《改行表示》 8.《ネタバレ》 面白かったです。この題材であれば「ジャーナリズムとは何ぞや」を説く小難しい社会派映画になるのだろうと思っていたのですが、そんな予想に反し、本編は部下との信頼関係を作り損ねた上司の物語という普遍的な切り口で作られていたため、非常に感情移入して観ることができました。。。 コミュニケーション不足が原因で一方的に嫌っていた上司が、実は自分を守るために陰で戦ってくれていたということは、社会人をやっていると一度は経験するものです。本作でピーター・サースガードが演じる編集長は、就任のタイミングのマズさや淡々とした仕事ぶりから「人情派の前編集長を蹴落とした冷徹な新編集長」と勘違いされ、現場からの総スカンを喰らいます。しかし、記事の捏造をした部下が他社の追跡取材によって丸裸にされそうになった時、その部下の将来をもっとも案じ、最善の着地点を探そうと奔走したのは彼でした。もし、上司と部下との間に信頼関係が築けていれば、困った時に泣きついていける間柄であれば、外圧よりも先に対応策を打って傷を最小限に出来たかもしれなかったのですが、悲しいかなこの部下は最後まで上司を信用せず、嘘を嘘で隠そうとするうちに時間切れを迎えます。自分に係る誤解を早期に解き、良好な職場環境を作る努力を怠った編集長にも問題があるのですが、そうとは切って捨てられない難しさがあるのも確か。これは多くの組織に存在する問題であり、それを突いたという点で、この企画は非常に鋭いと感じました。。。 ヘイデン・クリステンセンは『スター・ウォーズ』に続き、何でも上司のせいにする青二才を熱演しています。人当たりは良いのだが、点数稼ぎとも受け取れる小手先の親切ばかりでホンネが見えてこないヤツ、こういう人っていますよね。人を騙して利益を得てやろうという意思があるわけでもないのに、まったく必要のないウソをつくヤツ、こういう人もいますよね。主人公を特殊な人格ではなく、誰にでも心当たりのある人物像に設定した点でも、この脚本は巧いと感じました。この主人公にあったのは虚栄心でも功名心でもなく、コミュニケーションの手段として自然についてきたウソが、いつの間にか巨大化して収拾がつかなくなってしまったという程度のものなのです。社会派映画を期待して本作を鑑賞された方にとってはガックリきた結論かもしれませんが、私は事実の一側面を的確に切り取っていると感じました。 【ザ・チャンバラ】さん [DVD(吹替)] 8点(2013-03-05 01:10:29) (良:2票) |
7.《ネタバレ》 アメリカでは『The New Republic』誌は政治問題を主に扱ういわゆる高級誌という位置づけなんだそうだが、例えとしては適当じゃないかもしれないが一昔前の朝日ジャーナルみたいな感じなのかな。その雑誌の若い20代の記者が書いた捏造記事のお話ですが、日本でも最近(自称)高級新聞の誤報(ほとんど捏造というのが正解)事件があったので興味が惹かれる題材です。この映画を観れば判るけど、この記者が捏造した記事は、お堅い政治記事が並ぶ同誌の中では暇ネタに分類されるような面白さを追及した記事です。こう言ってしまうと身もふたもなくなるが、国益を損なうというか国際問題にまでつながった(自称)高級新聞のやらかしとはスケールが違います。『The New Republic』誌の事件はあくまで記者個人がやらかした捏造で社の組織的な関与が疑われる日本のケースとは別種ですが、捏造された数十本の記事を解明してきちんと謝罪したこの雑誌の姿勢は見習うべきでしょう。 ヘイデン・クリステンセンが演じる捏造記者は、彼の爽やかなイケメンぶりにも関わらず終始反吐が出るほど嫌なキャラです。編集長から追及されている時には逆切れして彼に無茶苦茶な論旨で責任転嫁し、クビになって弁護士同席で査問されるまで非を認めないというクズっぷり、もっと初期に「ごめんなさい、捏造しちゃいました」と謝罪すれば良かったのにねえ。実に幼稚なサイト捏造や手製丸わかりの名刺、おまけに弟まで使って偽物を演じさせる、あれで何とか切り抜けられると思っていることに観ていて腹立たしくなってしまいます。こういう逆感情移入とも言うべき効果を観客に与えていること自体が、この映画の秀逸なところなんでしょう。彼を追いつめてゆく編集長ピーター・サースガードの、真相を知るにつれてどんどん無表情になって口数が少なくなってゆく演技、本当に怒った大人って確かにこうなりますよね。対するクリステンセンは追い込まれると被害者ぶって部屋の片隅でうずくまって同僚に媚びを売る、これはもう大人と子供の物語という感すらありました。 卒業した高校で成功した先輩が職業体験授業をしているという語り口が並行するストーリーテリングですが、ラストでそれがクリステンセンの妄想(捏造)だったという幕切れも秀逸でした。 【S&S】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2024-10-13 22:24:33) (良:1票) |
