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エリ・エリ・レマ・サバクタニ - 鉄腕麗人さんのレビュー
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Web www.jtnews.jp

タイトル名 エリ・エリ・レマ・サバクタニ
レビュワー 鉄腕麗人さん
点数 5点
投稿日時 2006-09-13 00:06:36
変更日時 2009-06-24 15:32:34
レビュー内容
久しぶりに、こういう「言葉」で説明するべきではない映画を観たような気がする。数年前までは、こういう映画ばかり観ていたものだが……。

“人を自殺に追い込む”奇病の世界的蔓延。
人類に残された道は、もはや「滅亡」しかない、という無力感から始まるこの物語。
唯一の“救済”の可能性として、僻地にて隠遁生活を送る二人のミュージシャンが放つ「音楽」を求めて、少女がやってくる。

はっきり言って、そのストーリーには、リアリティもなければ説得力もない。非常に脆弱な物語である。
しかし、この映画の「目的」は、ストーリーを繰り広げるというところにない。
“救い”として取りざたされる「音楽」そのものが、この映画の主題であり、主人公である。

その音楽でさえ、造詣のない者にとっては始めのうちは、ただの「騒音」でしかない。
ただただ“騒がしい”だけの爆音に、思わず耳を塞ぎたくなった。
確実に中だるみも、する。

が、非常に不思議なのだが、映画が展開してゆくにつれ、次第に「騒音」が何かしらの意思を持った「音」へと変わっていき、「音楽」となって脳内に染み渡ってくる。
そして、「音楽」はついに神々しいまでの「振動」となって精神を包み込んでくる。ような気がした。

元来得意なタイプの映画ではなかったが、その奇異な新体感と、絶対的に特異な映画世界の中に、ごく自然に息づいてみせた浅野忠信と宮崎あおいの存在感は、価値の高いものだと思う。

人が「生きる」ということに本来意味などない。生きたいから生きる。ただそれだけのことだ。
ならば同様に、「死ぬ」ということにおいても、意味などないのだろう。
すなわち、もしそれらを促したり、抑止したりする「方法」があるとするならば、そこに「理屈」などある筈もない。と、いうこと。
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