|
タイトル名 |
テルマ |
レビュワー |
かたゆきさん |
点数 |
7点 |
投稿日時 |
2019-05-12 22:54:02 |
変更日時 |
2019-05-17 16:55:07 |
レビュー内容 |
厳格な両親に過保護に育てられた少女、テルマ。大学進学とともに大都会オスロで一人暮らしを始めた彼女は、生まれて初めて体験する様々な事柄に戸惑いを隠せない。初めての友達、初めての自炊、初めてのパーティ、初めてのお酒、そして初めての恋――。自分なりに折り合いをつけ、新生活にも少しずつ馴染んでいくテルマ。そんな中、彼女は学校で原因不明の発作を起こし倒れてしまう。偶然居合わせた同級生の女の子に助けられたテルマは、次第に彼女と仲良くなってゆく。やがて自分が彼女に恋をしていることに気付いてしまうのだった。そして、そのことをきっかけにテルマの回りで不可解な現象が起こり始め…。ノルウェー発、そんなミステリアスな若い女性の隠された真実を巡るサイコロジカル・ホラー。いかにもヨーロッパ的な静かで淡々と進むアーティスティックな作品なのですが、この監督の研ぎ澄まされた感性はなかなかのものですね。孤独な少女テルマの宗教的な葛藤がやがて説明できない不穏な事件を引き起こすまでを、北欧的な乾いた空気の中で先鋭的に描き出すことに成功しています。身体に纏わりつく蛇の悪夢や明滅するストロボ、氷の張った湖の底で泳ぐ魚など印象的なシーンも多く、特にプールで溺れかけたテルマが水面めがけて泳いでいったらそこが水底だったというシーンは忘れがたい印象を残してくれました。また、ストーリーの宗教的なバックボーンの扱い方もうまく、個人の感情と社会の倫理観の相克など深いテーマをさらりと開陳させる手腕の鮮やかさも見事。テルマは現代のキリストとして新たな価値観を作り出すのか?奇跡の力を手にした、そんな彼女の今後を想像させるラストなども深い余韻を残してくれます。調べてみると監督はデンマークの鬼才ラース・フォン・トリアーの親戚だとのこと。なるほど、この神経病資質な感性は血筋なのですね(笑)。若干思わせ振りが多すぎて、幾分か冗長な面もなきにしもあらずだけど、このシャープで研ぎ澄まされた感性は一見の価値ありです。 |
|
かたゆき さんの 最近のクチコミ・感想
テルマのレビュー一覧を見る
|