6.《ネタバレ》 スランプに落ち入っていた芸術家が生涯の大作を完成させるまでの過程を、カメラが観察し続けていく。それはさながら、氷結していた河がゆっくりと解け出して再び怒涛の流れを起こすまでを、ずっと見守っているような興奮に似たものがある。動きそのものよりも、作動するときの時間のうねりにこそ感動があるらしいのだ。冒頭で画家が落ち入っているスランプは、それなりに安定した生活でもある。芸術家としての焦りさえなければ、安定した夫婦の関係と重なっていて、普通の夫婦ならこれが理想の生活なのである。しかしその穏やかさからは芸術が生まれてこない。そこで若い娘マリアンヌがモデルとして入り込んでくる。安定していたこの家の空気が、創作のほうへ傾き出す。妻としては夫の仕事の再開を喜ばなければならない。しかし、自分を通して完成されなかった絵が、若い娘の裸を通して完成されていくのを、アトリエの外で待っていなければならないとき、妻のほうでも、夫の創作に並行した心理のドラマが動き出す。そっとアトリエを覗いて見ると、以前描きかけだった自分の顔がマリアンヌのお尻の絵に塗り潰されてたりして。この二人に加え、さらにマリアンヌの時間もある。画家との間に生まれてくる緊張のドラマだ。最初はデッサン、ポーズもただ椅子に座っているもの。それから普通のヌード。背中。だんだんと外界の田園風景と隔絶した造形の奥へ、芸術の創造という魔の領域へ入り込んでいく。最初は丁寧に口で指示していたポーズも、ついには画家みずからの手でぐいぐいとマリアンヌをねじ曲げていくようになる。格闘と言ってもいい。人形のように解体されていくことへの抵抗と、心のどこかで感じている妻への勝利感が、マリアンヌのドラマを動かし出す。この三つの流れが絵の完成へ向けて合流し大河となっていくところ、安定の対極にある充実、芸術の完成という死の瞬間に向けられた沸騰、それをこの映画は描き尽くした。そのとき出来上がった絵などは、映画にとってもうどうでもいいのである。 【なんのかんの】さん [映画館(字幕)] 8点(2009-09-15 12:14:31) (良:2票) |
《改行表示》 5.《ネタバレ》 そりゃ、こんだけ長く裸体を垂れ流しされてますと確実に飽きも来ますって。 しかも色気を感じさせてくれる映像の質じゃないですし。 エマニュエル・ベアールが女優として終わった瞬間のように感じ 悲しくなってきました。 こんなものを4時間も我慢してる見終えるくらいなら 天使とデートをあと2回か3回見直していたほうが幸せ感じれたんじゃないかと思えるんです。思えるというか確実にそうなんですよね。だからもう二度と見ること無いですよね この作品 さようなら。 ただ、もちろん(頑張ってた→)エマニュエル・ベアール(←たぶん)が悪い訳ではないですし、 ただ悲しいかな エマニュエルの裸体にちっとも興奮すること無かった4時間なんですが、終盤、トイレの窓ガラスを越えて四つん這いで入ってきた少女の胸元スカスカで それでいて無防備で ふいにカメラの前で胸チラで まだ発育していない(←たぶん)(←というか見えてたので言える まだつぼみ)そのお胸が見えた僅か1秒のほうが全体的な4時間よりも確実に興奮してしまっていたんですよね。そんな僅か1秒の破壊力。 それに比べてこの4時間って一体ナンだったんだ?って思いが残ってしまえるんですよね。残念。 【3737】さん [CS・衛星(字幕)] 3点(2019-01-02 14:00:14) (良:1票) |
《改行表示》 4.《ネタバレ》 4時間は長すぎる。 しかも驚くほど地味なので、さらに長く感じる。 いくらベアールが魅惑的で、美しい肢体を晒してがんばったとしても、とてもじゃないけど最後まで持たない。 画家とモデルのリアルな間や空気感を出したかったのだろうが、この半分にまとめていいくらい。 絵画や芸術に関心が高いなら面白く見れるかもしれないが、エイターテイメント性に乏しいのできつい。 芸術家的というか哲学的というか、画家の思考回路や感受しているものがさっぱり理解できない。 フランス映画で時に遭遇する、自分の理解力を超えた難解すぎてお手上げの世界。 集中力も切れて、なんとか理解しようとする気も失せる。 絵のモデルをすることが、この映画を最後まで見ることと同じくらい大変なことはわかった。 【飛鳥】さん [DVD(字幕)] 2点(2015-03-28 00:13:25) (良:1票) |
3.いやあーさすがに長い。ベアールのヌードも見飽きちゃった。私は女だし。解ったことといえば絵描きはSでモデルはM、という構図が上手くゆくのだな、ということとフランスって雰囲気のあるロケーションがふんだんにあるんだなあと感心したことくらい。画家の屋敷の庭は広大で美しく、小高い丘にある石造りのアトリエも本宅もその佇まいの威厳のあること、圧倒される。石壁だから冬は寒そうだなあとかいらんことまで想像したりして、絵の進行具合にあまり集中していない自分に気づく。バーキンがエプロンのひもを結ばないのは彼女のファッションポリシーなのかな、とほらまた気が散る。かくも本筋以外のところに目が行きっぱなしの本作だったけど、それだけ画が美しいから、ということにしておこう。 【tottoko】さん [CS・衛星(字幕)] 5点(2013-11-17 00:07:47) (良:1票) |
2.舞台がパリではなく、陰謀も無いせいか、これまでのリヴェットの映画とは作風が違う(長尺という部分はリヴェットらしい)ように感じる。それがダメというわけではなく、コレはコレで良かったのですが、初見時はちょっと戸惑いました。 ひたすらに絵を描く風景が描かれる中で、音楽を消し去り、絵を描く音だけを響かせて、画家とモデルの間に生まれる緊張感、そして画家とモデルの間に築かれる関係の微妙な変化を際立たせる。とくに何度も見たいとは思わない作品なのですが(長いし..)、なぜか既に4回見ている。何度見ても絵を描く風景の独特な緊張感には引きつけられます。画家は容姿ではなく内面を描く。内面を見られることは裸を見られることよりも辛いことなのかもしれません。無意識的に目を背けていたものが人間の奥底に潜み、それが暴かれたら..。そしてそれを暴くことが芸術だとしたら、芸術とはなんて残酷なのだろうと思わずにはいられない。完成した絵が画商の手に渡らなかった結末に、映画が芸術であるための何がしかのメッセージととるのは考えすぎでしょうか?リヴェットってそういうことしそうなんですけど。 【R&A】さん [ビデオ(字幕)] 7点(2005-05-11 15:19:40) (良:1票) |
1.全体を取り巻く美しい空気もさることながら、画家の心理に迫った良い作品だと思いました。自分の中に新しい「美」に向かう力の喪失を感じ始めている老作家。彼が一人の女性に会う事で自分の作家としての野心を取り戻す。それは一度は諦めた作品の中に「美」を描き出す事。彼の情熱は作品の中に「美」を描き出す事であり、作品の完成と共にモデルに対しても、作品そのものに対しても急速に醒めて行く。新しい作品を完成させるまでの作家の心理を、深く描き出していると思います。 【ネコ】さん 8点(2002-07-10 19:34:52) (良:1票) |