4.才能の暴走。序盤からコントの“間”で映画の“間”を殺害。異常なほどのロングショットの多用。主人公二人がさえないおっさんとさえない子供。豊橋に着いてからはストーリーさえ放棄。でもこんなに優しい映画は久々に見た。月を背景にだるまさんが転んだで遊ぶ菊次郎たちの姿が浮かぶシーンなんて本来映画ではありえないけど、映画以外でだってありえない。北野武以外には不可能。「バカヤロー」って言葉を優しい言葉として描ける映画作家は世界中どこを探しても北野武以外には存在しない。「fuck you」で感動させられる映画作家がアメリカやイギリスにいますか?北野映画を原語で観ることができる幸福に感謝。 【藤村】さん 9点(2004-02-12 21:39:26) (良:6票) |
3.《ネタバレ》 夏の想い出を呼び覚ます。ただその一点においてこの映画が好きだ。 私とたけし監督とは世代も出身も性格も生活も家庭環境も人間関係も全く違うだろうに 等しく「夏」を共有させる。これって何気にスゴいことだと思う。 正男を通して菊次郎が夏休みに帰ったように視聴者もまた菊次郎を通して帰っていく。 たまーに己と向き合う機会ってのは重要で、それをさらっと与えてくれる作品は得難い。 感じるポイントは人それぞれだろうが、皆どこかしらのシーンに各々の夏を見出せるんじゃないかな。いや、知らんけど。 もっとも、たけし一流の悪ふざけや内輪ネタは好きじゃないし、子役にもいろいろアレだ、思う所はある。 それでもあの、天使の鈴をぶんどるシーンの、トンネルを抜けて青いタイルの公衆トイレに腰掛ける一瞬。 あれを見たくて私はまたこの映画を観ると思う。 【昨日が全盛期】さん [DVD(邦画)] 9点(2012-12-05 01:59:14) (良:1票) |
2.《ネタバレ》 タケシを中心に大人達が終始徹底的にあらゆる嘘をつき続ける。嘘はずるさの象徴でもあるが、照れ隠しの場合もある。本音や事実を過大にも過小にも表現する。また、嘘には2種類あって、自身の保身や見栄の為の嘘と、相手への優しさの為の嘘。作品前半は前者の嘘が多いのだが、終盤にかけて後者の嘘が多くなる。子供の目を通して、大人のずるさと優しさを嘘により表現している。最後の「また、お母さんを探しに行こうな」では涙が溢れた。 |
1.いい!自分中心に楽しんでいた菊次郎が、段々子供に情が移り、最後には子供を中心に楽しませる様になります。はじめはただのチンピラと子供のコントラストの映画?と思っていたけれども、人を守るとか、大切にするとか、そういった、人が大切なコトを学んでいく行程を見せてもらいました。しかもたけしは照れながら描いているし。私達がよく知っているはずの日本の雑多な路地裏から美しい風景を眺め、気づいたら夏の田舎の風を感じていました。武の大人の退廃っぷりの表現もギャグも苦手なんだけれど、それでも菊次郎の心の変わり様に涙ボロボロしてしまいました。子供が「おじちゃんの名前なんていうの?」って言葉で表した小さな愛情、それに対して、菊次郎が「菊次郎だよ!ばかやろう!」って言った照れと、音楽が私の中で何度もリフレインしています。たけしはすごいなー。なんていうか、映画で人を大きいな~と感じたのは初めてです。 【夢の中】さん 9点(2004-01-15 19:48:51) (良:1票) |