6.《ネタバレ》 隠し事を一切しないのが家族のルール。小泉が創り上げたユートピアは、ソニンに言わせれば「幸せな家族を演じる学芸会」です。それでも彼女は構わないといいます。ウソもバレなければウソじゃない。それはある意味正しいです。ただ危険な思想でもあります。真実は意味を持たないということだから。小泉の記憶、その母の記憶。共に自身に都合の良いように改ざんされていました。小泉母の「繰り返し、やり直し」呪文のような言葉。いくらでも事実は、記憶の中で書き換えられるのです。血の雨に打たれて泣き叫ぶ小泉。それは彼女の生まれ変り。綻びが露呈した家族の“やり直し”の儀式。息子のカレンダーに記された赤い丸。「そうか私の誕生日だったんだ」そう考えれば全ては丸く収まります。母のためにプレゼントを持ち寄る家族。でも、それが現実だと裏付けるものは何もありません。自分には、単純なハッピーエンドだとは思えませんでした。ただ仮に妄想だったとしても、希望であることに変わりはありません。どこの家庭だって、多かれ少なかれ問題を抱えています。完璧な家族なんて存在しません。家族みんなが健康であること。これで十分幸せなんじゃないでしょうか。小泉の“やり直し”が、“事実を書き換えること”ではなく、“自身の価値観を変えること”であって欲しいと願います。そう、息子とソニンのやり取りが印象的でした。「南向きの窓は、みんなに光が届いて幸せになるためのもの?」「違うわよ。洗濯物が乾くようによ。」幸せの“かたち”に囚われる必要はありません。キャストは満点クラス。特に小泉と永作がめちゃくちゃ上手いです。凝ったカメラワークや演出については、少々煩い気もしましたが、トータルバランスが取れていたのでOKでしょう。 【目隠シスト】さん [DVD(邦画)] 8点(2008-01-06 19:59:45) (良:2票) |
5.《ネタバレ》 あまりに似つかわしくないランプシェードを円の動きで捉え続けるオープニング。カメラ自身も回転しながら団地を映し、バスの上から見る街並みを、丸い観覧車を、そして人物を取り囲むように映す。円は恐怖であり、穏やかさであり、輪廻であり、螺旋である。遠くから近づくバスを待つ固定ショットのコーナーにはタンポポがあったりだとか、光の配し方だとかカメラワークだとか、まるで学び始めたばかりのような厳密さがあり、洒脱さに欠け、退屈ではあるのだが、しないよりはマシというのも事実なのだから仕方がない。また小泉の二面性を表すフォークのシーンや、変化を表す「死ねよ」という言葉も私にはその裏切りの展開や方法論が何とも凡庸に感じられるのだが、何とも嬉しいことにこの作品には何とも素晴らしい「映画的帰結」が詰め込まれていた。秘密のない家族、秘密のある事実。母親の愛情不足の所為で人生が狂ったという思い込みの認識と注がれていたという事実。いま中で出して卵子に精子が届けばすぐに家族になれちゃう事実、思ったよりも簡単に気付かないところで愛は生まれているという事実。母親からの「誕生日おめでとう」の電話で思い込みから解放される小泉。ベランダに出て、血の雨を受け、浄化される小泉。泣きながら血まみれで産まれてくる赤ん坊のように、血まみれで泣き叫び、生まれる。何とも映画的ではないか。これでいいんだ。この豪腕さが、映画なのだ。 【stroheim】さん [DVD(邦画)] 7点(2006-12-29 02:21:51) (良:2票) |
4.《ネタバレ》 小泉今日子の豹変演技がやばい。団欒を学芸会と指摘されてからの声色、表情、全てがやばい。ああいう風にイライラする女の人いますよね。鳥肌が立ちました。久しぶりに見て老けた感があったけど、またそれがリアルにさせてました。ただ前半はエロ話が多すぎて引いてしまった。そういう描写が多すぎて、家族で常に下ネタ会話をしてるみたいに錯覚してしまった。していないことはないですが。。その錯覚が家族に秘密が無い事を表現しているようで、もったいないなぁと思いました。世の中エロい事ばかりじゃないですよね!!多分、、マンガちっくなセリフ(瑛太とか、クラミジアの彼女とか)を削ぎ落とせば、更に洗練されると思います。ソニンもハマッてて良かったです。 【ホーマー】さん [DVD(邦画)] 7点(2007-03-28 16:58:41) (良:1票) |
