10.これは、ある意味レビュワーの踏み絵みたいな作品ですね。ほとんどの人が、観る前にこの作品の評価、知識、解説を十分過ぎるほど知りながら鑑賞していると思うんですよ。その結果、どう感じようと、誰もが認める傑作にケチなんか付けられなくなる人がでてきますよね。映画通を自称している人ほど、その傾向が強いんじゃないかな。映画がわかる人は、低い点は付けないと思うんでしょうね。素直な人は、9点とか8点とか感じたまま付けるでしょうが、映画通の優良レビュワーと思われてる(と自分は思っている。)連中ほど、何が何でも10点付けてますよ、きっと。 【パセリセージ】さん 10点(2004-08-13 17:39:32) (良:3票)(笑:5票) |
9.天邪鬼な私としては、誉めなきゃいけない義務感に負けたような気がして非常に悔しいところなのだが、正直、この作品にはごめんなさいと言おう。負けました。確かに傑作だと思います。何しろ映像が恐ろしいくらい凄い。この作品が1941年に撮られたということを抜きにして考えても、やっぱりこれは凄い。ということは、1941年に撮られたということを考慮に入れたらもう、想像を絶するくらい凄い。綺麗なパンフォーカス。白い壁。薄靄の中に佇む豪邸。何もかもが凄い。決して観客に媚びず、着いて来たい者だけ来なさい、というスタンスで物語を運びながら、嫌でも食いついて行かされてしまうストーリーも凄い。こういうエネルギーって、傑作と言われる作品を観ていても滅多に感じられるものではない。あまりにも多くの人から、長い間傑作と絶賛され続けている作品。こういう作品を誉めることはまったく本意ではないのだが、いかに天邪鬼な私でも、この作品に意地悪なツッコミを入れられる余地が全然見つけられないのは悔しさの極みでもある。でも凄い。「完璧な映画」はあり得ないというのが私の持論であるが、この映画は少なくともそれに限りなく近いと言えるだけのものは持っている。映画を発明した人々がこの作品を観たら、自分たちの仕事には間違いなく意義があったと、きっと泣いて喜ぶだろう。この作品のためだけにでも、映画は存在した価値がある。 【anemone】さん 10点(2003-12-20 02:30:20) (良:2票) |
8.《ネタバレ》 完璧な、ザ・映画、です。これぞ映画、ってやつです。場面の構図、入れ替わる時間軸で進んでゆく展開、一人の男の浮き沈み人生に見る悲哀共感同情という王道的ストーリー。すべて揃って完璧。とりわけカメラワーク、構図、絵コンテなどは、当時にしたら発明的だったんだろうと想像します。手塚治虫や萩尾望都などコマ割りが発明的なのと同じ様に(漫画は詳しくないので、見当違いだったらすいません)。モノクロなのでやや分かりにくい所もあり、ラストシーンのRosebudも、一瞬では何?ってなるのですが、そういうのも含めて、技術的限界がある中で、ここまでの物を作る事がまず凄い。たくさんの工夫が込められています。一つの謎ワードでサスペンス感を煽っておいて、実は男の人生が悲しいものだったという告白で終わる。それを取材する記者の顔が見えないのはストーリーテラーだから。とてもシンプルで感動的な作りの完璧な名作です。そして単純に疑問なのは、モノクロ映画って当時の映画人はどう感じていたのだろう。衣装や小道具などその色をそのまま伝えることが出来ないわけだから、そこへのこだわりはカラーのものと違うはずだし、そこには何のジレンマもなかったのだろうか。ただ、漫画、コミックにも今だに色がなくても読者は不便を感じないのと同じ様に、そこに色がなくても想像力の翼がそれを補足していたのでしょう(漫画のことは詳しくないのですが )。ここのレビューが立ち上がってから更に20年以上が経ち、その頃の60年前の作品が80年前の映画になった今、その間の20年の間にも、映像技術は驚くほど進み、ストーリーもネタ切れしないのが不思議なくらい出尽くしていますが、その中でも元祖映画、ザ・映画。素晴らしい物を残してくれてありがとうございます。 【ちゃか】さん [インターネット(字幕)] 10点(2023-01-22 16:00:27) (良:1票) |
