13.感想を書く前にまず、かつての敵国の人間にこのような映画を撮られてしまったことについて、日本の映画関係者が何を思ったのかを知りたい。切歯扼腕しただろうか。それとも、“アメリカの資本で、しかも監督がイーストウッドだからしょうがない…”と諦めに近い気持ちで本作を眺めただろうか。まあ、おそらくどちらかになるだろうが、私みたいな無責任で偏屈な一鑑賞者としては、実はどっちも許せないのである。つまり、本作のような“逆輸入邦画”、それも我々日本人が何にもましてそれなりの金額を投じ、時間をかけ、かつ慎重に作り上げなければならないものを今までなおざりにしてきた事実という罪(あえて罪と言う)を日本映画界は犯したということ、それがとても残念でなりません。TVドラマの延長のごとき軽佻浮薄な作品を垂れ流してきたバチが当たったのではないでしょうか。いろんな意味であらゆる日本人が襟を正して観るべき映画だと思うし、細かいディテールがなってないなど、おのずと評価は分かれようとも、日本人という異文化民族に対するエキゾティックな先入観をできる限り排して作られたこのハリウッド映画を、今度は我々自身が真正面から受け止めなければならない、とも思います。栗林中将の「自分たちのこの戦いを、後世の日本人は必ずや評価してくれるだろう」の台詞が重く、そして痛い。その通り。栗林さん、あなたの言葉は間違っていなかった。ただ、そのことをアメリカに教えられるとは考えもしなかったでしょうけど。 【Roxy】さん [映画館(字幕)] 8点(2006-12-29 19:06:46) (良:1票) |
12.「明日の午前中、用があるので半休ください。」そう言って、会社サボって見に行ったんだけど、この映画にはまいった。名作か駄作かと言う前に、泣けて、泣けて仕方がなかったのだ。二宮の演技が話題だが、その戦友のおっさんや栗林の副官から、ちょい役の国防婦人会のおばさんまで、どの役者の演技もすばらしかった。この映画の主役は渡辺謙ということなのだろうが、実は彼も助演男優で、本当の主役はあの島で戦った英霊達なのだろうな。映画が終わって外へ出てからも、涙が出てきてしまい、会社に行くに行けず、近くをしばらく歩き回っていた。 【駆けてゆく雲】さん [映画館(字幕)] 9点(2006-12-27 21:50:46) (良:1票) |
11.けなすところが全く見つからない。戦争映画から爽快感を全く抜いて、悲壮感だけを全面的に押し出した結果、とてつもなく素晴らしい映画に仕上がった。しかもその悲壮感の押し出し方が全然わざとらしくない。純粋に戦争の悲惨さを画面から伝えている。なおかつ、実はこの映画は具体的な台詞による「反戦」のメッセージは皆無だ。しかし、画面からしっかりとそのメッセージが伝わってくる。これが本当の意味での映画なのではなかろうか。それにしても、この映画、本当に外国人が作ったのだろうか?それさえも疑いたくなるほど、日本の心情をよく描き出している。それにしても、「ローレライ」や「男たちの大和」でもとても描けなかった「靖国」やら「天皇万歳」やらをキチンと描いたクリント・イーストウッドの姿勢には、しっかりとこの映画に対する真摯な姿勢が感じられる。私は昨今の靖国問題に対するコメントは控えるが、この作品がわが国が抱えている周辺情勢の解決に一役買うことが出来るのであれば、なお素晴らしいことではなかろうか。皮肉なのは、この作品が日本人の手で作られなかったことだ。是非日本の映画人も、この作品を見て、いろいろなことを学んで頂きたい。まだまだ、伝えるべきことはあるはずだ。 【ドラりん】さん [映画館(字幕)] 10点(2006-12-20 01:38:22) (良:1票) |
10.日本人には重く、息苦しく、辛い映画。「父親達の星条旗」に続く本作も、イーストウッドらしく淡々としている。画面に繰り広げられるのは阿鼻叫喚の地獄なのに、ドラマチックに盛り上げようとは決してせず、突き放しているようで、実は暖かい目線を忘れない、静かな映画だ。そして美術考証の細かな違和感など吹き飛ばしてしまうような全体を貫くしっかりした物語の骨組みと質の高い映像、演出が見事というほかない。本作の批判に「戦勝国」である米国が、いくら敗者の視点に立とうとしても、それは傲慢であり、偽善に過ぎないというものがある。太平洋戦争に限らず、戦争によって傷ついた人々が再び和解することは長い時間と大きな苦痛を伴うし、許せないという気持ちもわかる。しかしイーストウッドが投げたボールを僕は受け取りたいと思う。硫黄島では、現在、日米双方が参加して合同の慰霊祭を行っている。これは世界の戦場を見渡しても例のないことだそうだ。そして、この二部作。日本人も、米国人も、これは試されているのではないだろうか。国や民族同士が戦うということ、駆り出された人々の傷、そして和解。島で斃れた日米の兵士達は身をもって「考えよ」と諭してくれているような気がする。また、第三国の人々もこの映画を観て、今自分たちが憎しみをたぎらせて争っている相手が、本当に悪魔なのかということを、少しでいいから思いやってみる事が出来ればと思う。 【ロイ・ニアリー】さん [映画館(字幕)] 10点(2006-12-14 16:09:12) (良:1票) |
