4.《ネタバレ》 高峰秀子演じる林芙美子は、嫌な女だ。ブスだけど妙にたくましくずる賢い。自分を慕ってくれるまじめな男など目にくれず、ハンサムだが中身の乏しい男に身も心も捧げてしまう。金のためなら変顔など厭わず奇妙な踊りもこなし、ライバルを蹴落とすためなら汚い手段をしても何食わぬ顔だ。成人したばかりの自分が見たら、一発で嫌いになるタイプである。でも何故だろう、人生半分に差し掛かった今はこんな嫌な女が妙に愛おしく見えてしまう。多くの人間が持っている嫌な部分を正直に表し、貧乏で泥臭く生きる姿についつい共感してしまうのだろうか。この女の逞しさは、羨ましいぐらいだ。「このままじゃ終わらないよ」と言ってるシーンは、両目がメラメラと燃えているようだった。「二十四の瞳」で天女のような大石先生を演じた高峰秀子が、この映画を気に入っていたのは彼女の優れたエッセーを読むと何となくだが、わかるような気がする。やっぱり高峰秀子は、凄い女優だわ。 【パオ吉】さん [DVD(邦画)] 9点(2011-02-13 03:08:40) (良:2票) |
3.色々なインタビューで、成瀬監督と高峰秀子自身が数有るコンビ作の中でこれが一番気に入ってる作品という記事を読んでいたので、どうしても観たかった作品。でも残念ながら「乱れ雲」と同じく、これもプリントの保存状態が非常に悪く、画面も色褪せセリフも飛びまくりで最悪の鑑賞環境でした。DVDやBS放映だとカラーが鮮やかに保存された状態で観る事が可能なんでしょうか?だとしたら、わざわざ交通費使って映画館まで行くのが馬鹿馬鹿しくなっちゃいますよね。こっちはどうしても観たい映画だから、大画面で観たいなあって思って出掛けてるのに・・・。最悪の環境ながらも、高峰秀子の役作りの上手さ、決して聖人君子扱いにはしていない、人間臭い狡猾な面も持つ林芙美子の人物像が面白く描かれていて自分は面白かったです。自身の目的の為には、ライバルから預かった原稿をゴミ箱に捨てちゃったりもするんですよ、この女はW。なんとなく解るなあ、二人がこれ一番に挙げたいって気持ち。でも完成度としては「稲妻」や「浮雲」あたりに軍配上げます!(→浅草東宝のオールナイト上映にて) 【放浪紳士チャーリー】さん [映画館(吹替)] 5点(2005-10-16 12:41:15) (良:2票) |
2.ほう、これってなるほど、実在の人物の伝記ものだったんですね。こういう題材でも成瀬巳喜男という監督さんは手堅くまとめて見せていて、関心させられる反面、何か自分としてはそれほど好きにはなれない。高峰秀子の芸の上手さはお見事だし、男優陣にしても加東大介、伊藤雄之助に小林桂樹ととても良い人柄で救われる作品にはなってるし、それでも何か違うんだなあ!けして、つまらなくはないのだが、これよりももっともっと良いのがこの監督の映画にはあるはずです。放浪紳士チャーリーさんの意見に同意!成瀬巳喜男監督と高峰秀子のコンビでは個人的には「稲妻」がベストだと思ってます。因みに「流れる」はまだ見てない。いや、一緒に借りてきたからまた明日見ようとは思うけど、今の所見た中では「稲妻」が成瀬巳喜男&高峰秀子のコンビではベストワンです。 【青観】さん [DVD(邦画)] 6点(2007-11-24 20:01:54) (良:1票) |
1.成瀬作品としてより、原作者林芙美子の生き様に感じるものがありました。47年の生涯だったが、自由奔放に生きたけれど、愛に縁の無い貧困と孤独の戦いの日々だったようだ。放浪者という立場は自由で束縛されない反面、安定した安らぎがない。彼女の場合は、運命に身を任せるのではなく、必死に戦いながらの放浪である。花のいのちはみじかくて、苦しきことのみ多かりき。高峰秀子のしゃべり方が上手いですね。置かれた状況を冷静に分析しつつ、自分の気持ちを伝える様子が、まさに女流作家だ。つまりは成瀬が上手いと言うことか。 【パセリセージ】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2005-10-11 19:02:20) (良:1票) |