《改行表示》 10.《ネタバレ》 靴、靴、靴。それに足を入れて走って走って走って大地を“蹴る”。 それがこの映画だ。 冒頭から「靴」の映画である。 壊れた靴を直してもらい、途中寄った店で靴が入っているとも知らずに持っていかれてしまう袋。それは妹の靴だった。ここから物語は始まる。 「9歳はもう子供じゃない」という生活を送るアリは、ノートによる“筆談”を経て妹ザーラに自分の靴を貸すハメになる。 妹も走って走って走り、履き替えた靴でアリもまた走って走って走って学校に行く。 たった二足の靴を兄妹で仲良く大切に洗うシーンは微笑ましい。同級生の靴を物欲しそうに見つめる妹が可愛いすぎて和む。「同情するなら靴をくれ」的な。 川に流れてしまった靴を懸命に追いかけるシーンの健気さ。 アリもまた家の手伝いや妹の靴の件もあって好きなサッカーも出来ない、家は貧乏&家賃滞納で大ピンチ、その鬱憤を学校への全力疾走にぶつけて彼は毎日市街を駆け抜ける。その走りの成果が役立つなどとアリもつゆ知らず。女子は午前で男子は午後の授業? あのお茶のポッドが欲しくなる。 父親の自転車が坂道で止まらなくなったり、用水路の予想外の水流の速さと、この映画はとにかく動いて動いて動き続ける。 アリはどんな困難も「妹の靴、そして妹のため」を思えばと乗り越える。 一等よりも三等の価値、終盤のラストスパート! スローモーションが焦らすに焦らす演出が良い。手に汗握る。 どんな結果でも、妹の喜ぶ顔が見れないと思うと哀しい表情をするアリ。 だが、アリの父ちゃんは二人を笑顔にする“とびっきりのもの”を自転車に乗せて帰ってくる。 アリの傷ついた足を水の中で優しく舐め迎え入れる金魚たちは、アリたちに訪れる幸福を予感させる。 こんな面白い映画、よく90分以内に収まったもんだ。傑作です。 【すかあふえいす】さん [DVD(字幕)] 9点(2014-10-09 19:21:25) (良:2票) |
《改行表示》 9.《ネタバレ》 デ・シーカ監督は自転車だけで「自転車泥棒」を撮りましたが、本作もたった一つの物〝靴〟だけで物語を成立させたばかりか、サスペンスも喜劇も感動も盛り込んで豊かに物語ってしまったのが凄いところです。 例えば、片方の靴が水路で流されていくシーンなど下手なサスペンス映画など比べものにならないくらいドキドキ感がありますし、3等狙いという喜劇的な制約がかかったマラソン大会ではスローモーションが始まった瞬間、これはどうあがいても3等にはなれないんだなと予感をさせ、すると懸命に走るスローモーション姿が何だか妙に可笑しくなってくるのです(頑張って走ってるんだ笑っちゃイカン)。 しかし、最も素晴らしいのは兄妹による靴のリレーで、お互いを想い、パタパタパタパタ路地裏を全力で走る姿はそれだけで感動的です。お父さんの自転車に靴が積んであった時、どれだけ〝あぁ良かったねぇ〟と思ったことか。それにあの少年の泣きそうな顔は反則だと思います。 【ミスター・グレイ】さん [ビデオ(字幕)] 9点(2009-06-23 18:33:32) (良:2票) |
8.まず出だしから最後まで兄のアリの情けない顔に釘付けでした。妹も可愛いったらない。この映画にはいわゆる悪人が出て来ない。いろいろ事情のある周りの大人もみんな優しい。子供もみんな優しい。おとぎ話の様などこか懐かしい雰囲気のする映画だ。次の展開での悪事を勘ぐる私が情けなく思えてきた、汚れたこの心が恥ずかしい。家の事情を察知してなのか叱られるのがただただ恐いのか、正直に言ってしまえばいい様な事だけど、子供にとっては大事件が起きてしまうのである。そこから奮闘し続ける兄。期待する妹。路地裏を駆け回る二人の姿が印象的。マラソンのシーンではめちゃめちゃ兄を応援してしまった。そしてあの結果。そしてあの顔である。最高でした。 【movie海馬】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2013-04-30 22:47:14) (良:1票) |
7.《ネタバレ》 やっぱり点数高いですよね、高くなりますよね、いわゆる「心温まる映画」、誰もに好かれる映画ですよね。しかし、この映画のとっつきやすさの理由として、“(我々とは別世界であるところの)リアルな貧しさ”というものがあるのなら、これは考えもの。主人公の少年が、①実際に貧しい家庭の素人役者である ②実は親父が石油王であり金で主演をもぎ取った のどちらかによっても、映画の評価や人気が微妙に影響されかねない(実際は残念なことに①らしいですが)。あと、「素晴らしいイラン映画でした。日本映画も見習うべき」などと言いきれないのは、「イランではこういう無難なテーマの映画でないとなかなか撮りにくい」ということだったりするし。あと、内容的にも、●主人公の少年を「何ら落ち度がない、とっても良い子」として描くだけなのは、いささか素朴過ぎるのではないか? ●遅刻しないように毎日走ってたら誰にも負けないくらい足が速くなりました。ってそんな強引な。それじゃ妹ちゃんも相当速くなってるのかね。●少年の1位を喜ぶ大人と、3位ではなかったことを悲しむ少年との、ギャップ。金魚たちだけが、少年を理解してくれている。しかしその一方で、少年のもうひとつの功績である、親父との新商売の開拓が実を結んで、実は親父さんが靴を買ってくれていたのでした。1位はとるし、靴はゲットするし、めでたしめでたし。って、そんな贅沢なオチでいいのか? 等々、皆さんもっとツッコんでくださいよ。いや、私はツッコミたくないんです、この映画好きですから(笑)。 【鱗歌】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2011-11-08 23:17:25) (良:1票) |
