6.《ネタバレ》 何よりも、台詞の一つ一つがいちいち含蓄と示唆(と皮肉)に満ちていて、会話のやりとりを聞いているだけで心地よい。また、素朴な人道的感覚には反する結論であるにもかかわらず、不思議に開放感(爽快感とすらいえるかも)が漂っているのは、主人公の「意志」に徹底して焦点を当てて、そこからぶれていないからです。だから、宙を飛んでいく主人公の空想の視点も、単なる映像イメージではなく、作品の重要な一部としての説得力をもって迫ってきます。ただ単に登場人物の行動がどうのこうのというだけでなく、見た人にそれぞれ自らの生きる意味まで考えさせるという点において貴重な作品。なお、邦題もセンスが良いと思います。 【Olias】さん [DVD(字幕)] 7点(2008-08-21 00:20:45) (良:2票) |
5.《ネタバレ》 ラモンの一言一言から滲み出る聡明さに唸らされます。そんな彼だからこそマヌエラを始めとする家族に感謝の気持ちを一言も残さない事に許せないというか幻滅です。車を見送るマヌエラの万感こもった姿に泣けてしまいました。35歳というのが信じ難いハビエル・バルデム円熟の演技に+5点。 |
4.《ネタバレ》 事故により四肢麻痺に陥ったラモンが尊厳死を求め、周りの多くの人々との関わりを描いた作品。 この映画ではあくまで、尊厳死を肯定したものではなく、 様々な考え方から、観ている者に考えさせられる作品になっています。
中でも私が印象的だったのは、死ぬために生きる。前向きな死。 といった事。 日本で一般的に言って、「死」とはあくまで後ろ向き、逃げ、なものであると捕らえられる事が多い。 だが、映画中にもあるように、周りの人の愛情は素晴らしく、まさに愛に溢れた環境にあるラモン。 それでも、ラモンは事故にあってから26年間の自分の人生に尊厳はなかった、というのが強く残りました。 似た境遇であるフリアと出会い、ラブストーリーもあるんですが、 それに対比されたように、いわゆる普通の恋愛もさりげなく描かれており、その2つが印象的です。
観終わり結果、答えが出る訳ではありませんが、一度観る価値のある大人の映画だと思います。 【コショリン】さん [DVD(字幕)] 7点(2007-07-29 22:15:10) (良:1票) |
3.私はラモン本人よりむしろまわりの家族や友人、恋人などの気持ちが気になりました。息子のように愛して世話をする義理の姉、安楽死を断固として認めない兄、自ら死を望む息子を見守るしかない父、生きる意義を見出そうとする恋人、同じ悩みを抱える恋人、ラモンを応援する友人たち。お兄さんが「死ぬのは一瞬のことじゃない、もうラモンに会えなくなってしまうということなんだよ!」と甥っ子に言うシーンでは素朴ながらラモンへの深い愛情を感じました。この映画では誰も間違ってなんかいなくて、だからこそ、悲しい。 【kaneko】さん [DVD(字幕)] 7点(2006-12-12 10:35:42) (良:1票) |
2.《ネタバレ》
自分がいなくなることや行ったことのない帰れない世界は怖いものです。
だから輪廻や天国を人間は夢みるのであって、
ほとんどの宗教はなんのリアリズムもない夢の世界を説いています。
この映画はリアリズムが理解できないとただ主人公がかわいそうとか、
周りの残される人に感情移入し泣かされてしまうかもしれません。
実際私もグッときたのですがその感動よりも描きたいことに興味を持ち、
しばらくしてまたこの作品を色々な角度から観てみようかと・・
たぶん次に観るときはまた評価が上がっているかもしれません。
今回は私は客観的に観て感心し感動しただけにとどまっています。
尊厳死を選んだ主人公に対し最後まで第三者の目でしか見られなかった、
考えられなかったその他の人々の気持ちは大変よくわかります。
これだけそれぞれの人々の気持ちをきちんと描写されている映画は珍しい。
共感できたふたりの女性のうち本当に添いたかった女性は、
われに返るあの演出はうまいとしか言いようがない。
そして神父の無責任な言葉は的をついており、
私は報道の自由が恐ろしくなりました。
同じ体の不自由な立場の神父がテレビ画面からメッセージを送る。
それは宗教を神を恐れさせるためではないにしろ、
結果的には本人や家族には偽善にしか映らなかった。
誰の立場もわかりすぎる説得力のある映画なのに、
主人公の立場には立てない自分はあくまでもその他の人と同じ。
ただ意義のある作品です。
いつかは誰もが考えなければいけないことを、
美化したり泣かせようとする作品ではありません。
映画の手助けという点では、
かなりうまいこと映画化されてるなぁと感心しました。
音楽がいいし映像も見やすく演出は「バーディ」を彷彿とした、
上空から飛ぶ鳥のカメラのソレです。
生きてる意味って何?
と問う作品が多い中で死ぬ意味って何?と問う映画は珍しい。
戦争や仕方のない理不尽な題材でこのテーマはあるけれども、
実話でもある(近年にニュースでありました)この作品は、
死への賛美や逃避でもないきわめて現実的な内容であります。
現実的であるがゆえに私は理解し興味を持ったのかもしれません。
【アルメイダ】さん [DVD(字幕)] 7点(2006-01-20 05:01:34) (良:1票) |
1.《ネタバレ》 まず言ってしまうと、この作品が「尊厳死」というテーマとしっかり向かい合ったものとは思えない。尊厳死を認めて欲しいと支持者と共に国を訴えた実在の人物の様子は描ききれていないと思う。法廷のシーンなどはとてもあっけなかったし、病に侵されたフリアの生死への決断なども曖昧に流してしまっている。この映画の視点は、主人公ラモンの周りにいる、私や多くの観客、そして監督も含めた「普通」の人のものに近いと感じた。日々のつたない大波小波で疲れ切っているロサ、日常の営みで一番多く義弟と向き合い、飛ぶ夢を見るどころか海辺の散歩もままならないマヌエラ、厳しい小言を言われながらも叔父が好きなハビ少年、自分と同じ視点を持った彼らに感情移入してしまうからこそ、愛する家族の胸の内を想い、希望を叶えたい気持ちと彼を手放したくない気持ちとの交差に胸が詰まるのだと思う。歳は取っても可愛い我が子に変わりない、その子が「死」を勝ち取りたいと願う姿を見る爺ちゃんなど、私にはまるで正視できなかった。「尊厳死」でなく、生きていれば誰もが直面する「死」と「命」について、自分自身の記憶も含めて思い起こさせ、ゆっくり向き合って考える良い機会を与えてくれたとは思う。しかし、ハビエル・バルデムの優しい佇まいはさすがのもので、死んでいくシーンよりも悲しげな笑顔の方が一層深く脳裏に残っている。この次はどんな姿の彼が見られるのか、期待が膨らむ。 【のはら】さん [映画館(字幕)] 7点(2005-06-21 18:00:02) (良:1票) |