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タイトル名 |
大病人 |
レビュワー |
K&Kさん |
点数 |
4点 |
投稿日時 |
2024-07-15 13:52:31 |
変更日時 |
2024-07-15 13:53:10 |
レビュー内容 |
この映画のキャッチフレーズは『僕ならこう死ぬ』です。伊丹監督作品のテーマとしては、お葬式の手前の話になると思いますが、いつもの“業界の裏話”的なセオリーを使わずに、病気と死について淡々と描いています。 ただ、DVDの特典映像に特報(2)が入っていて、探偵に扮した伊丹監督が「これが凶器です」と紫の点滴を見せる内容。もしかしたら、当初は、治療という名目で病院に殺される…というハウツーものを考えていたのかもしれません。死にたくても死なせてもらえない患者なんて特に。 特報(1)で、伊丹監督自身が病院のベッドの上で「もし自分が癌だったら、延命はしなくていい。痛みだけは抑えてほしい。そして自宅に帰って死にたい」と、この映画のテーマとも言える自身の願望を言っています。
たしかに当時は、本人に病名の告知をする・しないの判断は病院側の考え方次第だったようです。この映画の数ヶ月後に、逸見政孝さんの癌の告白会見が、世の中に大きな衝撃を与えました。『残りの人生を本人にとって有意義に使う為に、正しい病名を告知する』そんな世の中の流れになってきたように思います。 そしてもう一つ、本作では向井が一度、死を体験します。顔の下からとうもろこしが湧いて出たり、少女の帽子から鳥が飛び出したりと、当時の最先端技術で創られた幻想的な特撮映像が流れます。伊丹監督流の臨死体験を映像化したものですが、当時は『丹波哲郎の大霊界』なる映画がヒットし、シリーズ3作も創られていました。…アレだけ話題になった割にはレビュー少ないですね。バブルも崩壊し、ノストラダムスの大予言も不安を煽る世紀末ということもあり、統一教会やオウム真理教のように、宗教が社会的に脚光を浴び、世の中の誰もが死について関心を持った時代だったように思います。
当時の世の中のニーズにピッタリとマッチした作品に思えますが、構成があまり上手じゃありません。劇中劇で癌で死にゆく夫婦の映画を撮っているけど、この当時向井は癌だと知らないし、癌だと知ってから映画の内容が変わっていったようでもない。最後の般若心経も、最初から撮ろうとしていたっぽい(緒方医師と看護婦には介助してもらってたが)ので、自身の癌や臨死体験が劇中劇に活かされるわけでもない。なら何で癌の劇中劇にしたんだろう? 緒方医師が勝手に退院しようとする向井に、医師としてではなく個人の考えを伝えます。そして向井最後の日「あんたが病院に入らず、治療も受けてなかったら、今でもピンピンしていたと思う」と。医師が自分の仕事を否定しているように聞こえます。この辺、いつもの伊丹映画らしい、病院の裏側映画の名残に思えます。コッチの路線だったら、いつものように面白い伊丹映画になっていたでしょうね。 |
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