《改行表示》 12.《ネタバレ》 この映画ではシャワールームや最後の地下室のシーンが話題になりますが、今回見て面白かったのは、マリオンが逃亡中社長に見られちゃうところから、ベイツ・モーテルにたどり着くまでです。特にあのグラサン警官の撮り方といったら、もう絶品。ヒッチコックの巧さが十分堪能できます。雨が降る中、口をひん曲げながら運転するジャネット・リーも、ナーバスな犯罪者の様子をよく表しています。後半はややトーンダウンするのですが、その代わり話をバンバン先に進めてしまうのも、いいやり方だと思います。 怖いかどうかで意見が分かれているようですが、これは見終わってから怖くなるタイプですね。ちょっと変わっているものの、一見すると人畜無害な青年であるノーマンが、実はサイコな殺人者であったということ。異常な人間が正常な人間に紛れて、自分の隣にいるかもしれないという恐怖があります。だからこそ、この映画を見たあとシャワーを使うと、たとえ自宅であっても後ろを気にしてしまうわけです。そういう理性に訴えかける恐怖なので、エモーショナルなものを期待したら、当てが外れるでしょう。物陰に隠れていきなり脅かすような、お化け屋敷ふうの恐怖を描いているわけではないのです。 【アングロファイル】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2010-09-10 20:17:55) (良:3票) |
11.《ネタバレ》 精神異常犯罪というテーマをここまで掘り下げて、サスペンススリラーに料理してしまう手腕はすごいですね。映画史的には、このテーマを内包した作品はこれ以前にもあったと思いますが、この作品の後、サイコスリラーが量産されたことを考えると、その価値の高さも納得です。使い古されたという感もしなくはないですが、それだけ多くの映画人がこのテーマを描いてきた証拠でしょう。シャワーシーンに顕著に示されるように、ヒッチ監督の見事なモンタージュがこの作品でも効果絶大です。カットを細かく割って、テンポを上げていく手法もありますが、この作品ではむしろ逆です。細かいカットをつないでいきながら、時間は経過させない。キャメラを何度も何度も似たポジションに戻す短いショットの連続。まるでスローモーションのように時間を長く感じさせて緊張感を出していきます。構成もいいです。主人公が死ぬわけないと考えて、安心しているところでシャワーシーンですから、「えっ。死んじゃったの?」って感じで、やっと主人公すら取り違えていたことに気付く。こんな調子ですから、最後の最後まで安心はできないというテンションが持続していきます。ノーマン・ベイツを演じたアンソニーパーキンスも名演で、テーマの先見性に目がいきがちですが、これらの「演出された」恐怖がなければ、金字塔どころか、時代に埋もれていた可能性も否定できないでしょう。もっともスリラーとは往々にしてそうゆうものなのかも知れませんが。 【スロウボート】さん 8点(2004-02-01 11:29:44) (良:2票) |
10. 原作は(ラヴクラフトのあからさまな模倣が多く、あんまり感心しない)怪奇小説家ロバート・ブロックの同名小説。だが、ヒッチコック先生はプロットだけ拝借して独自のショック映像に昇華させている。映画の黄金時代が過ぎた後の低予算製作を逆手に取ったチープなモノクロ画面が本作の場合、秀逸な効果を生む結果となった。ヒロインの恐怖の表情と振り下ろす刃物と排水孔に流れ込む水の色の変化を矢継ぎ早にカットバックさせてゆくバスルーム惨殺シーンは正に圧巻の一語。凡庸で下品な監督ならグサッとモロに突き刺したり、血みどろのヌードでショックを煽ったりするのが関の山だったハズ。いくらカット割りを真似ても、オリジナルの足下にも及ばなかったガス・ヴァン・サント版は哀れですらある。本当に、こういうのは「センス」の問題であって、才能の差が明暗をクッキリ分けることを心底実感。当時のアンソニー・パーキンスは若干落ち目とはいえ、好青年のイメージが未だ根強かっただけにノーマン・ベイツ役で観客に与えたインパクトがいかに凄まじかったか、はチョット形容不可能。ギラギラ脂ぎってハナっからイッてしまっているヴィンス・ヴォーンでは到底敵わないのも当然である。ヒッチコックにとってベストとは個人的に全然思わないが、後のホラーやスリラーに与えた影響を併せて考えると傑作であることは間違い無い。 【へちょちょ】さん 8点(2003-01-05 11:32:26) (良:2票) |