3.《ネタバレ》 淡々と正常なプラグが外れて行き、壊れていく母親。そこには何があるのだろう。強迫観念のように良き母になろうとした母親は、正しいことばかりを貫き、それでも自分の思い通りに転がってくれない他の人間(家族)に溜まっていたものを爆発させていく。隠し事を作らない家庭の中は、実際隠し事だらけ。言わなくてもいい事を話し、言わなければならないような事を隠す。嘘はない、嘘は許さない、そんな強すぎる思いやルールが家族を家族にとどめていることを難しくさせた。家族とは何でも言い合える仲である方が良いに決まっているけれど、それは「言わなければならない」状況では言いたくもなくなる。むしろ「いやなら言わなくてもいい」という状況であったほうが人は話しやすい。どこかでその境界線を見失い、思い込む。正しいことだと。そして本当に隠し事が一切なくなったとき、心にあったものをすべてさらけ出した時、家族は以前のように押さえつけるものがなくなり、自由になり、本当の家族になった。凄い映画だった。 【ボビー】さん [DVD(邦画)] 8点(2006-12-09 17:47:06) (良:1票) |
2.《ネタバレ》 飛び降りて無くてよかった----って感じですね。最後のあのタメはきつかった~もしいなかったら1点くらいですよホント。嘘偽りが全くない家族って幸せなのっていう作品ですが、最初の家族団らんのシーンと、中盤のいろいろわかって来た後の家族団らんが、全く違う印象を受けるのがスゴイ。気持ち悪い。そして一回の食事で母親の作ってきた物は壊れ、、そっからぶっ壊れる小泉今日子が怖い。スゴイ。一番良かったのはバスの中での母親抜きの会話。今までが異質だったせいか、すごい普通の家族の会話に聞こえる。良かった 【マキーナ】さん [DVD(邦画)] 8点(2006-11-23 20:07:27) (良:1票) |
1.《ネタバレ》 家族に翻弄される子供たちがいました。隠し事をしないという家族は一見理想的な家族のようにみえて、話しが進むにつれて、異常なところが露出されていく。 むしろ主役の小泉今日子よりも、子供たちのほうが、「家族ってなんだろか?」と必死になにか答えを探し出そうとしていたように思います。この家族を作り上げたのは妻役の小泉今日子。 「わたしは母親のせいで、苦しい子供時代をおくってきた。だから自分は理想の家庭を作って良い母親になろう」と考えていた。あの計画妊娠なんてスゴイですね。 それから母と娘の確執はあまりにも強烈。娘である小泉が母親に「死ねよ」という言葉でそれを表現していましたが、回想シーンでは小泉の母親が泣いていたシーンがありましたよね。母親は子供の前では泣くべきではないのです。あの母親は泣くことによって自分を守ったのは一目瞭然。本来は我が娘を守るべき母親が子供よりも自分を守ることを優先した様子に、娘である小泉は怒りに・・いや恐怖に震えたのだと思う。別にこの映画は最後に母娘を氷解させる必要などないのである。永遠に和解できないほど傷つけあった親子は実際に存在するのだから。 一般的にみても私は、母親と娘ほど親子関係で難しいものはないと思う。母が同じ同性の娘よりも異性の息子を強く愛してしまうのは仕方のないことかもしれません。もちろん母親はそのことに無自覚です。しかし愛を受ける子供は敏感にそれを感じ取っている。 通常、母から受けた仕打ちに娘は自分が母親になったとき、絶対に繰り返さないようにしようと決意する。しかしその決意はかなり高い確率で失敗する。小泉今日子はそういう難しい役を見事に演じていたと思います。 【花守湖】さん [DVD(字幕)] 9点(2006-10-09 18:44:08) (良:1票) |