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タイトル名 |
セッション |
レビュワー |
鉄腕麗人さん |
点数 |
8点 |
投稿日時 |
2015-11-18 19:16:51 |
変更日時 |
2015-11-19 23:37:24 |
レビュー内容 |
汗、涙、血、身体中からありとあらゆる水分を撒き散らして、音を奏でる…いや音を殴りつける。 それは音楽学校を舞台にした“スポ根”だなんて生やさしいものではなく、狂気と狂気のせめぎ合いだった。 常識的な価値観のその先に突っ走っていく二つの狂気。 ついに“一線”を越えてしまった愛する息子を、舞台裏の扉の隙間から遠く眺める父親の眼差しが哀しい。
“偉大”なドラマーになることのみに固執する主人公は、自らを取り巻くあらゆるものを妄信的に確信的に排除していく。 友人を排除し、恋人を排除し、ついには誰よりも自分を愛してくれている父親をも排除する。 不意に訪れた「事故」は、彼にとっては最後の“救い”だったはず。 けれど、彼はその救済までも排除して、自分の中に巣食う狂気を唯一認めてくれる存在の元へと舞い戻る。 音楽に対する理想を共有する二人だが、彼らは最後まで憎み合っている。 二つの狂気は、憎しみ合ったまま、ついに求める音楽を奏でる。 憎悪の中で恍惚となる二人。 その異様な契りは、まさに、悪魔との契約に相違ない。
彼らはきっとこの先も「幸福」なんてものとは無縁の人生を送ることだろう。 常に他者を憎み、自身に怒り続ける日々を送り、精神をすり減らし果てていくことだろう。 ただし、それすらも彼らが望んだことであり、もはや他人の価値観が入り込める隙間など微塵もない。
ほとばしる狂気を目の当たりにして、真っ当な価値観を持つ凡人たちは、ただただ呆然と見守るしかないのだと思う。 |
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