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タイトル名 |
容疑者Xの献身 |
レビュワー |
よしのぶさん |
点数 |
7点 |
投稿日時 |
2009-10-09 05:08:40 |
変更日時 |
2009-10-09 05:16:17 |
レビュー内容 |
天才が二人も出来てくるので、さぞやもの凄い不可能犯罪との対決かと思いきや、DVの元夫を衝動的に殺した母子を助けるという小さな話。むしろ序のクルーザー爆破事件の方がインパクトが強い。ミステリーとして読み解くと、アラが目立ちます。天才のはずなのに、死体を切り刻んで捨てたり、浮浪者を殺して顔をつぶしたり、脅迫状送ったり、身代わりに出頭したり、まさに凡人のやることです。警察が浮浪者の死体を元夫と間違うわけがありません。家族が確認しますし、DNA判定も行います。宿にあった髪の毛となんかと比較しません。浮浪者仲間の目撃者もいるでしょう。彼らは助け合って生きてます。美しくない回答です。正々堂々、出頭して正当防衛を主張すればよかったのです。ラブストーリーとして読み解くとどうでしょうか。石神は人生に絶望していた。が、隣の母子の会話やお弁当で生きる希望を見出した。母の靖子に恋したのです。結果愛という不合理さを取り入れた回答は非論理的になってしまった。ただ天才なのに何故絶望したのか不明。論文をどんどん発表すればいいのに。石神の愛は無条件の愛ではなく、利己的な愛。献身ではなく、押し付け。天才+絶望+愛=押し付け+殺人。靖子の立場に立つと、殺人の身代わりまでしてくれた石神の愛に報いたい、一緒に贖罪したい気持ちは十分理解できます。いい人ですね。靖子の告白を聞いたとき、石神は初めて真実の愛を知り、号泣したのです。それで何もかも正直にしゃべり、川で凶器が見つかります。靖子の愛の方が献身的といえるでしょう。ミステリーと思わせて、実はラブストーリー。「簡単な引っかけ問題」ですが見事です。ダンカンへの脅迫状でのミスリード。というか、いかにも怪しげなダンカンそのものがミスリード。雪山で湯川が殺されるかもしれないというサスペンス。山からの景色を心から美しいと言える石神は、利己的とは言え、初めて愛に生きる喜びを味いました。悲劇を盛り上げます。このへんは成功しています。でもオバカすぎる警察は失敗。両者が知力を尽さないと面白くありません。 |
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