5.《ネタバレ》 ポイントは顔の描写。序盤多用されるのは横顔の画。例えば宮崎姉。観客が見るのは、ほとんど彼女の横顔です。そこから見えない部分を想像するしかない。それは反対側の顔であり、正面の顔、そして心の顔。大切な人を失って少し増えた笑顔の理由を、私たちは想像するしかありません。瑛太の場合も同じ。彼の描写もほとんどが横顔です。横顔は、すなわちその人の半分。見せない部分がある。そこに心の壁を感じます。この2人と宮崎は少し違う。彼女も2人同様に横顔が多いものの、正面の顔を幾つか見せてくれます。半分ではなく全部をさらけ出している。その分彼女は少し強い。表情から読みとる彼女の心。口には出さなくても、彼女の振る舞いや眼差しから想いは伝わります。西島の場合も同じ。野波を助けたときの、加瀬に対する哀れみの気持ち。その想いは伝わってしまった。このときの彼は正面の顔です。大人になって強くなったということ。ただ、結果的に悲劇を呼ぶことになってしまいます。伝えたいのに、伝えられない気持ちもあれば、その気が無いのに伝わってしまう想いもある。なんて面倒なのでしょう。だからこそ、声に出して伝えることに意味がある。長い歳月をかけてやっと言えた言葉が、胸を突きます。それを口にしたのは永作。やはり女のほうが強い。“想い”に形はありません。色も匂いも質量もない。あやふやなものを頼りに、人は生きている。そんな曖昧な存在に形を与え、ときに色や匂い、重さを与えるのが言葉なのかもしれません。「好きだ、」はやっと辿りついた言葉。そしてそこから始まる。 【目隠シスト】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2007-07-03 18:51:00) (良:3票) |
《改行表示》 4.《ネタバレ》 我々の日常生活にはBGMなどないし、芝居のような会話もない(話すのは差しさわりの無い程度のどうでもいい事ばかり)。好きな人がいても「好きだ」なんて酔っ払った時か、余程切羽つまらなければ言う事が無い。目の前に一本道があるのに、あえて回り道を選択してしまうような恋愛しか出来ない・・・・・。そんなリアルな世界を描いている作品です(17歳と34歳のキャスティングも見事です。)。静かでシンプルな作品なんですが、生々しさすら感じました。 ただ、「不幸」のトッピングがちょっと余計な気がしました。 【TM】さん [DVD(邦画)] 7点(2007-03-27 18:12:26) (良:2票) |
3.《ネタバレ》 すっぽり空いた17年。17歳のときの説明不足を十分埋める宮崎あおいの絶妙の表情変化。これは自らの心と思い出を投影して見る映画。面白さは見る側の能力と体調に依存する。一人で電車に乗っているとき周囲の人の仕草や表情からいろんなものを感じ取っている、そんな人なら間違いなく楽しめる。 【鈴木】さん [映画館(邦画)] 9点(2006-05-06 06:09:28) (良:2票) |
《改行表示》 2.忘れかけていたもの、何か心にひっかかっていたものを思い出させてくれるような作品。 考えてみれば人の心の動きは、自分では気付いていないだけで誰でも行ったり来たりの繰り返しをしている訳で、この作品の極端にゆったりとした流れは至極当然のものとも思えます。もどかしすぎるような登場人物の行動も、誰しもが経験したことのある葛藤を客観視すればこうなってしまうのではと。 郷里の空を流れる雲や川のせせらぎも、そんな心の動きとシンクロしているように感じられ、かつては都会にもそんな時間の流れがあったような気がします。 少し違和感があるとすれば、17年後の東京でも二人の間に同じ時間の流れが続いていること。二人を取り巻く世界にも同じ時間が流れて見えること。登場人物の主観に基づいた構成だから、これはこれでいいのかな? それと、すごく心地よい時間を過ごせる作品ですけれど、盛り込まれている二つの事件は、もう少し形を変えた方がいいんじゃないかな?アクセントとしては強すぎる気がしないでもないです。 【タコ太(ぺいぺい)】さん [DVD(邦画)] 7点(2009-05-18 02:07:52) (良:1票) |
《改行表示》 1.どこまでも内気で繊細な二人の男女が、17年の歳月を経て各々の想いを紡ぎだしていく。 下手を打てば、なんともまどろっこしくて、「うだうだやってんじゃねーよ」と言いたくなるかもしれない物語である。が、独特の空気感を持った長回しと、登場人物のキャラクターそのままに映像の中に息づく役者たちの表現力で、ただただすっぽりと包み込まれる。 劇的に何かがどうなるという映画ではない。言葉で説明してしまえば、至極単純なものになるだろう。 でも、映像から伝わってくる“想い”には、奥ゆかしさがある。 どんなときも、「想い」を想いのまま伝えることができれば、それにこしたことはない。でも、人間なかなかそういうわけにもいかない。そして、そういうことを経るからこそ、深まる「想い」もある。 一音一音を確かめるようなギターの音色に乗せて、そういう人間の、ある部分において愚かで、ある部分において幸福な微妙な感情を、冷たく吹き抜ける風のように繊細に描く映画だった。 【鉄腕麗人】さん [DVD(邦画)] 8点(2006-10-09 09:10:39) (良:1票) |