7.つまらなかったです。ただ、よく言われてることですが、これは映画の教科書と言えます。だから10点です。つまらなかったですけど。さまざまな撮影技法や演出が効果的に、ふんだんに盛り込まれています。だから10点です。つまらなかったですけど。この映画を見れば、映画の楽しみ方の幅が広がると思います。だから10点です。つまらなかったですけど。内容や面白いかどうかは抜きにして、映像表現が優れた映画は高く評価したいと個人的には思っています。だから10点です。つまらなかったですけど。受け売りで言っているのではありません。そういう映画だからそうとしか言いようがないのです。だから10点です。つまらなかったですけど。 【エウロパ】さん [DVD(字幕)] 10点(2013-10-23 18:49:09) (良:1票) |
6.《ネタバレ》 数々のオールタイムベストで1位を獲得し、歴史上最高の映画と評されることも多い。そんなハードルが超上がっている状態で鑑賞したのですが、噂に違わず最高の映画と心底思いました。数多の映画監督が本作に心酔しているのも頷けます。何故ならこの映画は無茶苦茶な映画テクニックの博覧会であるからです。具体的に言うと"長回し","クレーンショットでの極端なクローズアップ(からの引き)","パン・フォーカス","フィルムノワールの様な極端な光と影"等々。 "長回し"ではケーン、ケーン夫人、スーザン、ゲディズの四者がケーンのスキャンダルについて口論となるシーンが素晴らしい。非常に長い台詞の応酬が延々と続くのに全然カットは切り替わらない。だから観ていて居心地が悪く、緊張感がある。カットが切り替わらないから観客が一息つく暇がないからです。 "クローズアップ"ではスーザンが歌っている劇場の撮影が矢張り白眉でしょう。劇場の看板からカメラが看板の隙を通り抜けて劇場の天井にまで達し中を覗き込む。クレーンを使った驚異的なクローズアップです。 "パン・フォーカス"ではケーンが劇批評を書くリーランドの部屋に乗り込む場面。ケーンがカメラの前から画面の非常に奥に写っている部屋の扉を開けるまでをパン・フォーカスで撮っている。観客は自身でケーンの姿を追うことになる。カメラがスライドするわけでは無い。 そして"光と影の使い方"。画面を光で斜めに切り取ってみたり、顔を執拗に影で隠したり、ハッキリ言って無茶苦茶な影の使い方。それが狂言回しの記者の顔を隠し、ケーンの人生を追う記者は観客自身であると考えさせるためという演出に上手く繋がっている点も素晴らしい。 それらのテクニックは実に的確な分量で盛り込まれており、完全に物語と調和している。最後まで孤独の人だったケーンの人生を記者の取材形式でリアルに見せていることも特筆に値します。驚く程に見事な作品だったと評価するしかありません。 【民朗】さん [DVD(字幕)] 10点(2013-01-20 17:55:17) (良:1票) |
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5.この映画にまつわる本を読んでみたら、びっくり、この映画で描かれる新聞王の話は実話やけど、その実話の男が唯一愛した妾(もちろん劇中のあのお人)のあそこを「バラの蕾」と呼んでいるってのを聞きつけて、それを茶化してオーソン・ウェルズが作った映画とか。おかげでウェルズはその新聞王の怒りをかい、その後かなりの妨害工作をうけたとか。これがほんまの話かどーかはわからんけど、そー思ってまた見たら、なんかまた新鮮に思えてしまった。色々な意味で楽しめる映画やね。そーゆうのってなんか好き。 【なにわ君】さん 10点(2004-05-17 00:48:45) (良:1票) |
