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タイトル名 |
ラスト、コーション |
レビュワー |
onomichiさん |
点数 |
10点 |
投稿日時 |
2008-11-23 01:01:07 |
変更日時 |
2008-11-23 01:01:07 |
レビュー内容 |
恋愛映画であり、その本質がエロティシズムであることを示した作品である。
その決定的なシーンとは、女スパイのワン(タン・ウェイ)が標的であるイー(トニー・レオン)からダイヤモンドの指輪をプレゼントされた際に、恍惚として思わず「逃げて・・・」と呟いてしまった瞬間である。 この映画の全てのシーンはこの一言のプロローグであり、エピローグとしてあったとも思える。それ程に深く、にも関わらず、なんという衝動的な一言だったろうか。 エロティシズムとは、非連続な存在であり、関係性である人間にとっての連続性への郷愁であり、衝動である。オルガスムこそが(小さな)死という連続性への瞬間的な接近であり、生という可能性の実感であった。それは刹那であるが故に深く、そして衝動的なのだ。
互いの孤独を紡ぐようなセックスシーンと共に、最後の指輪のシーンこそは、存在の孤独を癒す連続性の光、この映画のクライマックスであり、オルガスムの瞬間だったのではないか。
ワンの一言によって、脱兎のごとく店を飛び出したイー。 青酸カリを、そして指輪を見つめながら、最後の可能性を握り締めるワン。
彼女はその瞬間を反芻し、生の充実を得る。 彼女はエロティシズムという自我を超えた外部の力に捉えられ、引き裂かれた。それは結局のところ侵犯の報いとして生の終焉に行き着かざるを得ないのか。恋愛という最上級の幻想を、その美しい瞬間を見事に捉えた傑作。 |
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