9.《ネタバレ》 かのシャワー室の惨殺シーンと、モーテルに隣接する小高い位置に古城のようにそびえる不気味な屋敷の外観を別とすれば、後半部分の恐怖は弱いと思います。例えば、探偵を殺害する場面とラストと2回、突如ナイフを片手に襲ってくるわけですが、この唐突さはブルブル震え上がるような純然たる恐怖ではなくビックリドッキリの驚きの方が強いです(とはいえ、探偵が階段を登り刺されるシーンを頭上からとらえているのは好きだ。しかも母親の存在を信じさせるためにノーマンが彼女を運ぶシーンの後は、あの部屋は危険ではなくなるので妹が調べに来る時は階段を登っているシーンは省かれ、階段は完全に恐怖の装置として機能している)。その一方で前半の逃亡部分は恐怖に満ちています。サングラスをかけた警官はこの世で最も怖い存在に見え、後を着けられた日にはもう生きた心地などしませんし、大金を持ち逃げしているかもしれないという状況があるだけで、道端で社長と出くわすという何ということもない状況が心臓バクバクのシーンへと変貌しています。両方のシーンがどこか日常的であるという点も恐怖心をあおいでおり、単純なシチュエーションで見事に恐怖を演出しています。それとこれは音楽の効果が凄いです。・・・それにしても最初の外からカメラが入ってゆくシーンはどうやって撮ったんだ? 【ミスター・グレイ】さん [DVD(字幕)] 8点(2010-12-28 18:27:08) (良:1票) |
8.《ネタバレ》 白骨になったりミイラ化してる家族と同居してた、って最近の“消えた高齢者”事件で、「そうか『サイコ』ってけっこうリアリズムだったんだ」と慄然とさせられた。少なくとも、我々の日常とどこかでつながってる話だったんだ。この二段構えの独特の構成、前半ではいたって「分かりやすい」犯罪、金を目にして魔がさす事件が展開する。変な言い方だが、日常的な犯罪。それが後段になると、より深いレベルの魔の世界に入り込んでいく。前半でしばしばクローズアップされていた事件の中心である大金が、あっさり車とともに沼に沈んでいく。より深い魔に。「分かりやすい」事件が、より暗い世界に包み込まれていく。この構成、作品全体の整いという点から見ると屈曲しているようでいて、それなりの筋が通っており、観客にとっては迷宮感を増すことになる。「犯人」が唐突に消え、次に「探偵」が消え、じゃあ誰がドラマを仕切るのだ、って。観客は実に心細い気持ちでこの手だれのスリラーを観続けねばならない。それにしても死体と同居していた事件を「年金詐欺」レベルで納得してしまう日本のマスコミの情けなさ、あれってジャネット・リーがベイツ・モーテルに到着したところで『サイコ』観るのをやめてしまったようなもんじゃないか。 【なんのかんの】さん [DVD(字幕)] 8点(2010-09-21 09:50:29) (良:1票) |
《改行表示》 7.《ネタバレ》 ストーリーを知らなかったので、当然、最初に出てきた女優がメインで話が進んでいくものと思っていましたが、話が半分くらいまできて主役チェンジ(?)の思い切りに驚かされました。 白黒の映像により、恐怖感や得体の知れない感覚が増幅されていたのもよかったです。 結末は予想どおりで意外性は感じませんでしたが、そんなことで評価は下げようとは思いません。おそらくオチの予測がついたのは、後年に小説やら漫画やらが何らかの形でこの類の結末を用いているからだと思います。 【午の若丸】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2010-06-02 18:21:22) (良:1票) |
