかにもアメリカン・ニューシネマの時代らしい幕の閉じ方でした。 実は原作小説は実話をもとにしていて、ハットフィールド家vsマッコイ家の10年にわたる抗争としてアメリカ史では有名なんだそうです。2012年にはケヴィン・コスナー主演で“Hatfields & McCoys”としてTVミニシリーズ化されています。[CS・衛星(字幕)] 7点(2019-03-31 22:41:05)

776.  タイム・マシン/80万年後の世界へ 《ネタバレ》 偉大なるH・G・ウェルズの有名な『タイム・マシン』の初めての映画化ですが、実はこの小説は本作の他にはガイ・ピアースが主演した2002年版の二作しかないというのはちょっとしたサプライズです。 ストーリーテリング自体は原作とほぼ一緒ですが、原作が発表されたのは1895年ですから近未来のエピソードについては当然ウェルズが知る由もないことが追加されています。1966年に核戦争が起きていったん文明が滅びることになりますが、もちろんこんなことはウェルズの原作にはありません。原作では社会階級制度の極端化によって知識階級のイーロイと労働者階級のモーロックに人類が分化したとあり、イーロイは見た目も現生人類とはちょっと違い言語も当然英語ではない。見せ場優先の映画化ですからそこら辺は改変されて当然ですけど、さすがにイーロイが英語を話して「政府」とか「法律」なんて言葉を認識しているというところは違和感が半端ないです。タイムトラベルを科学者たちが議論する冒頭のシーンで「四次元は時間だ」という理論でタイムトラベルを説明してますが、まあこれはアインシュタインの相対性理論が発表する前の小説ですから致し方ありません。でも「過去は変えることができるかもしれないが、未来はもはや変更することはできない」というセリフは、単純ですが自分には目から鱗でした。もちろん特撮はオスカー受賞したといっても時代掛かった代物ですけど、センス・オブ・ワンダーを今の眼で観ても刺激してくれるのはさすがです。 話はそれますが、「1900年が20世紀の最初の年」というセリフがありましたが、これって字幕の誤りでしょうか?「新しい千年紀の始まりの年」なら判りますけど…[CS・衛星(字幕)] 7点(2019-03-02 22:18:05)

777.  黒い十人の女 《ネタバレ》 船越英二が演じる風松吉のキャラは、実はいろんな女優たちと浮名を流していた市川崑がモデルなんじゃないかな。それを奥さんの和田夏十が脚色しているところが、ある意味この映画で一番恐ろしいところかもしれません。とはいえ市川崑の死後雑誌に載った有馬稲子の赤裸々な手記などからすると、市川崑自身は風松吉みたいな優しさを武器にするタイプのプレイボーイではなかったようです。 物語自体はかなりブラックでちょっとシュール、冒頭から普通に演技している宮城まり子が実は幽霊だなんてこの時代の邦画にしてはかなり洒落た演出です。実質的にストーリーに絡むのは五人の女というわけですが、どの女優も芸達者なのが素晴らしい。とくに山本富士子と岸恵子の、決して荒々しいセリフを使っていないけどバチバチ火花が散るような演技対決は見ものです。船越英二のいかにも業界人らしい無責任な世渡りは秀逸、「彼は誰にでも優しくするけど、実は誰にも優しくないのよ」というセリフもありましたが、これはこの男の本質を鋭く突いています。ただ忙しくしているだけで決して仕事に情熱があるようには見えない船越英二が、会社を退職させられて岸恵子に軟禁されると急に「男の対面がつぶされた」と泣くわけでここにはなんか「お前キャラ変したのか」と突っ込みたくなりますが、実はここに高度成長期のサラリーマンの心理が良く出ています。実際は大して重要な仕事をしていないのに、脚光を浴びる業界にいるとそのこと自体に自分のアイデンティティを見出す、現代のサラリーマンにもあてはまるんじゃないでしょうか。[CS・衛星(邦画)] 7点(2019-02-28 00:11:28)

778.  バタフライ・エフェクト/劇場公開版 《ネタバレ》 古より “アイデア一発勝負”映画は数多く存在してますが、本作はその中でもかなり出来が良い部類でしょう。日記帳がタイムマシンの機能を持っているというのも、低予算をカヴァーする安上がりなアイデアだけど悪くないです。この映画でエヴァンはタイムリープする能力を持っているわけですが、やはり一番引っかかるのはその能力を発揮するために必要な日記帳(それも最初の人生で書き綴った13年分)が一緒にくっついてくる(としか思えない)ところでしょう。これは脚本家も判っているけどどうしようもなかったように見受けられ、ラストでは苦し紛れかホーム・ムーヴィーを持ち出してくるところなんか苦心の跡が感じられます。このターンのタイムリープでは「日記帳なんて存在しない、それは君の妄想だ」という医者の言葉まであり(かつてのレニーの様にケイリーを爆死させてからずっと病院で拘束されていれば日記なんて書けるはずないですけど)、何とか辻褄を合わせた感があります。 でも、最初に観た時にはそんな矛盾には頓着せず、素直に感動したのはたしかでした。たしかにどのタイムリープでも誰かが命を亡くしたり不幸のどん底に落ちたりで、凡人の私なんか自分がいちばん順調なキャリアを積んでいる最初の人生をそのまま続けていくのを選択します。そういう普通の結論を選ばず、ケイリーが自分に恋心を抱いたのが実は全員の不幸の大本だったと気づいてしまうラストは、この映画の宣伝コピーじゃないけど最高に切ないところです。映画のストーリーには、観客の心をつかむ騙しのテクニックみたいなものがやはり必要なんです。[CS・衛星(字幕)] 7点(2019-02-24 23:16:16)