《改行表示》 6.《ネタバレ》 主人公がめちゃくちゃ嫌な奴で反吐が出る。 息を吐くように嘘をつき捏造を平然とやってのけ、バレそうになってもその追及をまた嘘で逃れようとする姿にイライラ。 しかもまるで自分が被害者のように周りの同情をかう。 おまけに編集長を逆恨みして陰口をいう姿に、早くこいつをぐうの音も出ないほどに叩きのめしてくれとの思いがどんどん募っていく。 結果的には真実が明るみになってカタルシスが得られるのだが、ラストシーンで弁護士に付き添われてただ黙認するだけの姿も非常に見苦しいものがあった。 この実話の主人公が後に弁護士になろうとしたのを知ってまた嫌な気持ちに。 ただ、法律事務所に勤務しているものの弁護士にはなれなかったらしい。 映画でこいつに腹を立てた身としては幸いなことに、司法試験にパスしたけれど弁護士としての資質に欠けるとして審査に通らなかったようだ。 世の中に良識が残っていたことにホッとするが、もし開業できていれば悪党を擁護するのに打ってつけな、さぞかし有能な弁護士になったことだろう。 再鑑賞しても薄れることなくこれだけ嫌悪感を催す主人公も珍しい。 不快ではあるが、この作品に巻き込む力があるということか。 【飛鳥】さん [CS・衛星(吹替)] 7点(2018-04-12 21:02:29) (良:1票) |
5.《ネタバレ》 テンポの良さに感心しました。展開が渋滞することなくスムーズに語られていく。クロスカッティングも面白いし、終盤、チャックがスティーヴンが発表した数々のウソに気づく時のモンタージュもとても効果的です。私は、この映画の真の主人公チャックではないかと思いました。つまり、部下から信頼されていないチャックが内部腐敗を率先して取り除くことに成功し、誰からも好かれる、頼れる編集長に成長する…という。真のカタルシスはエンドクレジット前の字幕で訪れるのかもしれません。 【カニばさみ】さん [DVD(字幕)] 7点(2015-11-12 14:23:11) (良:1票) |
4.《ネタバレ》 ジャーナリズムとは。と語り始める前途有望な若きジャーナリスト。会社では同僚からの人望もあるし、母校では成功者として自分の功績を意気揚々と(妄想で)語る。こんなヤツの化けの皮が一枚ずつ剥がされていく様が気の毒というか気持ちいいというか(笑)。ジャーナリズムとは、とかそういう話ではなく、自分を「野心家で出来るヤツ」と勘違いしてしまった小僧の話。こういうタチが悪いヤツいるなーっていう。表面的にはちゃんとしてるように見えるが崩れ始めると脆い。何かと「怒ってる?」と聞いてくるところが印象的で象徴的。なぜ捏造行為に陥ったかなんて、弱っちい甘ちゃんだったからってだけで解明する程の事でもないでしょう。地味な作品だが実話を分かりやすく伝えているし案外面白かった。 【ちゃか】さん [地上波(字幕)] 6点(2013-03-29 14:19:23) (良:1票) |
3.《ネタバレ》 人情味があるだけでは上司は務まらない事を新旧二人の編集長が示しています。化けの皮を剥がされた小賢しい小僧のウジウジとした往生際の悪さに、チョロチョロするゴキブリをスリッパ片手に追い掛け回している時のように血圧が上がりました。これは役者の好演の部分もあるのでしょうか。しかし、本作が実話とは・・・したたかなのか、恥を知らんのか、唖然とします。 |
2.《ネタバレ》 「上司は部下を守るべき。そういう上司は良い上司だ」主人公の主張には共感できます。ミニボトル(乱れた春の記事)のクレームへの対応や、意地悪な上司に対して文句を言ってくれた前編集長は、確かに尊敬すべき上司の姿に思えました。でもそれは間違いでした。結果的に前編集長の下で捏造記事が量産されたことを考えると、彼の姿勢に問題があったと言わざるを得ません。「信頼」は美しい言葉です。でもそれが「過信」になったら価値を失います。チェック体制も儀式であるなら意味がありません。「優しさ」はときに「甘さ」につながり、「信頼」は「無責任」に変わります。職場の和を保ちつつ、厳しさも失わない。難しいことです。でも絶対に必要なことだと本作は教えてくれています。主人公が捏造に手を染めた理由。それは、褒めてもらいたいから。自分を認めてもらいたかったから。完全に子供の発想です。ロースクールに通うのも、親の体裁のため。そこに主体性はありません。悪いのは自分じゃない。上司が、親が、自分以外の誰かに守ってもらいたいと願うのもそう。体は24歳の大人でも、心は体に追いついていません。ウソを必死で隠そうと足掻くのは、自分の非を認めたくないから。彼は最後の最後まで、心から謝罪することはありませんでした。誤りを認めるのは辛いことです。自身を否定することだから。でも脆い土台はいつか崩れます。築いて、壊して、踏み固める。その繰り返しで人は成長していくのです。彼は脆い土台を積みすぎました。もはや転落死も在りうる高さ。だから壊すことが出来ません。自分も足元を見て冷や汗がでます。 【目隠シスト】さん [DVD(字幕)] 8点(2007-10-29 19:27:38) (良:1票) |
1.米国だからこんなヤツもいるのかなと思ったが、良く考えたら天下の”朝日新聞”はこんな記者だらけだった。教科書問題、従軍慰安婦、サンゴにNHK、田中康夫枚挙に暇なくこんなに捏造・誤報を生み出す記者と社風、しかも誤りを決して認めない体質が我国の大新聞だって言うんだから困ったもんだよ。 【亜流派 十五郎】さん [DVD(字幕)] 6点(2005-10-20 20:52:02) (良:1票) |