6.イラン映画、びっくりです。こんなにも良い映画を撮るとは思ってもみなかったです。物語自体はシンプルで最近のハリウッドの大作みたいに派手な映画ではないし、けどそれがこの映画の一番の良い所です。妹を思いやる兄の姿に感動致しました。 【青観】さん [映画館(字幕)] 9点(2005-07-15 21:34:25) (良:1票) |
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5.《ネタバレ》 最後、兄には真っ白の、妹には真っ赤な新しい靴をお父さんが自転車に積んで帰るシーンがちらりと映りましたね。映画では兄と妹が新しい靴を見る前で終わっており、もっと続きを見たい!と思う気持ちもありますが、その後新しい靴を見て喜ぶ二人を想像するだけでも、とてもにこやかな気分になります。劇中ではよく怒鳴っていたお父さんでしたが、靴屋の前で子供の靴を眺めるシーンや、お金持ちの家が立ち並ぶ町でアリに気遣うシーンなどを見ても、親の愛というものをひしひしと感じました。不器用そうですが、素敵なお父さんです。この映画では、子供の気持ち・視点がとてもリアルに丁寧に表現されていて、自分が子供だった頃もこういう些細なことに一喜一憂していたなと色々思い出し、童心に戻りました。子役の二人が本当に素晴らしいですね。物や人を大切にするという当然のようで忘れがちなことを再認識させられました。やさしい気持ちになれるいい映画です。 【ゼロ】さん 9点(2004-05-04 21:54:35) (良:1票) |
《改行表示》 4.兄のアリと妹のザーラが、けな気で可愛い。 その上、脚本がしっかりしていて、日常のちょっとしたことが、小さな兄と妹の二人にとってはとてつもない大事件であり大冒険に映っているという視点の見せ方が、とにかくうまい。 観客も子供たちの視点に終始置かれているので思わず手に汗を握ってしまうのだ。 クライマックスのマラソン大会の見せ方も唸ったし、最後のオチも素晴らしい。 とにかく素敵な作品だ。 【あむ】さん 9点(2004-05-02 12:38:24) (良:1票) |
3.こういう映画に感想なんて野暮な気がしちゃうけど…まず兄妹、そしてオヤジさんまでカメラの前に立った事がない素人俳優だってのが素敵。『少女ムシェット』とか『スリ』とか、ブレッソン監督モノの素人独特のピュアさを思い出しちゃいます(意識してるかもなあ)。そしてセット撮りからロケへの切り替えが素晴らしい! 絵としてはイマイチだけど、山国イランの強い日差しが日本でもないハリウッドでもない不思議なカラーを付けてくれてます(このあたりは『コーカサスの虜』を連想)。ラストのマラソンはもちろん美しいんだけど、親父と二人で自転車で外出する日曜日が最高! …ああ、やっぱり何書いても野暮になっちゃうよなあ。(2005/6/11 9点に変更) 【エスねこ】さん [映画館(字幕)] 9点(2003-06-01 02:50:41) (良:1票) |
2.いいですねー、大好きです、こういう映画。中国やイランでは作れるけど、今の日本では決して作れない・・50年代の邦画にはあったんだけどなぁー・・ボロボロの運動靴を兄と妹が交互にはいて学校に通う、けなげさにキュンとする。マラソンの商品の運動靴ほしさに頑張るお兄ちゃん、2等でなくてはいけないのに、1等になってしまう。がっかり、複雑な心境でボロ靴故に傷だらけの足を金魚のいる桶に浸す。金魚はその足をいたわるごとく、慰めるがごとく優しくつつく。泣けます・・イランの学校は男女別の2部制だったのか、とか遠くて知らない国の様子も映画を通して教えられました。 【キリコ】さん 9点(2003-05-18 16:07:41) (良:1票) |
1.すっかり破れた運動靴でも新しいものを買ってもらうのでなく、縫ってでも履きつづけるほど貧しい家族がごく自然に描かれていることや、年端もいかない頃から「お国のために云々」という教育をされていることや、兄と妹では通学の時間帯が異なること等々カルチャーショックを色々受けてまいましたが、そんな中でもやはり(当たり前だが)子供はいつでも可愛いながら、それなりに悩みを持ち、それなりに精一杯生きている、ということに「マイ・ライフ・アズ・ア・ドッグ」以来久々に痛感させられました。後半のマラソンのシーン以降はとくにその辺が良く表現されており、何ともホロ苦い気分になってしまいますが、それゆえにラストの足元にやさしく寄り添う金魚たちの美しさが際立ちます。あと、好きなシーンは妹役の子供が、自分がかつて履いていた靴を同じ学校の生徒が履いているのを発見してしまうシーン。普通だったら「それ、私の靴!」となってしまいそうなところ、その言葉をぐっとこらえて悪気が無いその子とは親しくすらなってしまうところなど本当に上手いな、と思いました。 【ダイ】さん 9点(2001-07-27 23:05:43) (良:1票) |