9.案の定と言うべきか『父親たちの星条旗』に続き私に大きな感動と混乱をもたらした。過去のイーストウッドならば渡辺謙を自らの分身とし、主人公として描いたであろう。しかし今のイーストウッドはそれを絶対にしない。でもこの作品に登場する日本人たちは軍国主義の思想が蔓延する中でもそれぞれが自分自身の思想を持ち続ける孤高の戦士たちだ。すべての人がイーストウッドの愛すべきアウトローなのだ。だから表面的には過去のイーストウッド作品とは異にしながらも『父親たちの星条旗』と反するように実にイーストウッドらしい映画のような気もする。それぞれが兵士であるまえに一人の人間であることが強調される。かといって人間ドラマで逃げない。「天皇陛下万歳」、一人を除いて誰もが心からそう叫ぶ。戦死した祖父が戦地から私の父に宛てた手紙がうちにあるのですが、「お国のために」という当時の空気がその一通の手紙からも読み取れます。そんな風潮が前提としてあることをけして濁さない。「一人を除いて」の一人とはもちろん主人公であり語り部である二宮和也である。彼は今の時代の人間がタイムマシーンに乗ってやってきたかのような人。そうすることで今の時代の我々観客とその戸惑いを共有する。過去の悲劇を今に伝える伝道師の役目を担っている。それからもう一つ。『父親たちの星条旗』で友人を死なせたことを永遠に悔いる衛生兵の苦悩、その友人の死のこの『硫黄島からの手紙』での扱いのなんてあっけないこと。二つの作品がセットになることで戦争が個にもたらすものの大きさが実に顕著に表されていると思う。 【R&A】さん [映画館(字幕)] 8点(2006-12-12 12:45:31) (良:1票) |
8. しかし、イーストウッドも凄い映画を作りましたね・・・・・・。非常に戦争というものを、情緒性を排除しドライに描いていて、何というか感想を書くのが難しい作品です。正直言って感動したり、泣ける作品ではありません。ただ、深く考えさせられるし心に鉛のようにズシンとのしかかかる作品です。 少々残虐なシーンもありますが、是非お勧めしたい作品です。 【TM】さん [映画館(字幕)] 9点(2006-12-10 23:10:06) (良:1票) |
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7.今観て来たてで書いてます。 猛烈に感動しています。 映画館に人が少なかった事を不思議に感じました。 もう何人(なにじん)とか関係無いですね。 これを作った人達に猛烈に感動と賞賛です。なのでこれは批評ではなく賛辞です。 今の日本人全員に観てもらいたい。作品はけっして商業的な狙いは無いと私は思います。なのでこれから観る人はそういう穿った心は捨てて観てもらいたいです。 もうどこがどうのこうのでは無く、今の日本人がどのような犠牲により今があるのかをこれによって感じて欲しい。無論それで戦争の全てが判るわけじゃないですが、根本はお互いを理解する。共感をする。という行為が戦争を回避させる事につながるという事がひしひしと伝わりました。先人たちの犠牲を後世が理解しないのでは何もかもが意味が無くなってしまいます。この映画を作ってくれた人の為にもその意味を理解してゆきたいと思います。ほんとうにこの映画を作ってくれてありがとうという気持ちです。 二宮君がこれを日本人は学ぶべきと言っていたのが良く判った。どこにもイーストウッド色やスピルバーグ色は無いですが、そういう色をつけずに作った彼らの心に感動しています。全編に流れるメインテーマの音楽がいい。台詞も日本人に違和感が無い。でもそういう事をどうでも良く感じさせる作品意図が全てにおいて勝ると私は思います。 今の平和がどうやって築かれたのかをこれに触れてその一端を見たような思いです。 なのでそれを知るのは後世の人の義務と思います。 【森のpoohさん】さん [映画館(字幕)] 10点(2006-12-10 22:15:39) (良:1票) |
