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タイトル名 |
人間の條件 第一部 純愛篇 |
レビュワー |
feroさん |
点数 |
8点 |
投稿日時 |
2004-01-16 01:15:19 |
変更日時 |
2004-02-21 03:11:11 |
レビュー内容 |
僕は昔から、映画よりも読書に熱中していた学生で、この作品も原作を高校時代に読みました。それまで戦争といえば遠藤周作の「海と毒薬」程度のもので、本格的な戦争小説を読んだのはこれが初めてです。また、父が初めて僕に薦めた小説である事も印象に残っています。父はこの小説の内容をきちんと把握できる年齢になったと判断したんでしょう。渡されたこの本の奥付けには、僕が生まれる前の1974年62刷という刻印があります。僕は、この作品を震えながら読みました。日本軍の残虐さ、社会の矛盾と汚職、それと闘う梶の熱い正義。今思えば僕はこの小説を本当に理解できていたとは言えなかったでしょう。日本人としての自分に軽く鬱になったことを覚えています。それから僕は大学に入り、この作品のことも忘れていました。書架の片隅に並べてはいたものの、手にとるたびにその世界が重く蘇り、読み返すことはありませんでした。そんなとき、この映画に新規登録要望が出されていることを知りました。いつも行くレンタルビデオ屋には5本並べて置いてあります。キネマ旬報でかなりの評価を受けていることも知っています。そこで、初めて僕はこの作品に再度向かい合うことになったのです。キャストは全て日本人。仲代達矢と新珠三千代は、今からすれば古臭い演技ですが、かなりの熱演をみせています。国内での撮影だと思われますが、荒涼とした満州のステップ、砂嵐、そして坑道にいたるまで綿密にロケーションが組まれていることがわかります。小説の世界をイメージ化する力は存分にあることがわかりました。これから凄惨な世界が幕を上げる、そう思うと次の巻に移るのが恐ろしい、そんな気になりました。 |
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