5.《ネタバレ》 アメリカ視点での硫黄島。たまたま写真に写ってしまったがために意図せず英雄に仕立て上げられた兵士たち。戦争は英雄を必要とするのだろうが、英雄なんていないのである。ただ、そこにいる一人一人の平凡な人間が、見えない力によって翻弄され、人生を振り回される。そのことを嫌が応にも訴えかけてくる作品である。 【いっちぃ】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2020-11-25 00:48:05) (良:1票) |
4.普通はこちらのほうを先に観るようだが、日本人であれば先に「硫黄島」を観てからこちらを観たほうが、自国側そしてそのいわば舞台裏(アメリカ側)という意味でしっくりくるような気がする。そして兵士の葛藤や、イーストウッドの扱う「死」、それも単なる死ではなく、「生」の下に埋もれる無数の死を描く本作は見ごたえがあった。ハリボテの山に星条旗を立てる、というこの上ない茶番の際に三人がフラッシュバックとして死を思い出すのは偶然ではない。どんな茶番であれ、生きていることは無数の死体を土台とするのだという教訓の象徴としてあのシーンは存在する。逆に言えば、生を規定しているのは過去の死であり、それは誰も覆すことはできない。「英雄なんていない」というセリフを、「硫黄島」に当てはめるならば「英霊なんていない」とするのがぴったりであるし、そうすることがイーストウッドのしたかったことであろうと思う。 【Balrog】さん [DVD(字幕)] 8点(2011-05-19 00:08:57) (良:1票) |
《改行表示》 3.《ネタバレ》 硫黄島の方でも述べましたが作成意図が何にも勝ると自分は考えるので、 どういう理由でこの作品を作ったか?を考えると賞賛に値する事は自分の中では多くを占めています。 だから映画的興味よりも主人公たちの苦悩を通して映る真実と時代に大きい価値を感じます。表現方法も無理に戦争映画にせずにドキュメンタリー番組のように淡々と時間を行き来しながら進んでゆく。この映画を観てアメリカが愚かだと感じた人は逆に日本も愚かであった事を硫黄島からの手紙を観て感じて欲しい。 双方に真理と真実がありそういう過去があっての現在であるのであれば、人類はそうやって学んで私たちは過去をそう感じることができるようになったのではないだろうか。 硫黄島と星条旗の映画の温度の違いはそのまま日米の違いと言えると思った。 どちらもそのとおりでその違いについて比較しても仕方が無いと感じました。 星条旗は1つのモチーフであってちょっと戦争自体の大きさからすると映画としてはそれを通して見せる(戦争)部分に短編ドキュメンタリーのようなちぐはぐ感はある気がする。 【森のpoohさん】さん [DVD(字幕)] 8点(2007-06-26 01:06:27) (良:1票) |
2.イーストウッドの映画には常にイーストウッドがいた。本人が出ていなくても彼の分身がいた。前作『ミリオンダラー・ベイビー』のレビューで私は「イーストウッドはどこに行くのだろう」と書いた。現実に打ちのめされたアウトローはどこに行くのだろうと。彼は帰ってこなかった。この映画にイーストウッドはいない。それは私がずっと望んでいたことでもあった。だから作品の内容とは別のところでこのイーストウッドの到達点に感無量になった。しかし同時に寂しくもあった。この作品は英雄を否定する。英雄は作られる。映画のヒーローもまた作り物なのである。映画が現実味を帯びるにしたがいヒーローはヒーローとして存在しにくくなり、もはやイーストウッドもイーストウッドの分身も入る余地がなくなってしまった。何度も言うがそれは私が望んだものであったはずなのにとてつもなく悲しいことのように思えてならない。英雄の否定は戦争を題材としているからであって、イーストウッドの不在は偶然なのかもしれないけど、これまでの彼の映画の軌跡からするとやはり、ひとつの到達点と考えるのが自然だと思う。私の心境は複雑です。 イーストウッドの新しい映画を拍手をもって歓迎すると同時にイーストウッドの帰還を待ち望む自分がいる。 【R&A】さん [映画館(字幕)] 8点(2006-12-11 13:01:32) (良:1票) |
1.《ネタバレ》 スピルバーグが資金集め協力したのよくわかりますね、戦争遂行のために利用される兵士の物語ですから。イーストウッドは、運命に翻弄される市井の人描くのが執念になっちゃってるみたい。たぶん原作の流れに則って、また戦史でもあり、時間の移動を除いてシナリオを極端にいじくれない制約があるはずですから、登場人物への感情移入を期待しちゃいけません。ただ「日本軍は必ずバンザイ突撃をかけてくる」という内容の台詞をどこかに挿入しておいてほしかったです。それまでの日本軍の戦い方を説明してくれるし、硫黄島の戦いがどんなに特異だったのかが第1部の段階で理解できます。それに塹壕内の暑さを現すシーンもほしかった。米軍側が感じた驚きと恐怖を散りばめておくことで第2部で腑に落ちる、ってこともあるわけですから。語り部役を絞って端的に語ったシナリオだったら良かったかな。戦闘シーンの凄まじさはライアン二等兵のほうが凄かったです。ま、戦線の組み立てかたが違うので比較してはいけないでしょう。たぶん、12月公開の第2部とセットで語るべき作品です。未公開の「硫黄島からの手紙」予告編が最後についてますので、エンドロールで立っちゃう人は我慢がまん。得点は現時点でのもので、後に変更する可能性もあり。しかし、アメリカ白人が監督する日本の戦史って観るのが怖い、米軍での栗林中将の評価は異常に高いらしいですし、大日本帝国軍人らしくない戦いを繰り広げたわけですから。 この戦闘が東京大空襲に直結し、原爆投下への布石になったことも匂わせてくれれば言うことなかったんだけど… 〈追記12/11〉必ず2作品セットで観るべきです。ということで2点加点。 【shintax】さん [映画館(字幕)] 8点(2006-11-01 16:29:46) (良:1票) |