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タイトル名 |
シングルマン |
レビュワー |
鉄腕麗人さん |
点数 |
8点 |
投稿日時 |
2011-04-05 14:17:29 |
変更日時 |
2011-04-05 14:17:29 |
レビュー内容 |
この映画は、一人の男が、「死」に向かう“一日”という道中を描いた“ロード・ムービー”だと思う。
孤独に苛まれた男が、何処か遠くに行くわけではない。普段と変わらない一日をある「決意」を込めて生きるだけの話である。 だけれど、そこには起伏に富んだ出来事と出会いが繰り返される。
“孤独感”に埋め尽くされて色彩の無かった世界が、ふとしたことで色味を帯びていく。 それは、世界中のすべての人間の何気ない日常の中に、「生きる」ということの意味と価値が溢れているということを物語っている。
それと同時に、世界が色を帯びていく過程には、「死」を決意した男自身が、「生きたい」という本能に気付いていく様を感じた。それは、「明快」という言葉を隠れ蓑にして現実から目を伏せてきた男が、自分が在る世界を直視したということだったと思う。
結果的に、一日の最後に主人公の男が得た結末は、目覚めたときに決意したままのものだったかもしれない。 しかし、そこには明確な違いがある。
“死ぬために生きる”のか“死ぬまで生きる”のか。
同じように聞こえる言葉の価値の違いを強く感じる映画だった。
世界的デザイナーのトム・フォードという人が初監督をした映画だけに、作品全体に強い「美意識」が溢れている。 そういうタイプの映画は多いけれど、この映画の美意識は決してビジュアルの表面的な部分だけではなく、人間のインサイドに至るまで徹底的に反映されている。
素晴らしい才能だと思う。 |
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