|
タイトル名 |
幸せがおカネで買えるワケ |
レビュワー |
ゆきさん |
点数 |
7点 |
投稿日時 |
2021-03-25 08:17:04 |
変更日時 |
2022-09-10 12:58:06 |
レビュー内容 |
「ユニークで愉快な宣伝家族」を描いた品かと思いきや、死者まで発生する陰鬱な展開に吃驚。
とはいえ、急転直下に作品の空気が変わる訳ではなく、少しずつ悲劇を予兆させるのが上手かったもので、違和感は無かったですね。 序盤にて (この家族、なんか変だぞ?) と観客に思わせる描写も丁寧であり、すっかり映画の中に惹き込まれちゃいました。
「偽りの家族の中で、主人公のスティーヴだけは本当の家族になりたがっている」という設定も絶妙であり、自分としては大いに感情移入。 チームが崩壊しかけた時「家族に問題は付き物さ」と場を繕おうとするも「家族じゃないわよ」と、妻役のケイトに素っ気なくされる場面なんか、凄く切なかったですね。 単純に「ケイトを愛しているから、本当の夫婦になりたい」というだけでなく「皆で本当の家族になりたい」と願っているのが、絶妙なバランスだったと思います。 それだけに、好成績を認められて他のチームと組むよう上司に命じられても、それを拒否して「今の家族と一緒に頑張る事」を選ぶ場面が、凄く痛快。 スティーヴとケイトが、失恋した娘を慰め「家に帰ろう」と促す場面も (偽物なんかじゃなくて、立派な家族じゃないか……) と思えて好きです。
終盤にて、隣人のラリーが自殺する場面もショッキングだったし、そこからスティーヴが「ご近所さん」に真相を告げる流れも、不思議なカタルシスがあって良かったんですが…… そこが最高潮で、その後に失速しちゃったというか、ラストの纏め方が強引だったのが残念ですね。
「スティーヴとケイトが結ばれ、前々から話してたアリゾナ行きを実現させる」って形なので、この二人にとってはハッピーエンドなんだけど (……で、息子と娘は置いてくの?) って事が気になっちゃうんです。 息子と「父子のような抱擁を交わして」別れる場面は良かったんですが、その分だけ (娘とはロクに会話もしてないけど、寂しくないのか) って疑問も湧いてくる。 他にも「同性愛者な息子の恋人ナオミ」についても放ったらかしで終わってるし、どうも風呂敷の畳み方が拙かった気がします。 エンドロールにて「まだまだ他にも宣伝家族は沢山いる」って示すのも、後味が悪くなっただけなんじゃないかと。
個人的には「夫婦」ではなく、四人揃って「家族」としてハッピーエンドを迎えて欲しかったですね。 総評としては「隠れた良作」って感じで、充分楽しめたんですが…… 一抹の寂しさが残ってしまう映画でした。 |
|
ゆき さんの 最近のクチコミ・感想
幸せがおカネで買えるワケのレビュー一覧を見る
|