4.リーランドが記者に語る「彼は何時も愛を欲しがっていた、何をするにも愛欲しさだ、自分は持っていないから人には与えられない、自分自身はとても愛していた」という言葉。リーランドがケーンに向かって「愛を施してやっていると思う者が権利を主張し始めたら君は我慢がならない、愛してやるから愛し返せというのが君のやりかただ」という言葉。私事だけれど、自分が子育てに迷う時、家族が嫌になってどこかへ行ってしまいたいと思うときに、何時もこれらの言葉を思い返して頭を冷やしている。自分にとって一生忘れる事がない映画。 |
3.《ネタバレ》 すべてを手に入れ、そして失った新聞王が、(失ったことを)いちばん惜しんだものが最後でわかる展開。人間どう生きるべきか、をそれとなく教えてくれる作品。「謎が解けるのはいまか、いまか」とハラハラさせる展開もすごいけど、ジャーナリズムへの勇気ある批判も素晴らしい。(主人公の)最期の言葉をネタにしてセンセーショナルな記事を書こうとする記者に、「人間の人生はジグソーパズル。最期の一言だけで彼の一生を表現するなんてムリだ」と諭すシーン・・・。イェロージャーナリズム批判と、独自の人生論を同時に展開してのけるという、オーソンウェルズの技量の高さがわかる。好きになるかはともかく、傑作であることは間違いない。 【九寨溝】さん [映画館(字幕)] 10点(2003-12-25 23:16:41) (良:1票) |
2.ふふん♪君たち「つぼみ」って漢字でどう書くか知ってる?「くさかんむりにかみなり」で「蕾」なのさっ!じゃあ「バラ」は?よ、よく分からないけど…兎に角コレで「薔薇」さっ!二つ合わせて「薔薇の蕾」だ。さあ!俺(私)、漢字で書けるぜ(わ)!って皆に自慢しまくろう!!更にだ。「つぼみ」って英語でどう書くか分かる??正解は”bud”!「ばらのつぼみ」なら”rose bud”だ!!さあ!したり顔でスラスラと、しかも筆記体で書きまくっちゃえ~!!もし嫌われても責任は持てないが。色々ためになる本作には十点満点で報いたいぞと。 【へちょちょ】さん 10点(2003-12-20 03:49:23) (笑:1票) |
1.パンフォーカス撮影、ローアングル撮影、長いカット割などこの映画で取り入れられた技法は後々の映画界にとって意義のあるものである。回想と現在が入り乱れてケーンの真実が段々浮き彫りになるという演出も見ごたえ十分。内容としてはトンプソンという記者がケーンの最後に残した言葉「薔薇の蕾」の謎を解くべくケーンを調べる、栄華を極めたケーンではあったが彼は孤独な人物であった、何故そうなったのか、と段々ケーンの真実が明らかになっていく。しかし記者は最後までその謎を解くことができない。しかし、観客はラストにその意味を知ることとなる。オーソンウェルズは物語の進行を記者では無く、観ている観客に訴えかける手法を取った、これもまた見所の一つ。そしてまた事実は小説より奇なり、とも良く言ったものだ。彼の作ったこの映画は当時新聞王だったハーストをモデルにしている。「薔薇の蕾」というのもハーストが飼っていた犬の名前からきている。この映画に反発を持ったハーストとオーソンウェルズの現実での争いというのも実は映画になるような凄いものであった。一説によるとその影響もあり、この映画はオスカーを逃したとも言われている。そしてここのレビューを見て私が思ったことは、どうして「薔薇の蕾」がケーンが幼少のころの母親との思い出の橇に付いてたマークだといういうことに気づかない人がいるのか、映画の内容を理解していない人が多いということ。彼は孤独を愛していた訳ではない、孤独になってしまったのだ。記者トンプソンが彼の何を探そうとしていたか、彼の実像を探していたのだ、それをトンプソンは最後まで知ることなく観客だけに知らせる。その演出が分からない人がいることが凄く私には残念に思う。 【恥部@研】さん 10点(2002-12-20 11:47:13) (良:1票) |