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タイトル名 |
ヴァンパイア(2011) |
レビュワー |
鉄腕麗人さん |
点数 |
8点 |
投稿日時 |
2013-06-30 02:04:14 |
変更日時 |
2013-06-30 11:30:04 |
レビュー内容 |
「これはあなたの夢?」
“ヴァンパイア”の、おそらくは最初の“献身者”となった女の最期の一言。
この映画の主人公である“ヴァンパイア”の「彼」にとって、“血液を啜る”という行為の意味は、果たして何だったのだろうか。 心の隙間を埋めるための一種の趣向だったのか、行き場を失った孤独を癒す“温もり”を感じるための唯一の手段だったのか。
結果として、繊細で優しい殺人鬼と化した主人公の得た結末は、幸福だったのか、不幸だったのか。
ラスト、己の業が明るみに曝された主人公は、思わず逃避に駆られる。 どこまでも逃げようとするけれど、その足は次第に宙空に浮き、無情にから回る。
それはおそらく、彼の深淵なる“夢”の終わりの時だったのだと思う。
孤独の淵に立たされた主人公が、妄信的に辿り着いた“ヴァンパイア”という生き方。 物語の吸血鬼のように、己の存在が「永遠」でないことは、他の誰よりも本人がよく知っていたことだろう。
「血は命そのものだ」と、“ヴァンパイア”は語る。 「血」を追い求めた彼の姿は、「生」を渇望する弱々しくも必死な、人間という生物そのものの本質的な在り方に見えた。
「花とアリス」以来8年ぶりとなる岩井俊二監督の長編映画。勿論、映画館で鑑賞したかったけれど、地方都市住まいの悲しさにより叶わず……。 とうにレンタル開始はされていたけれど、万全のタイミングを探るべく、日々が過ぎ去った。結局、劇場公開から10ヶ月近く経過した今ようやく鑑賞。
淡々と、空気を呑み込むような、あまりに美しい映像世界。 独創的な世界観は、人によっては独善的で独りよがりに映るのかもしれない。
でも、僕にとってそれは、十代後半で初めて触れ、心の底から愛した映画世界そのものだった。 |
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