779.  ファンシイダンス 《ネタバレ》 先日、親の法要で故郷の菩提寺へ行きました。そのお寺は我が家には不釣り合いな開山1000年を超える古刹で、住職はローカルTVニュースには良く登場する名士。長男次男ともその寺で僧職を務めていますが、その日は次男さんとお話ししました。その明るいイケメン坊主は、なんと地元では有名なミッション系の中・高・大で学生生活を過ごしたとのこと、思わず心の中で「ファンシィダンス!」と叫んでしまいました。 その5年前にピンク映画を一本監督した経験しかなかった周防正行の実質的な商業映画監督デビュー作、初期の周防映画のパターンがこの一本で固まったと言えるでしょう。私は本作に続いた『シコふんじゃった。』『Shall we ダンス?』を初期周防三部作と捉えていますが、もっとも肩の力を抜いたような撮り方の本作が実は一番の好みです。これが映画初主演である本木雅弘の棒読み調のセリフ回しはもちろん演出のうちですが、やはり棒読みの鈴木保奈美(こっちは天然の大根演技)とシンクロして独特のオフビート感が出ています。竹中直人も後年のウザい演技じゃなく、ほんとこれぐらいテンションで見せる演技は彼が芸達者であることを再認識させてくれます。そして驚くのは同僚雲水の彦摩呂、こんなイイ男が30年も経たずして巨漢の食レポ・タレントに変貌してしまうとは、誰が想像できたでしょうか… ともかくとして、本作は周防正行映画のエッセンスが詰まった秀作だと思います。[CS・衛星(邦画)] 7点(2019-02-15 23:29:32)

780.  ヘル・レイザー 《ネタバレ》 魔道士はキョンシーの一味だと長いこと勘違いしていた自分です。クライヴ・バーカーの世界観は何となく判りますが、魔道士は悪魔なのか妖怪なのかイマイチ判りづらいのが難点で、要は地獄の番人でSMプレイのプロデューサーという感じみたいです。ビジュアル的にはサブカルにも多大な影響を及ぼした魔道士ですけど、本編ではほんと単なるわき役に過ぎなかったというのはある意味で衝撃。主役はあくまでフランク・コットンで、そこにジュリアとのドロドロな愛欲劇が絡むというのがメインストーリーなわけです。でも番人のくせにフランクが蘇って地獄を逃げ出したことに気づかないし、ヒロインと「嘘ついたら針千本の~ます」みたいなレベルの取り引きを交わすとか、魔道士ピンヘッドのわきの甘さはなんか微笑ましくなるぐらいです。まだCGがはびこる前の時代ですから、合成にしてもSFXにしても低予算が透けて見えるような手作り感が濃厚、蛆虫やゴキブリは生きた実物を使っていて、クライヴ・バーカーらしくヘンなところに拘りを見せてくれます。でも俳優さんたちには、あの皮膚なしベタベタ状態のフランクと絡んで接触しなけりゃいけなかった事の方が苦労だったでしょう。それでもこの妙な安っぽさというかB級感がまた独特のテイストを生んでいて好きです。ヒロインのパパがアンディ・ロビンソン(『ダーティハリー』のあの殺人鬼スコルピオで有名なお方)で、ついに彼も善人役を射止めたかと思いきや、フランクに殺されて皮をはがれ、その皮を被ったフランクが残忍の限りを尽くすのでけっきょくスコルピオと大して変わらないことになってしまいました(笑)。 余談ですが最後にアンディ・ロビンソンが魔道士に仕留められるときに“Jesus Wept!”という捨て台詞を吐くのですが、字幕では“イエスが泣いた”となっていました。“Jesus Wept!”は新約聖書で最短のフレーズでアンディ・ロビンソンがアドリブで発したセリフなんだそうですが、「くそっ!」とか「畜生!」とかが近いニュアンスのスラングで辞書にも用例が載っています。プロの翻訳者ならそれぐらい見落とさないで欲しいものです(ひょっとして翻訳者は戸田奈津子だったのかな?)。[CS・衛星(字幕)] 7点(2019-02-09 23:37:37)

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