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タイトル名 |
この世界の片隅に(2016) |
レビュワー |
鉄腕麗人さん |
点数 |
10点 |
投稿日時 |
2017-01-22 21:13:56 |
変更日時 |
2017-11-06 22:56:03 |
レビュー内容 |
正月に妻の祖父母の家に行った際に、義祖母から大戦時の空襲の話を聞いた。 居住していた郊外から、市街地が空襲を受ける様を遠目で見たという。 変な言い方だけれど、と前置きをした上で、当時子どもだった義祖母は、爆撃される光景が花火のように「綺麗」に見えたと言った。
とても印象的だったその正月の義祖母の話が、この映画のシーンと重なった。 主人公のすずは、爆撃を受けるその只中に立ち、眼前に広がる“非現実的な現実”の光景に対して、「ここに絵の具があれば、絵が描けるのに」と思う。 勿論、それが夢想であり、現実逃避であることを本人は分かっている。 でも、そうでも思わなければ、この目の前の現実を踏まえて次の瞬間を生きていない。それがこの「時代」を生きた人々が、共通して持った“生きる術”だったのではないか。 そして、義祖母の「綺麗」という感情もまさにそれだったのだろうと思う。
初めてこの映画を観てから2ヶ月近くが経とうとしている。 その間、何度も感想をまとめようとした。けれど、映画を振り返る度に、主題歌と主人公の声が言霊のように頭の中を巡り、繰り返し繰り返し感情を揺さぶっている。今もなお。
悲しくて、悲しくて、とてもやりきれない。
でも、涙が溢れる理由は、決して悲しいからだけではない。 悲しみを越え、苦しみを越え、痛みを越え、怒りを越え、虚しさと絶望を越えて、その先に何があったのか。 悲しみが消えて無くなるわけでもなく、それを補うだけの幸福があったわけでもない。 それでもだ。それでも命を繋ぎ、ただ生きていく。 その“普通”の人間の、愛おしいしぶとさに涙が溢れる。
“すずさん”の人生が特別なわけではない。 彼女と同じように、何千万人もの普通の人たちが、泣き、笑い、怒り、「戦争」という生活を生き抜いてくれたからこそ、僕たちのすべてと、この映画は存在している。
ん、やっぱりうまくまとまらない。 ただ、全部がすごい。
取り敢えず映画を2回鑑賞し、原作漫画を読みふけったが、この先も僕は人生を通して“すずさん”と共に泣き笑うだろう。 そして、この世界の片隅で命を繋いでいくだろう。 |
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