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6.《ネタバレ》 まず、今から半世紀近く前にこのストーリー・構成を考え、映画化したことに賞賛。近年の映画は、構成を練りすぎて見ていて最初「??」となることが多い。例えば、時間軸をずらしたり、登場人物が複雑に絡み合っていたり。それはそれで面白いし、嫌いではないのだが、今作を観るとシンプルな方がよりストーリーに引き込まれ、臨場感が増す感じもした。エンディングありきのストーリーではなく、ストーリーを追ったあげくのエンディングといった感じがして、好感度も高い。先にシンプルとは言ったものの、途中、2転3転する流れは素晴らしいものがあり、今見ても全く色褪せない。マリオンが失踪する車の中で、会社の社長や取引相手の映像はあえて見せず、会話だけ(まるでマリオンが想像しているかのように)はめ込んだのは見事。効果音もシンプルながら、上手く観る側の恐怖心を刺激する。複雑になりすぎた近年の映画に食傷気味の方には是非お薦めです。 【グングニル】さん [DVD(字幕)] 8点(2007-04-21 21:26:11) (良:1票) |
5.《ネタバレ》 シャワーシーンとラストが凄いだけではなくて、あらゆるシーンに細心の注意が払われているから、そのメインの場面が輝くのです。探偵が電話からモーテルに戻ってくるシーン。ノーマンは何か作業をしているっぽいが、その表れ方がごくさりげない。しかもそれは、その前の会話で、今からその作業をしますと言っていたとおりのものだ。だからこそ、ミスリードとして機能している。そして、探偵が上の家にたどりつくと、母親が襲ってくる。途中で事務所を捜索しているから、時間的・空間的なつじつまは合っている。あと、序盤でマリオンが車の中から社長を見つけるシーン。ここは、何気ないことでも恐怖に感じるという彼女の緊張の心境を表すと同時に、後で失踪が明らかになった際、事件性を否定する根拠として機能している。そもそも、横領から始まる導入自体が、捜査に警察の関与が入ることを否定する根拠となり、作品の重要な前提を構成しているのだ。ここまでいろいろとつじつまが合っている脚本って、あまりない。 【Olias】さん [ブルーレイ(字幕)] 8点(2004-02-02 01:28:51) (良:1票) |
4.《ネタバレ》 有名なシャワーシーンはそんなに怖いとは思いませんでしたが、そこに至る過程がジワリジワリときました。まるで蜘蛛が巣を作って蝶が舞い込むのを待っているような、そんなおどろおどろしさがベイツ・モーテルにはあります。やっぱり鳥の剥製が並んだ応接室の不気味さといったら……。剥製に囲まれたノーマン・ベイツがマリオンに「君って鳥みたいだね」と言うシーンには、ホント鳥肌ものです。実際はつぶやいただけなんですが、どうも舌なめずりをしているような空気が伝わってきて、それだけで固まってしまいました。また、怖さの演出という点においては、鼓膜を裏返されるような効果音がすばらしいですね。音楽だけでも神経が逆撫でされて、冷静ではいられなくなってしまう。しかも舐めるようなねちっこい映像とからまって、ゾーッとするような恐怖感が(汗)。マリオンが街から逃げるため、豪雨の中、車を走らせる場面も緊迫感がありました。これが映像だけだったら、フロントガラスに叩き付けられる雨をワイパーが猛スピードで拭い、視界は極度に悪く、たまに対向車のヘッドライトが見えてめまいを起こしそうになるっていう単調な場面なんですよね。あのキーキーとした効果音に、見事にやられてしまいました。他にも些細なシーンでゾゾッとした怖さ、皆さんも仰っていますが、日常の中の狂気のような怖さ、アンソニー・パーキンスの好青年っぽさが怖かったりとかしますよね。ただ、不満なのがラストシーン。ラストに余計な説明が入っているのがちょっと蛇足気味で、もったいないような気がしますが、多重人格物がメジャーでない時代、説明的な台詞が必要だったんでしょうね。 【元みかん】さん 8点(2004-01-21 06:26:27) (良:1票) |
