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タイトル名 |
グランド・マスター |
レビュワー |
鉄腕麗人さん |
点数 |
7点 |
投稿日時 |
2013-06-16 00:57:03 |
変更日時 |
2013-06-16 01:05:48 |
レビュー内容 |
久しぶりにウォン・カーウァイの映画を観て、自分がこの人の映画に惚れていたことを思い出す。 6年前に前作「マイ・ブルーベリー・ナイツ」を観たときも、同じような思いをしたような気がする。 近年決して多作ではない映画監督なので、映画を観始めてしばらくして、描き出される映画世界の特異な空気感に「おや?」となり、「ああそうか、これがウォン・カーウァイだ」と記憶が呼び起こされる。
誰もが楽しめ、受け入れられる類いの作風ではないことは明らか。 時に酷く散文的で、ビジュアル的な美しさが強調される世界観を嫌う人は多いと思う。 この映画にしても、ストーリー的にはあまりにまとまりがなく、「結局何の話なんだ?」と主題がぼやけて見えることは否めない。 詰まるところ、激動の時代における、伝説の武術家イップ・マン(葉問)をはじめとするカンフーマスターたちのそれぞれの人生模様を描いた作品なわけだが、「伝記映画」と謳っている故か、超人的なカンフーマスターたちがドラマティックに絡んでいくように見えて、実は直接的な絡みは殆どない。 アンフェアな予告編に騙されて、“カンフー映画”としてのエンターテイメント性を期待してしまうと、きっと肩透かしを食らう。
ただし、十数年前に「恋する惑星」を観て以来、この映画監督の作品に惚れてしまっている者としては、映画全体からほとばしるその「美意識」だけで、諸々の否定的要素は霧散してしまう。
ハット姿のトニー・レオンが土砂降りを切り裂くように敵を蹴散らす。薄い化粧(けわい)が秀麗なチャン・ツィイーが降雪の中で強く美しく舞う。
ビジュアル的な「美意識」だけが先行してしまっている映画という評は間違ってはいまい。しかし、その「美意識」だけで充分だとも言える。 ウォン・カーウァイがカンフー映画を撮るというのはこういうことなのだ。と、理解してもらうしかない。
兎にも角にも、映画自体の完成度はともかく、大好きな監督の最新作を久しぶりに観られたことの満足度は高い。 ああ、「恋する惑星」が無性に観たくなった。 |
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