5.《ネタバレ》 なんだこのイヤな太陽族(笑)。 本作で特徴的なのは、戦後史特有の記号がほとんど排されている事。確かに軍歌も歌えばダッコちゃんも出てくるが、必要最小限以下に抑えられているため恐ろしいほど時代感覚に欠けている。逆に言うと超時代的な記号の比率が高い(昭和の長屋の原風景?)。さらには民族的な記号も抑えに抑えられ、たまに出てくる字幕で「あ、これ日本人の話じゃなかったんだっけ」と思い出す次第。つまりガルシア・マルケスの『百年の孤独』が大阪の裏路地に出現してしまったワケだ。この映画、古臭い話に見えながら実はポストモダンなのではと推測。 このマジックが、マルケスがやったのと同じように「極限の父性」を描き出すのも偶然じゃないだろう。崔洋一は明らかに同じ手法・同じ路線を狙っている。異なるのは「画」だけだ。 そう、画。時たま「ここを観てくれ~っ!」という監督の叫びが聞こえそうなシーンが出てくる(豚の解体場面や、俊平宅での行水や、首吊りのシーンなど)。確かに凄い。重い。こんな映像ばっか観たくねえ(笑)…と思ったかどうかは知らないが、思いっきり弱気のシーンもある。オダギリジョーは明らかに演技が立ち過ぎていて、笑えるくらい意味を成していない。 崔洋一、映画の集客力を気にして「《たけし映画》ってだけじゃ客を呼べないかも」と弱気だったのかもしれない。いや、監督は気にしなくてもプロデューサーは気にするだろう。その結果の駆け引きがオダギリジョーになり、ラストの北朝鮮(あれは語り手の想像外の領域だから、明らかに不要)での回想になり、違和感ありまくりの要素を紛れ込ませる結果になったんじゃないだろうか。全体に散らばる記号のアンバランスさは、そういう製作の裏側を想像させるくらい「不快感」と「受け狙い」の両極に散っている。 実はオイラは、その弱気さが何となく愛らしくて好きだ。崔洋一も金俊平には負けちゃったのだ。ぶち壊れた映画全体のフォルムの中から、金という男のとてつもなさが、そして監督の普通な人間らしさが浮かび上がってくる。スタイルが不格好なのは、ポストモダンでは「アリ」ですよ。
注:原作読んでません。いずれ読んでから書き直すかも。 【エスねこ】さん [DVD(邦画)] 7点(2006-08-14 15:39:41) (良:2票) |
4.冒頭のシーンから、これは、日本版『ゴッドファーザーPART2』なのかなと思った。主人公は、ドン・コルレオーネよりもぶっとんだ<怪物>だったけど、「血と骨」というタイトルが象徴する「家族」という関係の重さは十分に伝わってきた。一人の怪物とその家族の物語から、大阪の朝鮮人集落の物語、日本現代史(いや、東アジア現代史か)への広がりを感じるストーリーも、大河ドラマの定番だけどやっぱりよい。ビートたけしの起用は最初疑問符だったけど、あの原作を、よくここまで映像化したものだと思う。花子の葬式での俊平と英姫が対峙するシーンはゾクっときた。 ただ、とくに前半のエピソードがブツ切り気味で、金俊平の暴力エピソード集みたいになってしまったのは、少し残念。 【ころりさん】さん [DVD(字幕)] 7点(2005-08-24 01:41:26) (良:2票) |
3.《ネタバレ》 目が釘付けになって、見入ってしまう映画だった。ドキュメンタリーのようにブツ切りされたような編集に、しっかりした役者たちが勢揃いで、すばらしかったと思う。金俊平の少年期や戦中をあえて?描かないことにより、観ているほうが「なぜ、あんな人間なのか?、なにがあったんだ?」と考えてしまう、他の登場人物に対しても同様。(原作読むと解るのかな?)いろんな評価をされているようだけど。解りやすいだけが良い映画じゃないと思うし、こういう行間を読む事を強いる映画は観終わってもジワジワ来るね。私の友人は「親に殴られたこともないし、あんな人いないよ!」と言っていたが、あの時代を正確に描くとリアリティが無くなるのかと思いゾッとした。 【カーヴ】さん [DVD(吹替)] 7点(2005-08-05 16:17:08) (良:1票) |
2.前作「クイール」とはまさしく対極にある、本来の姿に立ち戻った崔洋一の真価を問う問題作。一旗揚げる野望を抱きながら、朝鮮半島から日本は大阪へと出稼ぎにやってきた金俊平という男が、金儲けと暴力で明け暮れるという壮絶な生きざまで、昭和初期から末期までの時代を駆け抜けていく。一種の“ピカレスクもの”とも言え、暴れん坊一代記といった趣の内容である。とにかく凄まじい暴力シーンの連続で、観るに耐えないような過激さを有する作品だが、平穏な生活を破壊してしまう金俊平の行動は常人の理解を超えるものであり、感情移入を挟み込む余地が無い程の理不尽さである。このあたり自分の為だけに本能のままに生き、他を受け入れると言う寛容さには無縁の男として徹底的に描かれていく。ただ、人間と人間との感情のぶつかり合いから激しいドラマが展開されるも、崔監督自身が暴力描写に心血を注ぎ過ぎたのか、金俊平の傍若無人ぶりばかりが強調されたような印象を受ける。彼にとって未知の土地で生きていくという事が、闘う事と同義語なのは理解できるにしても、これではハミ出し者が単に暴れているだけにしか見えず、本来の生きるという意味からは大きく逸脱しているように思う。純粋に愛を育んだ清子との関係に重点が置かれ描かれたように、人間としての内面をさらに掘り下げてほしかった。ビートたけしはこの人なりの力演を見せるが、相変わらずの一本調子で、過激なシーンだけは、まるで金俊平のDNAと一致したかのような暴れっぷりで、本領を発揮している。また濱田マリやオダギリ・ジョーなどが強烈な存在感を示しているだけに、鈴木京香の描き方には今ひとつ食い足りないものがある。 オープニングに新天地へ向かう若き日の金俊平が、目を輝かせながら工業地帯を遠景に臨むシーンを、エンディングにも用意したことが余韻をもたらし実に効果的であった。 【ドラえもん】さん [映画館(字幕)] 7点(2005-05-04 01:32:09) (良:1票) |
1.えげつない話やけど、大阪の下町っぽさと在日の人達のイメージはすごっくよく出てるんちゃうかな。役者の演技もえげつなさがすごくでてて惹きつけられる。ドンドン悲惨になっていくんで観てるのがちょっと嫌やし。でも大阪に住んでるからかもしれん、こんな世界あるかもってすんなり受け入れて観てもーたわ。ただ、自分はそんなに悲惨じゃなくてよかった。最後はそーかみしめてもーた。人には持って生まれた生命力の大きさってのがあると思うんやけど、金俊平の生命力はあふれすぎてる。だから好き放題めちゃくちゃに生きれるんやろね。でも一人でよその国に子供時代にやってきて生きてゆくのには、それくらいの生命力が必要かもしれんな~。ヌクヌク生きてる俺には到底マネできひんし理解もできひん。そこがまた惹きつけられる。観た後はかなり色々消耗するんで気をつけてや。ちょっと長すぎた気がしたんで。七点。 【なにわ君】さん [DVD(字幕)] 7点(2005-04-12 22:55:59) (良:1票) |