3.《ネタバレ》 始まりがあまりにほのぼのしてるので不安になったけど、裁判に差し掛かってからは目が離せない。トリックについてはクリスティの某代表作の変奏曲といった感じで、みせ方ひとつでこうも変わるものかと感心させられた。大胆なミスディレクション(誤導)の名手として知られるクリスティだが、この結末の二重の裏切りは大したもの。第一のどんでん返しに観る側の注意をひきつけておいて、まったく違った方向での第二のどんでん返しが待ち受ける。右手で殴るぞと威されたから左手のパンチを警戒していたら、予想通り左からきたけど、最後の回し蹴りはもろに喰らってしまった、というか。
また、クリスティが確かな仕事をしているのはもちろんだけど、秀逸なプロットを人間味あふれるユーモアで包みこんだビリー・ワイルダーの功労も絶大なものがある。弁護士と看護婦とのやりとりがなければ、ここまで魅力的な映画になってないだろう。
ただ、このサイトでここまで高評価を獲得しているのにはちょっとびっくりした。確かに面白いけど、そこまでずば抜けた感動があったとは思わない。とても意地の悪いいい方をすれば、とりたてて欠点はない代わりに絶大な感動もない、優等生的な作品だ。平均点は高くなるけど、誰かにとっての宝物的な映画になることはあまりないんじゃないだろうか。いや、いい作品なのは確かなんだけど。 【no one】さん [ビデオ(字幕)] 8点(2007-11-05 01:34:51) (良:1票) |