3.《ネタバレ》 三隅研次監督で市川雷蔵でタイトルに「剣」とあれば、昔の邦画が好きな方なら誰しも時代劇だと想像することであろう!ところがこれは完全な現代劇、それも今に通じる男と女の愛というものが描かれている。市川雷蔵演じる主人公の真っ直ぐな性格、タイトル通り「剣」の道、一筋に生きる男、そして、そんな男を僻む男と慕う男がそれぞれいて、更に女が絡んでくる。出演者の顔ぶれといい、まるで増村保造監督の映画でも見ているような感覚に陥る。市川雷蔵は勿論のこと、市川雷蔵に対して僻む男の見苦しさ、女から見たらこういう僻みぽい男はどうしようもない男にしか映らないはずですの川津祐介(増村監督の「赤い天使」に出演)とは正反対な男の長谷川明男にしても増村作品「刺青」に出演など、どう観ても増村作品としか思えない顔ぶれと内容である。男のだらしなさと女の強さ、男の不器用さと女の起用さ、女は男以上に愛する者の為なら自分を犠牲にしてまで嘘を付く。正しくこの男と女の画き方などどう考えても増村映画としてか思えない。市川雷蔵、川津祐介、長谷川明男の共通点はいずれも増村映画の中で若尾文子と競演している。また、ここのキャストの所には名前がないけど高見国一(あの坊主頭の少年、川島雄三監督の「雁の寺」「女は二度生まれる」で若尾文子と競演!観てる人なら解ると思うが「雁の寺」の慈念です。といい、出ている人達がいずれも若尾文子と競演しているという点についても興味深い。とにかく作品の雰囲気から何まで三隅研次作品てよりは明らかに増村保造作品でして、あのモノクロによるシャープな映像、腕立てのシーンの本人のカメラ視線で地面に落ちる汗、何とも大胆なこの構図に眼を奪われた。市川雷蔵の学生服姿が全くもって違和感のないのにはびっくりさせられたし、現代劇を演じてもその役に徹しきり、観ていても何一つ違和感の与えないところは本当に凄い。最後に市川雷蔵演じた国分という男はどうやら原作者三島由紀夫そのものらしいけど市川雷蔵のあの死に様は何だか三島由紀夫という人の男にしか理解出来ない何とも哀しい人間の切なさが現れているようでもある。 【青観】さん [ビデオ(邦画)] 7点(2008-06-21 16:29:01) (良:1票) |