4.たしかに眠気を誘うほどに静かで淡々とした映画ですが、私は眠たくならなかった。それどころか最初からずっとドキドキしっぱなし。この男、いったい何考えてんだろう?怒りだすんじゃないだろうか、今度は何言い出すんだ?って感じで。けして内面を見せようとしない展開で見る者を釘付けにする演出が絶妙。主人公は自殺をしようとしている。しかしその理由は語られない。語る必要もない。自殺の理由はいくらでも作り出せます。誰もが持っています。だからこの映画は、自殺を思いとどませるのに自殺の理由=原因を解決するのではなく、生きる理由を模索する。美しい空、冷たい水、おいしい桜桃、そして人との関わり、そのひとつひとつが十分、生を見出す理由になる。ラストはびっくりしました。映画はもう終わりましたと我々に言っている。主人公がはたして生を見出したのかどうかは見せずに。主人公は生を見出し、朝を迎えてほしいと観客に思わせたところで、もうこの作品は全てを伝えた、、、そういう意味かもしれない。 【R&A】さん 7点(2004-12-21 12:58:14) (良:3票) |
3.ネタバレ 荒れ地に伸びる未舗装の道路を進む車。ほとんど同じような情景しか出てこない映画なので、人によっては死ぬほど退屈な作品だろうと思う。でも、どこまでも乾ききった風景と主人公の心がシンクロするような演出に私は何故か冒頭からはまってしまって、最後まで目が離せず一気に見た。おお、なかなか面白かったぞ、と腑に落ちたところであえて不要と思わせるシーンを入れているのは、「はいはい、これは映画ですよー」という宗教的なエクスキューズなのだろうか。最後の最後でノンフィクション的に異文化を思い知るという一粒で二度美味しい(?)作品。 【lady wolf】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2010-07-11 00:12:32) (良:1票) |
2.他人に相談をする人がいますが、私にしてみたらそういう方は既に自分なりの答えを持っており、自分の望む答えを出してくれる人を見つけて背中を押して欲しいだけと思っております。すぐに土をかけてくれる人が見つかっても本当に自殺したのだろうか?彼の本心は自殺などする気は無いのです。ジハードのため戦う兵士、神学生、イスラムの教えに忠実なものを選べば自殺を止めてくれる筈。鳥の命を奪い剥製にする老人、理由はあれど命を奪う事に抵抗を感じない人間が語る言葉こそが現実感を持った言葉となり、自殺をしたくないという彼の本心に届き背中を押す。自殺はしたくないと心は決まっていても自分なりの納得できる落とし前が必要だったのでしょう。 【亜流派 十五郎】さん [ビデオ(字幕)] 7点(2006-01-01 21:12:24) (良:1票) |
1.人がまだ余りある命を無駄にしようと決心する形は、大きく分けて2つかも知れない。
一つは、自らの命と引き換えに、何かを守るとき。
一つは、漠然とした死への理想像を描いてしまった時。
本作は、後者だろうと感じた。主人公は何か、切っ掛け(原因)があったにしても『死の幻想』に愚かにも憧れてしまった...そう感じる。証拠に、自殺の手助けを他人へ求めている。同時に、この作品は死への渇望も、ましてや生への羨望も無い。“死”自体に意味など無い。意味を求めていたとしても、彼は彷徨う内に其れを失っている。ただ、死ぬ為だけに、死ぬ場所を探して足を前に進めるだけだ。
甘やかな死に魅入られていたとしても、そんな物は単なる“幻想”でしかない…監督はそう伝えたいのか?それとも、“生”は人生の足枷だとでも言いたいのか…。 一つの生命として、この世に存在し始めたときから、人間は(人に限らず…)絶えず彼岸に向かいながら、此岸の営みにいるのであって、その中の少数が終焉を迎えるまでのプロセスをとばし『死』をクローズアップして見てしまうのも不思議ではない。その少数派の1人を主人公にしたに過ぎない作品。
深くて、軽薄な甘美さを、逡巡する主人公の行動と乾いた埃っぽい映像に載せて、私たちに届ける作品だった。 【MAZE】さん 7点(2004-06-14 00:19:16) (良:1票) |