6.重かった。 【よしふみ】さん [映画館(邦画)] 7点(2006-12-10 21:13:47) (良:1票) |
5.この映画には特に感動はない。見終わった後のすがすがしさもない。映画として人に勧めたいような映画でも正直なかった。ただ、一つ思った。「進めば米兵による死、戻れば反逆罪としての日本兵による死。その板ばさみの中で自決をはかる日本兵達。」教科書でしか知らなかった「戦争」とは違う何かを感じた。 【珈琲時間】さん [映画館(字幕)] 7点(2006-12-10 20:15:34) (良:1票) |
4.『父親たちの星条旗』は見ていないのだが、日米の兵士が同時に出てくるところは向こうでも使われたのだろうか。宣伝にあったとおり、日本側からしっかり描かれていた。楽しむための映画ではもちろんないし、感動したとも言いにくい。でも見ておいてよかった。両方見てから出ないとイーストウッド監督の言いたかったことは理解できないのだろう。 【HK】さん [映画館(字幕)] 8点(2006-12-10 17:44:44) (良:1票) |
3.イーストウッドらしくないと言えばらしくない映画です。個人的に最近のイーストウッドの映画の好きなところは見た後の色々考えされされる「余韻」なのです。しかし、この映画は直球勝負。それも「ど真ん中」の余計な事は考えず硫黄島で勇敢に戦った兵士のために奉げられた映画です。物の本では硫黄島で捕虜となった日本の兵士がアメリカの収容所で看守に大変な尊敬を持って遇されたとも言います。それだけ、アメリカにとっては硫黄島の戦いは記憶に刻まれる大事件だったのでしょう。一方の日本では当時の大本営が取ったように硫黄島での2万数千名が本土を防衛するために、正に命に変えて戦ったという事実すら忘れ去られている様に思います。確かに原子爆弾や空襲で死んでいった市民への哀悼の念は必要なものです。しかしその数倍もの兵士と言う名の市民が硫黄島だけではなく中国大陸や太平洋の島々で敵弾や飢餓、病気で死んでいった事実もあるのです。だからもう少しだけ帝国陸海軍の兵士たちに「尊敬」を持って欲しいと思うわけです。そのことをアメリカのイーストウッドの映画でしか現すことの出来ていない現状は、少し寂しく思います。あ、映画の評価は栗林中将の人柄をもう少し丁寧に描いて欲しかったのでこの点で。 【クルイベル】さん [映画館(字幕)] 7点(2006-12-10 17:28:13) (良:1票) |
2.見ごたえがある。全体的に淡々としたような印象があったが、それがかえってリアル。しかしこの映画の主演はどう考えてもニノだろうと思った。ケン・ワタナベよりも目立っていたのでは。 【おっちょ】さん [映画館(字幕)] 7点(2006-12-10 16:28:17) (良:1票) |
1.(ちと長くなってしまった) 「ラストサムライ」はまだ「日本を舞台にしたハリウッド映画」というレベルでしたけど、今回は「ハリウッドの資本・スタッフによる邦画」と言ってしまっても過言ではない仕上がり(クォリティは当然ハリウッド・レベル)。硫黄島の激戦を背景としてしか描かないのは余りにも勿体ないという判断からか、たぶん「父親たちの星条旗」の硫黄島シーンと同時に撮影されたであろう本作は、そのものズバリ、皇軍の硫黄島戦を真正面から描いた戦争映画になってます。一応の主人公は大本営から見捨てられた硫黄島守備隊を指揮する栗林中将となってますが、狂言回しとして全島に渡る戦闘、そして帝国軍や米兵の真実を目の当たりにしていくのは二宮和成演じる西郷(これが本当の儲け役)。執拗な空爆、止まない艦砲射撃、そして蟻の様に浜辺を埋め尽くす圧倒的数の敵兵士…。この絶望的状況下で36日ものあいだ耐え抜き、犬死と解っていながら散っていった英霊達には、日本人なら誰でも哀悼の意を捧げたくなる筈です(これは紛れもなく現在の日本人に宛てられた「硫黄島からの手紙」)。同時に、こんな「ハリウッド映画」が観られる平和な時代に生きていることに対し、感謝の念も生まれるでしょう。36日という時間経過が判り辛かったことが唯一の難点でしたが、2時間半近い時間を全く感じさせない力作に変わりはありません。正月映画の本命としてお薦めします。そんな訳で、本国での興収を潔く無視した製作陣にも心からの感謝を込めて+1点の、8点献上。 【sayzin】さん [試写会(字幕)] 8点(2006-11-30 00:09:23) (良:1票) |