3.《ネタバレ》 すごくハラハラしちゃったわー。 昔見たことあるのに。 ホホ。 これって話の意外性とかオチの斬新さとか、そういうので売ってる映画じゃないと思うのよね、アタシ。 特に精神異常を扱った映画が氾濫してる今では、そこまで目新しい感じもしないだろうし。 でもね、内容がわかってても思わずドキドキさせられちゃう、それがスゴイと思うの。 ヒッチコックって人は人間の心理ってものをよく知ってたんだろうなあって思うわ、アタシ。 こんなに思い通りに観客の心理を手のひらで転がせる監督さんが今はたしてどれだけいるかしら? 人間の心理ってものに鋭い感覚と強い興味を持ってた彼だったからこそ、こんな昔にすでに二重人格なんていう精神の異常を題材に扱った作品を作れたんじゃないかしら。 それに彼は観客の目線てものをよく知ってたんだと思うわ。 たとえば「4万ドルはどうなったの!?」って思ってると、必ずあの新聞紙にくるんだお金を映してくれるの。 まるで自分があの部屋にいて、実際に自分の目で見てるみたいに。 だからこそ余計に映画の中の世界にのめりこんじゃって、結果としてさらにドキドキさせられちゃうんじゃないかしら。 あとアタシ、ヒッチコックってきっとすごく怖がりだったんじゃないかなあと思って。 だってけっこう日常的な短いシーンひとつとってもドキドキさせるじゃない? 監督自身がすごく怖がりだから、見てる人にとって日常の中のなにが怖いかってのが手に取るようにわかるんじゃないかしら。 もちろんそれがわかっただけじゃダメで、それを映像化する技術も必要なわけだけど、ヒッチコックはその技術と恐怖に対するセンスとをバランスよく持ってたのかなあ、と生意気にも考えてみたりして。 でも…どうでもいいわね、そんなこと。 とにかくハラハラドキドキさせられたわ。 それで十分ね。 【梅桃】さん [地上波(字幕)] 8点(2004-01-21 00:23:44) (良:1票) |
2.主役だった筈のスターが劇中突然殺されるという展開に当時の観客は度肝を抜かれたわけですが、残念なことに現代の観客はジャネット・リーがバスルームで殺されることをあらかじめ知ってしまっているので、当時の観客が受けたようなショックは感じないわけです。で、「スクリーム」のドリュー・バリモアの惨殺シーンごときでビックリしているわけです。ヒッチ先生ごめんなさい m(__)m ・・・余談ですが、大学受験の時、解答用紙がまだ四分の一も余ってる状態で「あと10分です」の声がかかり、焦りに焦りまくっていたら突然脳内ステレオでこの映画のオープニングテーマが流れ出したということがありました。とうとう解答用紙は埋まらず、浪人生活に突入しましたけどね(泣) 【じゅんのすけ】さん 8点(2003-08-29 19:25:26) (笑:1票) |
1.いろんな意味で怖かったです。特にシャワーシーンはほんと怖いですね。画面だけでも十分恐ろしいのに、バックで流れる音楽とマリオンが刺されるたびに「ザクッ!ザクッ!」という効果音が怖さを倍増させていてとても印象に残るシーンでした。約40年もの前に、ここまで犯罪者の悲しくも切ない異常心理を表わす映画が存在していたとは全然知りませんでした。「サイコ」というタイトルを見たときは、ジェイソンのような無差別な殺人を犯す犯人を描いた映画とばかり思ってました(反省)。でも、一番怖かったのは、終盤でいきなりしゃしゃり出てきて、事件の真相を説明しだす分析医でした・・・(笑) 【はがっち】さん 8点(2003-04-09 00:32:20) (良:1票) |